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中小企業診断士•二次試験において、設備投資の助言はご法度か???

中小企業診断士二次試験の助言問題において、「中小企業は資金力がないので設備投資の助言はご法度」と言われることがたまにありますが、果たしてそうなのでしょうか?今回は、そんなことをテーマに私の考えをまとめてみました。

①そもそも設備投資とは???

本題に入る前に、設備投資とは何を目的に行うのかという点を改めて整理します。
設備投資の目的の1つは、企業の事業の発展が挙げられます。設備投資により売上向上・費用低減またはその両方が実現され、最終的に企業の付加価値が上がり競争力が高まります。中小企業白書でも、設備投資を推進する動きもあり、少なくとも国も設備投資を重視しているのは間違いないと言えます。

②近年の二次試験から設備投資を考えてみる

近年の中小企業診断士・二次試験からも設備投資を肯定(または意識をした)問題が増えております。いくつか例に挙げます。

・R4年事例Ⅳ
はじめて事例Ⅳで生産性の指標が経営分析に出た問題になります。労働生産性の指標を答えさせたい問題設計となっており、本試験当日は収益性・効率性・安全性の3つのセオリーで対応していた受験生の多くを絶望の縁へと追いやりました。

・R5事例Ⅲ
工場増築の妥当性の有無を問う設問です。二次試験後は、受験生の間で、妥当性有り派・無し派で議論になりましたが、得点開示後の調査では「有り」の方が合格者・高得点者で多かったようです。

・R5事例Ⅳ
OEM→自社生産へ移り変わる企業の事例問題です。最終の記述問題では付加価値・生産性を指摘することを意識した設問となっています。あまり予備校の模範回答で付加価値を指摘しているものは少ないですが、私は付加価値向上・生産性向上でも加点ありと思っております。

・R5口述試験
口述試験では事例Ⅳ(D社)より「現預金比率を高めることによる問題点・リスク」が出題されました。(口述は受験生により問題が異なるので全員に出題された訳ではない)
現預金比率を高めることのリスクとしては「投資が少ないことによる企業成長の遅れ」が挙げられると私は考えます。現預金比率を高めている状態は、CF計算書で言うと「営業CFではプラスになっているが、投資CFが少額になっているイメージ」です。このような状態ですと、現状維持はできるかもしれませんが、更なる成長を見込むのは難しいと言えます。

このように、直近2年間だけでも、設備投資を肯定したり、設備投資を意識した設問が増えています。この傾向から、少なくとも設備投資の助言が二次試験で御法度ということはなさそうだと判断出来ます。なお、中小企業は資金力が乏しいからやはり設備投資が難しいのでは?という疑問をお持ちの方もいるかもしれませんが、実務においては、補助金などの活用で投資金額を確保することが可能なので、中小企業が必ずしも設備投資がしにくいということではないと考えます。

③二次試験での回答の方向性は???

では、二次試験においては、設備投資系の問題が出たら、投資を後押しをする解答が正解かと言われると、それも違います。
「じゃあ!どっちなんだよ!」とツッコミに対する回答としては、「しっかりと設問文・与件分に食らいつき解答すること」です。例えば設問に「設備投資以外の方法で」や、与件文に「社長は設備投資を考えていない」などの記述があれば、設備投資の回答は避けるべきです。しかし、このような記述が特にない場合は、設備投資の助言も十分にして良いと考えます。
1番危険なのは、自身の頭の中で「二次試験では設備投資の助言は御法度」という決めつけの思考で回答することです。このような思考でいると、出題者の罠に陥る可能性が高いと考えます。(同じく、今回のnoteより「近年の傾向は投資を是とする傾向にあるから、絶対に設備投資!」とするのも危険です。)

今回は設備投資を例にあげましたが、中小企業診断士の二次試験は「決めつけの思考」で回答するとリスクが高いと考えます。繰り返しますが、大切なのは与件文・設問文に添うことなので、二次試験を受ける方は改めて認識を持っていただけると幸いです。

(完)

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