見出し画像

花瓶を買った。

ひと息の飲みもの: コーヒー


画像1


***************


 先日、隣町にドライフラワーの専門店が開業した。こんな片田舎の住宅街にそんな小洒落た施設がオープンしたとなれば目新しいもの好きのミーハーな人間が挙って殺到してしまうだろうと思い来店の前に一応電話をかけてみたのだが、案の定挙って殺到している事態のようであった。

遅ればせながら目新しい物好きでミーハーの私も殺到してみたのだが、店内の雰囲気と大きめの音量で流れるクラシック風のBGM、いかにもドライフラワーを飾ってそうな顔をしながら猫の尻尾のお化けのような花を持っている客などの光景が一気に目に飛び込んできたため、すっかり狼狽してしまったのであった。

しかしそこは流石私と言うべきであろうか、お洒落星人たちに異端の者だと祭り上げられる前に一瞬で平静を装い、「こういうのもリヴィングに飾っても良いかもしれないわねえ」などと呟きながら、いかにもドライフラワーを飾ってそうな顔を取り繕ったのであった。正直マスクをしていなければ危ないところであった。今頃お化け猫の尻尾で筆舌に尽くし難い拷問を受けることになっていたであろう。更に私の快進撃はそんなもんじゃ収まらず、家には花瓶がないという極めて重要な問題に気がついた。

そこで私は「今日は私の御眼鏡に適うシロモノはなかったようね」という顔をしながら、その足で急いでニトリへ向かい、大振りの四角柱の花瓶を三つ購入したのであった。しかし花は買っていない。
 ともかく私は何事も形から入る種類の人間である。ちょうど一年前にコーヒーミルを購入したのだが、この写真は私が研究に研究を重ねて淹れた自慢の珈琲。ではない。一年かけて三種類ほどの豆を使い切って挑戦はしてみたものの茶色くてなんだか酸っぱい汁が出来上がるだけで、セブン&アイの企業努力には適わなかった。


***************

書いた人

えもたくみ

エッセイスト。弾き語り系看護師。ペンネームは「エモい」という言葉へのレジスタンスから。

えもたくみさんのnoteは こちら

いただいたサポートは自分磨きのため(書籍代・脱ひきこもり)などに使わせていただきます。