#31 メッキが剥がれるとき

「どうしました?」

何度か彼にくっついてお店に伺っていて挨拶もしていたので、
割りと緊張感なくお話が出来る総支配人から、
わざわざ私の携帯へ連絡をいただきました。

「すみません💦 夕べうちの人がご一緒させて頂いていると思うのですが…」

「僕ね、夕べは都内にいたので一緒じゃなかったんですよ。昨日はお会いしてないんです。」

「そうでしたか…。大変失礼しました。
私の勘違いです。お恥ずかしいです。ごめんなさい。」

「大丈夫ですよ。恥ずかしがることはありません。
私も若い頃はそんなことありましたよ。
そりゃ心配ですよね、事故かもしれないとも考えますよね。
アクビさん、どーんと構えていれば大丈夫ですよ。」

なんともお優しい。
「今日も午後にそちらで打ち合わせがあると思うのですが、
本人が現れない可能性があって…。」

「分かりました。僕らはお話してない事にしましょう。その方がいいですよね。
あ、でも✕✕が旦那さんの携帯に連絡を入れてしまったようで…奥さんに連絡をするように、と。」

「そうですか。全然大丈夫です。私が連絡をしたんですから。」

「そこはすみません。僕らは話してない、という事で合わせましょう。」

なんと大人の対応。感動しました。
大人の出来る男代表です。

それまで、私のバカな信頼だけで均衡を保っていた二人の生活は音を立てて崩れます。
彼の人間らしさは全く鳴りを潜めることになるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?