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「箏と写ー生々流転」

千葉県誕生150周年記念いちかわ芸術祭のイベントの一つとして、開催されたコンサートです。
市川市にある千葉商科大学の学生制作映像によるコラボレーション・コンサートとのことで、中山法華経寺本院大客殿にて開催されました。
 
会場は、お寺の大広間。
バックの襖には、河瀬 蛙友氏による水墨画「敦煌莫高窟・三危山」が描かれています。

演奏された5曲のうち3曲は、そのふすま絵に、曲に合わせて制作された映像が、曲の進行と同時に写し出されます。
演奏は、木村麻耶さん。
映像により、曲の世界が増幅され、音とピッタリ合ったその様は、壮大な映画を見ているようなひとときでした。
 
普段は、音楽を聴いている時に自分の頭の中に(勝手な)映像が浮かび上がりますが、今回は、他者が描いた映像を見ながら音楽を聴く、という体験でした。
同じ曲を聴いていても、人が思い描いている世界は十人十色。
それが可視化されて、共感や驚きが入り乱れる、とても興味深い時間でした。
 
木村さんは、大好きな奏者さんのお一人。
いつも、とても細やかで柔らかい演奏と澄んだ歌声で、情緒溢れる世界を立ち上らせてくださいます。
 
演奏された曲は、いずれも時の経過をテーマとしているように感じました。
「ゆり」の花の一生
「枯凋の美Ⅳ」の儚い美しさを象徴した風鈴の余韻
「琴唄」の冬から春への移ろい
音が駆け抜けていく「楽」
そして、不遇の元名妓の演奏に我が身を重ねた「琵琶行」
 
法華経寺の敦煌莫高窟のふすま絵の前で、繰り広げられる現代技術を駆使した映像と箏の演奏。
公演タイトルの「生々流転」は、「すべての物は絶えず生まれては変化し、移り変わっていく」との意。
すべてが終わった時、ようやく、公演のタイトル「箏と写―生々流転」がすとんと腑に落ちました。

人の一生はあまりにも短く、時間は個人の思惑に関係なく流れていきます。
でもその一瞬、この世に存在できた時間をどう受け止め、どう過ごしていくのか。
壮大な宿題をもらったような気分です。
 
「いちかわ芸術祭」のメイン会場は、お隣の駅にある「千葉県立現代産業科学館」です。
にもかかわらず、この公演に限っては法華経寺で開催されたことの意味にうなずかされます。
芸術祭を、そしてこの公演を企画してくださった市川市の皆さま、関係者の皆さまに、心から御礼を申し上げます。
 
今日もまた、幸せな気分で家路につきました。
 
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。
https://gainful-butter-9171.glideapp.io/
 
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会場 中山法華経寺 本院大客殿
日時 2024年2月18日(日) 13:30
作曲家 伊藤美由紀
箏、二十五絃箏 木村麻耶
映像 千葉商科大学政策情報学部
 
プログラム
1. 藤倉大《ゆり》(2020)二十五絃箏と任意の声の為の
映像(学生):楜沢ゼミナール2年生
2. 伊藤美由紀《枯凋の美(Ⅳ)》(2018)二十五絃箏とエレクトロニクスの為の
映像:楜沢順 
3. 伊藤美由紀《琴唄》Ⅰ.寒月 Ⅱ.水の紋(2024)二十五絃箏と声の為の(世界初演)
4. 沢井忠夫《楽》Ⅰ.無窮動 Ⅱ.変奏曲 Ⅲ.輪舞(1988)
映像(学生):楜沢ゼミナール3年生
5. 伊福部昭《琵琶行》―白居易ノ興ニ效フー(1999)

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