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最近、私の若い頃を知る人には信じられないほど早起きになり、小野鵞堂先生の『三体千字文』を手本に手習いをしていた。その中にこんな文章があった。 「索居閑處 沈黙寂寥 求古尋論 散慮逍遥」(p.127) 訳すと以下の通りになる。 「自分からタイミングよく勇退した後、閑静なところに移り住み、毎日を物静かに暮らして世の中のことにあえて口に出さず、穏やかに過ごしている。古書を繙いて、昔の人の残したよい事をあれこれ論じたりして、煩わしい世事から心を解き放し、山野をさまよい歩きなが
閑雲野鶴(かんうんやかく)という諺がある。「『閑雲』は大空にゆったりと浮かぶ雲。『野鶴』は野に気ままに遊ぶ鶴。何物にもしばられない自由な生活のたとえ」とある。 東京は政府が発令した緊急事態宣言中で、当初2月7日までだったがさらに1ヶ月延びて3月7まで不要不急の外出は自粛である。しかし規則さえ守っていれば、「閑雲野鶴」の言葉通りだ。71歳だから用事もないので自由気ままである。その様な中、のんびり生活しているが年を重ねた今、私たちが修行していた若い頃の剣道が懐かしくなって、
40年近く前、ドイツ人の若者が1ヶ月間道場に滞在して稽古したことがあった。とてもまじめな青年で一生懸命稽古していたが、初めての日本で慣れないせいか稽古以外はつまらなそうな顔をして過ごしていた。3・4日して彼は私に質問してきた。 「剣道修行で一番大切なことは何ですか」と。まじめな男だなと思ったので以下のように答えた。 「はるばる日本に来て、しかも道場に寝泊まりしているのだから教えてあげよう。一番大事なことは、君が修行する道場の床を拭くことだ。しかも心を込めて磨くこと。