されど「副詞は君の友達じゃない」と語れり
お世話になっております。素人以上作家未満の管野光人です。
前回「文章の正しい表記の参考になる資料は何か?」からの続きです。
漢字の開きに対して、「副詞」が問題になると言い切りました。
では、問題解決編です。
ホラー界のキングは副詞がお嫌い?
「副詞」の定義とは、
「添えことば」「副詞は名詞以外を修飾する」「文の中でほかの言葉の意味をくわしく説明する語」
要はアレですね、からあげの横のレモンですか。
厄介な副詞の漢字の開きで悩んでいるなら、いっそ根こそぎ捨ててしまおう。
断捨離ならぬ「根本捨」です。
要は副詞を使わないようにすれば問題解決なのですよ。
そこで最近読んだのがこの書籍です。
ベン・ブラット著『数字が明かす小説の秘密 スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで』(DU BOOKS)に面白い記事がありました。
この書籍は、世にあまたある小説を解析して数値化し、小説にまつわる「ルール」や「思い込み」を検証したものです。
自分の大好物です、ええゴハン三杯いけますね。
まず「1章 控えめに用いなさい」の冒頭から頭蓋を打たれました。
かのホラー界のキング、スティーヴン・キング御大の言葉、
「地獄への道は副詞で舗装されている。」
副詞はアスベストですか……有害物質なのですか?
キングのエッセイにして小説指南書『書くことについて』で、小説で副詞の多用をののしるのに「副詞は君の友達じゃない」と切り捨てています。
なにも全ての副詞ではなく、『ファイトクラブ』の作者チャック・パラニュークが、
「眠たげに、苛立たしげに、悲しげにみたいな、バカげた副詞はやめてくれ。」
と申されております。嗚呼、横隔膜が痛い言葉だわ……。
さらに、有名な文豪アーネスト・ヘミングウェイも、
「散文執筆の法則は、物理の法則と同じ不変なものなんだ。」
と切り詰めた文章の有効性を断言しています。いっそ気持ちがいいわ。
副詞が減れば減るほど「良い作品」なのか?
そんな大言を吐くなら、おまえら副詞を書いていねえんだな、と誰でも思うもの。
一冊をつぶさに調べて語彙を拾いだすのは大変です(やったから痛感)。
そこは『数字が明かす小説の秘密』さんに任せました。
その結果が、
ヘミングウェイは副詞使用頻度が5.8%の割合
スティーヴン・キングは5.5%
アメリカのオンライン小説の大ヒット作『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(早川書房)のE・L・ジェイムズは4.8%
たしかに少ない気がしますね。
それが証拠にプロ作家とアマチュアを比べると、プロ作品のほうがアマチェア作品より25%も副詞が少ないそうです。
さらに言及するなら、有名作家たちの本のうち、副詞がもっとも少ない作品はもっとも人気の高い小説であると統計が証明しているのですよ。
それならば、なぜ副詞がイケない子なのか?
それに対して、ノア・リュークマン著『プロになるための文章術―なぜ没なのか』(河出書房新社)で理由をあげつらっています。
原稿を没にするのにもっとも手っ取り早い方法は、形容詞と副詞の多用、誤用を洗い出すことである。
とかく初心者は、形容詞や副詞を重ねれば、名詞、動詞が生きると考えがちだからだ。形容詞、副詞を多用する書き手は、ともすれば表現が月並みである。皮肉なことに、形容詞、副詞は往々にして主語を弱める。
な、なるほど……。勉強になりますわ。
副詞を減らせば漢字の開きに苦慮せず、さらに簡潔な文章になります!
まさに一石二鳥ですね。
それでは結論です
初めて小説を執筆する方は、念頭から副詞を減少されるコトを心がけるのが良いと思います。
そうすれば自分のように、長い時間を棒に振らずに済みますよ←自虐オチ
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