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松籟庵便り

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盈進義塾興武館ホームページで連載している、館長小澤博の風まかせ筆まかせ読み切り剣道コラムのアーカイブスです。
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2021年9月の記事一覧

その30:克堪克忍(よくたえ よくしのぶ)

 令和3年(2021)3月末、縁あって群馬県前橋市在住で大学の先輩鈴木孝宏先生から、今まで見たこともないほど大きな扁額を預かった。明治・大正・昭和の剣道界を代表する高野佐三郎範士が揮毫した額である。寄贈して下さった方は、群馬県高崎市に住む荒木流学心館岡田道場の五代目岡田素教氏である。将来、我が国剣道界のために尽くす学生や剣友会会員のために、この扁額を日体大の剣道場に掲げることが目的である。           *  岡田家では運搬の際に、どこかにぶつけて破いたり傷をつけた

その29:始まり

 4月は新年度が始まる月である。入学式、入社式、そして新学期というようにすべて新しく始まる。誰もが希望に燃えている。しかし、昨年から始まったコロナ禍の影響で、今年も静かな始まりとなってしまった。昨年度、大学はオンライン授業で、一年間キャンパスに足を踏み入れる事が出来なかったところもあったようだ。今年はどうなるのだろうか。  剣道界も大変だった。多くの行事は中止や延期で慌ただしく過ごした。さらには昨年延期になった東京オリンピック・パラリンピックもどうなるか分からない状況だ。

その28:女子剣道再考(下)

 女性に考えてもらいたい事(参考) 50年くらい前、女子剣道の指導者は試合に勝つことしか考えない人が多かった。これではいけない、身体を壊してしまうと思って、昭和56年(1981)、『コーチ学女子剣道編』(逍遥書院)を出版した。沢山の人から批判されたが気にしない性格なので、誠におこがましいことだが、今回も余計なこととは知りながら最後に提案して置こうと思う。  その前にもう一度考えたが分からないことがあった。それは私が男だからだ。「松籟庵便り(26)」で、父が書いた言葉の中にあ

その27:女子剣道再考(中)

 昭和27年(1952)年10月、全日本剣道連盟が発足して女性の剣道愛好家が少しずつ増えてきた。それでも戦前から高野佐三郎先生の修道学院で修行した高野初江先生が、女性で初めて七段に合格したのは昭和41年(1966)11月(47歳)である。  戦後の女子剣道発展を昇段状況に限ってみてみると、高野初江先生の後25年経過して平成3年(1991)5月、小林節子先生が2人目の七段に合格した。次に平成6年(1994)堀部あけみさんが3人目、翌平成7年(1995)桜木はるみさんと根本道世

その26:女子剣道再考(上)

 2021年2月中旬、イギリス在住の松田和世さんが『世界のファインレディース剣道』(FINE LEDIES KENDO WORLDWIDE)という雑誌を発刊した。年間2・3回発行するという。創刊に当たって何か書いてほしいというメールを頂いたので、「松籟庵便り」に掲載する予定でまとめていたものの中から引用して送った。その全文を3回に分けてお便りする。           *  令和2年(2020)1月、全日本剣道連盟による剣道人口の調査結果が月刊『武道』に掲載された。それに