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その他のビルドアップの方法

過去2週間に渡りビルドアップに関して書かせて頂きました。プレーモデルの図の残りが、

③アンカーが落ちて3枚でドリブル進入

④SBから前方のスペース

⑤DFライン裏に一発ロングボール

となっているので、一気に書いていきます。当然、この5つ以外にも方法はありますし、相手との噛み合わせで注意する点は変化してきます。

③アンカーが落ちて3枚でドリブル進入

とは、自分たちがビルドアップする際に、2CBの間に「1-4-1-4-1」のアンカーが落ちる(入る)ことを指します。目的は相手が2トップの場合、「3枚」になる事で、プレッシャーを受けにくくする事です。ではなぜ「3枚」になると、プレッシャーを受けにくくなるのでしょうか。

そもそも、2トップに対してはアンカーが、その二人の間に入ってビルドアップしよう、と①で説明していました。ここには優先順位が発生してきます。個人的には2トップに対しては出来る限り、アンカーを2トップの間で駆け引きをさせたいです。その理由としてアンカーには「インテリオールに入ったボールに対して前向きサポート」をして欲しいからで、それが出来た時点で相手2トップの背中を取り、1stラインをブレイクした事になるからです。また、多くの人数(1トップ・両ウイング・両インテリオールの5人)を前線に残したまま、次の展開(DFラインが浅ければ背後へランニングして突破・通常の高さならばDFライン前のスペースで受ける・又はサイドへ展開)に入っていける利点もあります。

では、先程の「3枚」にしたら何故プレッシャーを受けにくくなるのか、という所です。まず配置の説明ですが、CBは2枚で動かす時よりも横幅を広げ、間に立つアンカーはその二人より少し後ろに位置します。そうすると、アンカーがボールの落ち着きどころになるので、2トップはプレッシャーをかけにくくなります。CBに少しでも近づこうとして2人の距離が離れすぎると、アンカーの代わりに降りてきたインテリオールにパスを入れられ無力化されてしまいます。かといって絞りすぎたら、CBは高い位置を取り(2トップのプレッシャーに行けない位置に立たれる)パスを受け、ドリブル進入できれば、2トップを置き去りに出来ます。

④SBから前方のスペース

これは2CBが相手の2トップに上手くプレッシャーをかけられ、1stラインをブレイクできなかった時の選択肢として出てきます。CBは出来るだけ高い位置(背後にクロスでのロングパス・1トップの足元・インテリオールをターンさせる etc)へパスをつけていきたいのですが、1stラインをブレイクできていない時点で、パスの距離が長くなる分、それらの選択肢の成功率は低くなります。(相手DFも予測しやすいし、インターセプトもしやすい)

しかも2トップのプレッシャーを受けている場合も考えられます。するとCBは前方へのパスを無理やり選択するより、フリーになっている可能性が高いSBへのパスが有効になります。そこでいい守備をしてくるチームなら、SBに出たボールに対して連動してくると思います。この時SBの選択肢はいくつかありますが、大前提として「プレッシャーを受けない位置でボールを受ける」という事が大切になります。その為には(相手のSHの位置によって自分が取るべきポジショニングは変わってきますが)通常であればパスを受けるSBの後ろのスペース(ビハインド)であれば、かなり保険がかかります。

SBの選択肢は①オープンにCRして相手SBの背後へロングパス(縦パス)②フリーになった味方のSHへグラウンダーのパス③アンカーへのパス(CBはSBにパスした後にビハインドサポートする事でパスコースが生まれる)④CB(出し手すぐにビハインドサポートする)へのバックパス辺りが選択肢になります。(当然縦に出そうとして内側へのドリブルから逆サイドのインテリールにパス、など出来れば最高だと思います。)

⑤DFライン裏に一発ロングボール

もし自チームの1トップに長身でヘディングが強い選手がいて、トップ下に裏へ抜けでるスピードがあり、決定力の高い選手がいたら多用すべきプレーの一つかも知れません。色んなチームと対戦する中で、前線からの守備が抜群に良い相手と対峙する事も出てくるでしょう。その時に「1stラインをブレイクする」ことに固執するがあまり、引っ掛けられてショートカウンターで失点というのは、試合を優位に進めるには得策ではないと思います。開始5分までに相手の特徴を掴み、前線のプレッシャーが速く、連動してくることが分かったのなら、CBのポジショニングの駆け引きは一旦置いておいて、開き直ってロングボールを蹴り、ラインを上げる。ボランチは2ndボールを拾う為の予測を持ち、バトルに負けないようにする。これは一見、再現性の低い、雑なビルドアップのようにとられるかも知れませんが、そこまで根拠が薄いプレーという訳ではありません。何故なら、2トップのプレッシャーが速く、高い位置から来る相手は「コンパクトにはなりにくい」からです。仮に2トップがペナルティエリア付近からプレッシングをかけてくるとして、相手DFラインが最高に高くてもハーフウェイライン、そこからペナルティエリアまでが36m、つまり相手ディフェンスは「間延び」した状態なので、攻撃側は2ndボールを拾いやすい状況になっているはずです。また、DFラインがハーフウェイラインというのは1トップがヘディングで勝ち、二列目に力のある選手がいればシンプルに得点できる可能性が高いので、二重の意味で「相手の力を利用して効果的に攻める」方法の一つとなります。そのうち、2トップのプレッシャーも続かなくなってくるので、そこから確実なビルドアップに切り替えていくのも一つかも知れません。

ビルドアップのプレーとして自分の中での基準となる5項目を挙げましたが、これをやる事が目的ではなく、あくまで「試合に勝利するために、選手同士が共有できるモノがあった方がいい」という風に自分自身は捉えています。要するにあまり堅苦しいものにならない方がいいし、選手がディティールにがんじがらめになってしまっては良いビルドアップには結びつきません。快適にプレー出来るようになる為には、トレーニングを通して選手が技術を磨き、理屈を知り、意識して行う。そしてそれらを続け彼らが無意識で行えるようになるまでは長い時間がかかりますが、そこにいくまで我慢強く指導を続ける必要があると思います。

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