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中小企業診断士受験生ものがたり 第10話 「足掻き」

R5年5月。
二次試験の勉強は継続していたが、まだ何かを掴めない状態でいた。ただ、そんな中でも少しずつだが光が見えてきた。勉強会仲間と、再現答案を分析していくと、高得点答案に必要要素がわずかながら分かってきた。また先輩診断士に個別に受験相談にのっていただいたことで、自分に不足しているものが見えてきた。

そして、迷走した結果、目指した合格スタイルは
「どんな問題がきても平均点をやや超えるバランス型」とすることとした。

合格者の得点パターンを分析したところ大きく以下2つの型に分かれた。

①バランス型 = 4科目とも満遍なく点数を取るタイプ
②得意科目型 = 特定の科目で高得点をとり合格をするタイプ

①は点数のイメージとしては70点•70点•70点•70点で、②は1科目が75点〜90点くらいの高得点を取り残り3科目を平均55〜60点ほどとるイメージである。

私は極端な得意・不得意がないタイプであったことや、特定の科目に依存するのはリスクが高いと判断し、①のバランス型を目指すこととした。
このスタイルは、野球でいうところの全盛期のイチローのように、ど真ん中のボール(易問)はしっかり捉えクリーンヒットを打ち、外角低めのボール(難問)はファールで粘り空振り(0点)しないイメージである。
去年(R4年)の自分は、典型的な長距離打者で、ど真ん中がくればホームラン(高得点)を打てるが、そうでないと空振り(0点)をしてしまっていたので、まずはそのスタイル変更を目指した。

そして、そのスタイル変更を試す場にしたのが「模擬試験」であった。
二次試験の模擬試験は意味がないと言われることもあるが、受験生仲間の「模擬試験は過去問から作られているので、きちんと過去問を対策している人なら点数が取れるはず」という言葉に強く共感し、5月と9月に開催される2つの模試で上位5%になることを目標に掲げた。5%とした理由は、本試験で確実に上位10%に入るためである。(二次試験の合格者は例年上位18%で固定されているので、事実上の相対試験とも言われている)

そして5月にうけたLEC模試では全体16位と好成績を取ることができたが、事例Ⅲでたまたま高い点数が取れただけで再現性はないもので課題が残った。そして5月の模試以降、イチロースタイルへの変更を目指し勉強を続けた。
R5年は独学であったので、過去問演習中心の勉強であった。勉強会メンバーとの勉強に加え、勉強会以外のXで繋がった受験生と相互採点をしていった。なかなか実力が伸びているとは感じられなかったが諦めずに勉強を続けていった。

そしてR5年9月頭。
ついに実践の場であるLECファイナル模試を迎えた。今までイメージしていたイチロースタイルが通じるかを試す日である。模擬試験終了後は、すごい出来たとも感じなかったが、大きなミスもしていない感触を持てた。

そしてR10月頭。
模試の結果がでたのでXに投稿した。

自分でも信じられないが、722人中7位という目標を遥かに超える上位1%という結果を取ることができた。どの事例も満遍なくとれており、正に理想に近い点数分布であった。そして、この時驚いたのが、各設問が「平均点を少し上回る程度の点数」を取っていたことであった。正に易問はしっかり芯で捉えクリーンヒットをうち、難問はファールで粘り空振りしないようにした結果であった。

この模擬試験の結果を受け、
「自分が合格するイメージはこれだ」
と確信した。

ただ、それでも合格できる自信は全くなかった。
模試の結果を見た受験生仲間からは「絶対受かるよー」と言われたりもしたが、「この模試の結果にあぐらをかけば落ちる」と日々自分に言い聞かせた。これは、謙遜ではなく、受験生仲間との相互採点では必ず何かしらの指摘を受けていたので未だに多くの弱点があったためだ。そして、この時期の私のXの投稿を見ると、やたら「足掻く」というワードが散見される。10月はとにかく1点を取るためにはどうしたら良いかをひたすら毎日考えていた。

R5年10月28日。ついに二次試験前日を迎えた。
本試験前日にも関わらず相互採点していた受験生仲間から答案が返ってきた。(最後まで本当に感謝!)コメントを見ると「この答案なら大丈夫!指摘することがない!」と書いてあり最後の最後でほんの少しだが自信がついた。

夜になり、明日の持ち物チェックを終えると、
「ここまできたら、後はやるだけだ。」と覚悟を決めたのであった。

(第11話へ続く)

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