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使い込むほど、鋭さが増す

どの様な物事も共に過ごした時間が長ければ長いほど、思い入れと愛着が増します。

美容師の方にとって、”シザーは美容師の命”と言われるくらい大切な仕事道具です。本当なら指先で髪の毛が切れればいいのですが、シザーを使わないと髪の毛は切れません。それならば、指先と同じ感覚で手と一体化したシザーがあれば理想的です。

幸運なことに自身の感覚通り使えるシザーに巡り合えたとしても、使っていけば刃先は鈍くなり、研磨を重ねていくことになります。

研磨(シザーの研ぎ)を重ねていきますと刃先が細く鋭く尖ってしまい、その状態ですと危険ですので、尖っている部分を削り落とします。

このことが、研磨をするとシザーが短くなると言われる所以です。

一回や二回の研ぎで短くなることはないです。刃先が鋭く尖ってきて初めて長さを詰めるという処置をします。


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製造された時期が近い同じサイズのシザーの比較。
左側(シザー)新品の状態、右側は20年間使用されたシザー

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横に並べてみますと、どれだけ短くなったかがわかります。

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赤丸で囲った箇所を見ると、刃元は削られ、刃線のカーブが無くなり直線になりつつあります。

購入当初は切れ味が柔らかくサクサク切れたのに、段々と切れ味が硬くなってしまうということは、上の写真のように研ぎを重ねると刃線のカーブが無くなって二枚の刃で作る挟む角度が鋭角になり、髪の毛を逃がさなくなり断ち切るような感触になります。

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20年間使用されましたシザーの刃線を新品のシザーに重ねてみますと、長さは短くなったのは勿論、刃線のカーブが失われていることがわかりま。


20年間使用したシザーの、新品時を想定して静刃・動刃の刃元から触点部分の重なりを合わせた写真です。

刃先閉じ切らない全体


刃元から触点を新品時を想定して重なりを合わせますと、刃先が閉じ切らなくなりす。

新品の状態の写真と、刃元から触点を新品時を想定して重ねた状態の写真、刃先を閉じた写真の三枚を並べてみました。

3丁並べた状態

当然新品と比較すると長さは短くなり、刃先を閉じるとシザーの刃部は細く尖りシャープなシルエットになります。

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新品時を想定して静刃・動刃の刃元から触点部分の重なりを合わせると刃先は閉じませんが、ハンドル側を見ますとヒットポイントも閉じずに浮いた状態になります。

元来シザーのハンドルは、柔らかく曲がりやすく造っています。

ハンドルが曲がらなければ、研ぎを重ねて刃先が細くなるとその分閉じなくなっていきます。

何度も研いで刃先が細くなっても、その都度ハンドルを曲げて刃先を合わせられるように曲げられるようになっています。


ですので、気が付けば10年、20年と使い続けることが可能なのです。

新品のシザーは健全ですので、パワフルでサクサク髪の毛をカット出来ます。

当然研ぎを何度も重ねて使っているシザーは、刃先が細くなってパワーはさすがになくなっています。

しかし、その刃先の細さは新品では売っていないちょうどいい細さで、細かい所をカットすには最適です。例えば、刈り上げのフェードカットにはこれがないと出来ないと言われるくらいです。

熟練のスタイリストほど、長い時間かけて磨き上げた技術と長い時間かけて使いやすい状態にした道具の両方を持っている。

若いスタイリストの方もどのようなシザーを所有し、どのような使い方をして自分の手の一部にしていくかを意識して使っていいくことが重要です。




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