ニューヨーク

ニューヨークに行った時の話。

20歳くらいだったっけな、友達でラッパーのドカットに勧められて行った。

「◯ん◯んは絶対NY行った方が良いよ。ストリートでギター弾いてさ、超熱いよ。これは俺が地下鉄のニガバンドに乱入してラップした動画で※△%□… 」

話を聞いてたら楽しそうだったから俺も行きたいと思った。

当時、トムソーヤ、イージーライダー、深夜特急みたいな旅物語が好きだったから、事前情報は持たず旅する感じで、ギターと着替え何枚か持って行こうと決めた。

出発の前にラッパーの菊丸が手書きのニューヨークの地図をくれた。

飛行機に乗って、中国で乗り換えたんだっけな?その時「ねたのよい」ってバンドのばけちゃんと偶然会って、これは、やばい旅になると確信した。

ジョン・エフ・ケネディ空港に到着して、扉の向こうは速攻ニューヨーク!!と思っていたら想像と全然違くて、早くニューヨークに行きたいと思っていた。とりあえず菊丸の地図を見るけど、これじゃ何も分からない。

二階建てのバスを見つけて「これの上に乗れば降りたい所で降りられるじゃん!!」と思い、少し料金は高かったけど、ひとまずバスに乗った。思い出すな〜あの風景。

出発し、デカい橋を渡って、まず銀行街みたいな場所を通った。たくさん人はいるけど、ここで降りるのはまだ早い、なんて思いながら先に進んだ。どこで降りたのか名前はわからないけど、ニューヨークの地に着いた時は感動した。

興奮しながら初めてのニューヨークを歩いていると、排水溝にコインを入れて拾ってを繰り返してる怪しい黒人のオジサンをみつけた。俺はその人を面白いと思い、声をかけた。

「ハロー フィールグッド ニューヨーク
アイ ウォント トゥー ウィード」

すると黒人オジサンは目をかっぴろげて「カモン、カモン」と細い路地裏に俺を案内した。

ついて行ってすぐ、デカいサイレンが鳴り響き、2メートル近い白人のポリス3人がすごい勢いで追いかけて来た。

肩をガシッとつかまれ、デカい白人ポリスが俺の目を覗き込むように見てきた。

これは、斜視ったり目が危なくないか見てるんだ!と察し、真剣な眼差しで「プラクティス ギター」と言ったら「お前はもう良い 帰れ」みたいな感じで解放された。

黒人おじさんはフェンスに押さえつけられながら両ポケットを出して「なんも、持ってないわー」みたいな事を叫んでいた。

ごめん、おじさん、、滞在中また会ったら面倒くさそうだな、、とか思いながら、その場を去った。

着いて速攻すごい事起こったな〜ニューヨークすげ〜なんて思いながら歩いていたら、良い感じの公園をみつけた。疲れたし地面に座ってケースからギターを取り出した。

とりあえず唄っていたら、上裸に茶色の革ジャケットで顔が2pacにそっくりな黒人(ポッコリお腹)が向こうからガシガシと歩いて近づいてきた。

彼はめちゃくちゃハイテンションで「ジャパン、ジャパン、ブルースリー、ブルースリー」と連呼しながらエアー空手を見せつけてきた。俺は何か違うな〜と思いつつも、彼に圧倒されていた。

腕にラジカセを持つようにYAMAHAの電動ピアノ(日本製)を抱えていて「ジャパン、ジャパン」と叫んでいた。

自動演奏と書かれているボタンを押すとキーボードが赤く光り、こうやってやるんだぜ!ばりのジェスチャーでキーボードに手をかざし、演奏してるフリをはじめてみせた。

すげースタイルだなと独創性に衝撃をくらいながらも、電動ピアノからはthe policeのevery breath you takeが流れていて、その姿はとてもシュールだった。

レクチャーが終わると、金稼いどけよ!みたいな感じで彼は何処かに行ってしまった。その間、俺は言われたとおり演奏してるフリをしてニューヨークの街を眺めていた。

10分後くらいに彼が戻ってくると「なんだよ、金稼いでねーじゃねえかよ」みたいな顔をしていた。

変な雰囲気で地面に座っていると、彼は革ジャンの内ポケットから太い葉巻を取り出し


「お前もいるか?」とニューヨークのハイを分け与えてくれた。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?