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12/20発売 【NOTO】 について

昨年5月の2ndAlbum『秉燭譚』から1年半、本年もなんとか1タイトルリリース運びとなり安堵しております。

まずは、下記ティザーをご試聴いただければと思います。

【NOTO】という名称は、新たなアーティスト・ユニット名、桶田ソロの変名のいずれでもありません。
『秉燭譚』の頃より取り組み始めた「完全コンセプト先行」という制作スタイルによって得た手法を基に本年度リリース作品向けの策定をしていく中で、仮想空間から現代への流入をモチーフとした形を模索するに至り、結果1個人ミュージシャンの1作品という枠を越えることが本年度作品のコンセプトにおける「最優先事項」となりました。

しかしながら、これは当初から定めていたものではありません。事故です。

コンセプトアルバムというものには決まった答えや明確な定義が存在するように思われますが、初志貫徹で完成に至るケースはほぼ有り得ないと考えます。
起案した段階では明瞭であっても、あくまで「音楽作品」とりわけ「ポップス」としてまとめていく段階で【コンセプト<音楽的整合性】という構図が生じます。
「作者の意図」との乖離、その差異がそのまま余白となり、リスナーの皆様を含めた第三者による他意の介入が新たな解釈・評価へと繋がっていく事こそが最たる理想であります。
本作【NOTO】はその「理想形」においては満足した仕上がりとなりました。

では、なぜ「事故」なのか。
全ては【NOTO】という名称が起因しています。

【NOTO】の由来は複数存在し、ここで明らかに出来るのは「扉」的な意味であります。「〜ノ門」、実在する地名として、「由良の門」など河口を意味するものです。
名称の「意味」そのものには今回の「事故」に起因する要素はなく、もっと前提的な、「名称」を与える行為そのものが問題でした。
架空の存在を構築するとは言え、その行動パターンや人格は机上で展開されるものが全てであり、現実問題においてもPRやブランディング的側面等を考えた上で形成・構築されていくべきものです。すごく分かりやすく言うならば「〜という設定にしよう!」というようなことです。
事実、各曲ごとの世界観は極めて簡潔で、時代的背景は現実との違和が散見される要素はあれど、文意的な崩壊には至っておりません。
ただ、「誰がどんな気持ち・状況で歌ってるのか」という側面が見えないのです。
これは無意識のうちに生ずる自己投影・感情移入の逆輸入現象、つまり「何かを訴えるあの人にシンパシーを感じる」と言ったような「アイコン発信」に基づく評価要素の欠落を意味し、ポップカルチャーの隆盛に不可欠な美的アイコンたる表現者の不在という、極めて致命的ともいえる試みです。
本作参加者のいずれも「自らは【NOTO】ではない」と公言している以上、私自身も【NOTO】とは何者かを知らず、もし仮に【NOTO】がこの世に存在していたとしても、それを【NOTO】として認識することが出来ません。この点については制作者間でも意見が異なる部分もありますが。

一音楽作品に対してそこまで深く掘り下げるということは、本来の享受・消費の形に迎合するものではないとは思っております。
ただ、ご自身の中で【NOTO】という存在を創る、あるいは探すといったプロセスを経て本作品を楽しんでいただけたなら、きっとご自身だけの新解釈が生まれ得るものだと思っております。

桶田知道

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