#46 止まらない俺様

スイッチが入った彼はもう怖いものなんてありません。
今までの嘘も新しい嘘も、調子良くどんどん出てきます。

キッチンカウンターを挟んであっちとこっち
「なに逃げてんだよ！」
何をしても言っても気に入らない状態。
この世界で一番エライのは俺様だー！

追い掛けてくる彼から逃げながら、
「一緒にいたくなかったくせに、何で帰ってきたのよ？」

「てめーが銀行に一緒に行ってくれって言うから戻ってきてやったんだろ！」

なんか、いい人みたいな発言だけどさ、
そもそもさ、銀行に行く気なんかないじゃん。

拳を上げながら追い掛けてくる。
戻ってきた時から相当な酒臭さを放っていて呂律も回っていない。
ただの酔っぱらいと思えたらどんなに楽か…。

スイッチ入ってるから目がイッチャッテて本当に怖い。
塀の向こうではこんな風に虚勢をはって威嚇してたんだろうなぁ。

今だから冷静に考えられるけど、
その時は、何をされるかの恐怖に、
持っていた携帯で110番を鳴らしていました。

「おお！上等だよ！警察だろうが何だろうが呼べよ！」

程なくして到着した警官2名。
すぐに、呼ばなきゃ良かった、と後悔することになります。