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あなたのOPTIONは?

話題となっている、文章を生成する人工智能「ChatGPT」に対しては警戒の声も大きいようです。

「ChatGPT」との会話内容は、これを作った「OpenAI」という会社によって利用される可能性があるため、個人情報・機密情報は入力しないのが無難ですが、利用されないような設定にすることも可能だそうです。

「ChatGPTに“シークレットモード”機能追加 企業向けプランも計画中
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2304/26/news075.html
米OpenAIは4月25日(現地時間)、AIチャットサービス「ChatGPT」に、チャット履歴を保存しない機能を追加すると発表した。ユーザー設定で「Chat Histroy & Training」をオフにすれば、AIとの会話はモデルのトレーニングに使われず、サイドバーにも表示されない。(中略)OpenAIは数週間前に履歴を保存しないオプトアウトを可能にしているが、Googleフォームから申請する必要があった。」

サラッと出てきた「オプトアウト」という言葉、日本語として熟(こな)れているとは言えません。ちょっと調べてみましょう。

opt

動詞optはフランス語の動詞opterオプテから来ており、使い方も似ています。

「A sa majorité il【a opté】《pour la nationalité française》.
成年に達して彼はフランス国籍を選んだ.」
(小学館プログレッシブ仏和辞典)

「I【opted】《for Mr. Jones's class》.
私はジョーンズ先生のクラスを選択した.」
(研究社新英和中辞典)

opter/optに続く《 》の部分が「何を選ぶのか」を表しています。フランス語の方のpourはforに当たる前置詞なので、そこも同じ発想です。

英語ではto不定詞を置いて「▲▲することに決める」という言い方もできます。

「He opted to go alone.
彼は一人で行くことに決めた.」(同)

(後ろに不定詞を続けたい場合、フランス語ではopterではなく別の動詞にするようです)

そしてoptに、「外」という方向性を示す副詞outが組み合わされると、「参加しないことを選ぶ」となるわけです。逆の意味の副詞inならば「加わる」となります。

次の文章はそのOpenAI社の「よくあるご質問」のページに載っているものです。

「You can request to opt out of having your content used to improve our services at any time by filling out this form. This opt out will apply on a going-forward basis only.」

1文目ではopt outは動詞句として、2分目では名詞句として登場しています。

「あなたの入力した内容を当社の諸サービスを向上させる目的では使わせないように選択することは、この書式を埋めることによっていつでも要請できます。断るというこの選択はそれ以降の話としてだけ適用されます。」
(つまり、これまで既に入力した内容については使うことがあるということです)

option

「選ぶ」という動詞optから派生する「選択」という名詞が、ご存じoptionです。

「You have no other option.
君にはほかに選択の自由はない.
You have only two options: to go or not to go.
君には2つの選択しかない.行くのか行かないかだ.」(同)

専門用語としてのoptionには次のような特殊な意味があります。

「ある資産(株式や債券など)を将来の定められた時点(行使期限)に、一定の価格(行使価格)で売ったり買ったりできる権利のこと。」
MBA用語辞典

リンク先に、簡潔にまとめられた解説が載っていますので、そちらをご覧ください。

その意味合いが分かっていないと、いきなり英文中にこの意味のoptionが登場した場合に戸惑うかもしれません。

特に「put option」「call option」という言い方をする場合、putもcallもoptionも単語そのものは難しくないのに結局何を言っているのか分からない、ということになりかねません。

put optionは「売る権利」、call optionは「買う権利」の方ですが、なぜそう呼ぶかというと、前者のputは「put up for sale売りに出す」、後者は相手にその資産を手放すよう「call要求する」というイメージから来ています。

さらにこれらは「option」を省略して、単に「put」「call」という形で登場することもあるので、タチが悪いです。一見、お馴染みの動詞かとおもったらオプションのことを言っているのだった、ということがありえます。

optional

optionの形容詞形がoptionalで、「選択できる」ということです。

これは「オプショナル・ツアー」という表現でよく見ます。

例えば、神社仏閣巡りを基本とする京都観光のツアーに参加し、希望者は別途料金を支払って「保津川下り」に行く、というケースでは「保津川下り」の部分がoptional tourになります。

一般的には以下のように使います。

「A tie is optional.
ネクタイは(してもしなくても)どちらでもけっこうです.
An air conditioner is an optional extra.
エアコンはオプションの付属品です.」
(研究社新英和中辞典)

adopt、adoption

optに、英語でいえばtoなどの意味を持つラテン語の接頭辞ad-が付いたのがadoptです。

「取り入れる」「採用する」といった意味があり、これらも「選択」であると言えるでしょう。

名詞形adoptionと併せて用例をご紹介します。

「His plan was adopted.
彼の計画が採用された.
The committee adopted the motion.
委員会はその動議を採択した.」(同)

「adoption of information technology
情報技術の導入」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)

「取り入れる」の特殊な場合として「養子に取る」という意味でも使われます。

「They adopted the child as their heir.
彼らはその子を跡取りにした.
He was adopted into our family.
彼は我々の家族に養子として引き取られた.」
(研究社英和中辞典)

「put [give] up one's child for adoption
子どもを養子に出す」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)

武将の結城秀康(ゆうきひでやす)は徳川家康の実子ですが、それならなぜ「結城」なのでしょう。

小牧(こまき)・長久手(ながくて)の戦い」というのを歴史の時間に習ったことがおありになるかと思いますが、秀吉と家康の間に結ばれた媾和の条件として秀康は秀吉の養子に出されたのでした。

長いこと子宝に恵まれていなかった秀吉は秀康以外にも養子をとっていましたが、やがて淀殿が秀吉の実子鶴松を産んだので、養子たちは他家へと再び養子に出されました。秀康の場合はそれが結城家だったというわけです。

その辺りの事情をウィキペディア英語版はこう書いています。

「However, in 1589, a natural son was born to Toyotomi Hideyoshi. Hideyoshi had adopted several promising candidates as heir over the years, and began to give these men in adoption to other great houses to avoid a potential conflict over the succession.
(しかしながら、西暦1589年、豊臣秀吉に実子が誕生した。秀吉は何年にもわたり、後継者として有望な候補者を数名養子に取ってきていたが、起こるかもしれない跡目争いを回避するため、この男達を養子縁組で有力な他家に与え始めた)」

お読みいただき、ありがとうございました。ではまた。

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