その5:剣道と哲学(1) ―温故知新―
祖父愛次郎は10代の頃、実家の田島家が開設した私塾「盈進義塾」で、旧佐倉藩の儒者倉田幽谷から四書五経を学んだ。そのため40代半ばまでは儒教的精神で世の中に処していたと思う。その一つの現れは、父の名前を見ると分かる。「丘」と書いて「たかし」とは当て字だと父は言った。「丘」とは孔子の名前なのだ。孔子の名前は「孔丘(こうきゅう)」という。それにしても、祖父は恐れもなく偉大な聖人の名前を付けたものだと感心する。そういう訳で、父をよく知る人たちは「キュウさん、キュウさん」と呼んだ。