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猫と暮らす

猫と暮らし始めておよそひと月。
相変わらず猫とのコミュニュケーションは謎に満ちている
猫は人と暮らしているから鳴くのだとどこかで耳にした。
何かニンゲンに訴えているということか。
しかしそれが分からない。トイレが気に食わないのか、食事が気に召さないのか、それともそもそも自分がこんなちっぽけな部屋にいることに物申したいのか。
努めて猫に尽くそうとしているのだが、猫はどこか不満気に見える。
にゃー、と鳴くので呼ばれたのかと思って近付くと、くるっと寝床に去っていく、と思うとまたすぐに出てきてにゃーと鳴く。
押し入れが汚れたのかと思うとそうではない。
押し入れの中でくつろぐ猫に手を伸ばすとペロペロ舐めてくるので、お礼に撫で返してやると、まあまんざらでもない顔をする(ように見える)
意図が分からぬと猫飼いの先輩に漏らせば「猫はそう言うものだ」と口を揃えて言う。
猫だから、が全ての答えなのだと言う。
なかなかどうして生まれた時からの勝ち組だ。
分からないながらに、とりあえず鳴いたら返事をしてみることにした。

「にゃっ」
なんでしょう?
「にゃー」
うーん、お気に召しませんか?
「にゃーーーーん」
おや、撫でて良いのですか?

言葉を交わせたら楽だろうにと思う反面、交わせないから成り立っているのかとも思う。
文章上、便宜的に「にゃー」を使っているが、驚くことにほとんどにゃーとは鳴かない。
なーん、だったり、ぬぁー、だったり、ちょっと人間の発声では表しがたい音を発する。
喉を鳴らすのも別にゴロゴロではないのだ。ちょっと掠れた腹のなる音のような、普通のバイクをそれこそ猫サイズにしたくらいのエンジン音のようなこれまたあまり聞き馴染みのない音を発するのである。
何かを訴えているらしいことは伺えるも、おそらく私は意図をつかめていないのだろうー猫にとってはかなり察しの悪いニンゲンかと思う。

加えて最近困ったことは、人と会話をする際、話のネタが猫の話ばかりになりつつある。検索履歴は猫関連ワードがたまり、動画サイトのおすすめには猫動画が挙げられるーこれではまるで猫大好き人間ではないか。
いやはや、今まで、猫を飼う人はSNSに猫の写真をよくアップするなぁ、とほくほく享受してきたのだが、まさに生活の中心が猫になるのである。そうなっておかしいことはなんらなかった。
ましてや私は、一人気ままに生きてきた人生の中に、いきなり猫が湧いて出たのだから、脳内容量が猫に侵食されてしまうのも致し方ないーと思うことにした。

寝ても覚めても、朝から晩まで猫のこと。
私と猫の暮らしはまだまだ始まったばかりなのである。

にゃにゃにゃ。

最後まで読んでくださってありがとうございます。