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いったんバラして組み立てろ ~Kroi『Page』が提示するJ-funkの未来~ #2021年のおすすめ曲

音楽というのは要するに「いったん解体して再構築する」ことで発展する。
特に日本では「日本語」という大きな問題が立ちはだかるため、ロックでもブルースでもファンクでも、いったん解体してから日本語に合わせて構築しなおさないと音楽にならない。

なんでもいい。日本の代表的なバンドを挙げてみたら分かることだ。
はっぴぃえんど。バッファロースプリングフィールドを解体して、それを当時の日本で流行していたフォークを採り入れて再構築することによって、「日本語でロックを歌う」ことにチャレンジしたバンドだ。
ブルーハーツ。パンクを解体して、童謡を思わせる単純なメロディーに日本語を乗せることで再構築している。
他にもこんな事例はいくらでもあると思う。いったんバラして組み立てる。それがロックの歴史だ。

バラして組み立てるJ-funk

日本では近年、ブラックミュージックに影響を受けたバンドが数多く登場している。
最大の成功事例はsuchmosだろう。90年代のアシッドジャズやネオソウルを解体して、それまでの日本語ロックの成果を合わせて再構築したバンドだ。

ブラックミュージックの豊かなビートを使った楽曲に、どうやって日本語を乗せるのか。
聴いたものをそのまま真似てもまったくサマにならない。何を採り入れて、何を捨てるのか。これまでの日本語ロックが生み出した果実をいかにして取り込むか。知的でスリリングな試みが行われている。

「いったんバラして組み立てろ」という命題にチャレンジして、成果をあげているバンドはたくさんある。

Kroiとかいう一種の「完成品」

さて、2021年にメジャーデビューしたKroiというファンクバンドは一種の完成品を思わせるバンドである。
しっかりファンクの要素があり、さらに日本語の楽曲で重視される「湿った感じのメロディーライン」を上手に取り込んでいる。

ファンクミュージックはマニア性が強いジャンルである。ともすれば「分からない人は聴かないでいい」音楽になってしまいがちだ。
Kroiは「ファンクの罠」のようなものにハマることなく、ポップスとして質の高い楽曲を発表している。

ファンクなノリ・しっかりしたメロディーライン・メッセージを感じさせる歌詞がバランス良く配分されている。かなりの知性を感じさせるが、嫌味ではなく、音楽が「人懐っこい」のが好感持てる。J-funkの未来は彼らによって形作られるのではないかと個人的に思っている。
今後の活躍が期待できるバンドだ。強くおすすめする。

#2021年のおすすめ曲

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