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MINUTEは「小」

前回secondを扱いましたので、今回はminuteについて書いてみようと思います。

そもそもの話として、minuteの「nu」を「ニ」と発音するということが結構不規則的だとは思いませんか?

minuteというつづりを見つめるとむしろ「マイニュート」の方が素直な英語式発音であるような気がします。

マイニュートとメニュー

そして「マイニュート」という発音で使うminuteが実際に存在します。そしてそれは形容詞として用いられるものです。

ラテン語の動詞「minuere 小さくする」の過去分詞「minutus 小さくされた」から来ていて、「微小な」「詳細な」「些細な」といった意味になります。

「微」「小」「細」「些」という漢字がsmallな感じを伝えてくれます。

「minute particles 微粒子.
minute researches 綿密な研究.
He worries too much about minute differences.
彼はささいな違いにこだわりすぎる.」
(研究社新英和中辞典)

尚、同じくminutusから別の形に変化した「menu」は「詳細なリスト」ということです。「献立表」はもとよりそうですが、コンピューター・ソフトの画面で指定の場所をクリックすると出てくる「プルダウン・メニュー」も、それぞれの場合に利用可能な機能の「詳細なリスト」を表示するものですね。

文字通りの「分」

さて、より馴染みのある発音「ミニット」を使う名詞minuteに移りましょう。

これもラテン語minuereから来ていて、「小さく分けた部分」を意味します。

角度の単位としての「分」は「1度」を60等分したものであり、時間の単位としての「分」は「1時間」を60等分したものですね。もっとも、角度は「度」までを話題にするのが一般的で、「分」が角度の単位であるというイメージがそんなにないかもしれませんね。

「ちょっとの間」

時間の「分」の方は本当の「1分」だけでなく、「瞬間」「ちょっとの間」をも表します。
「in a minute すぐに.
Wait a minute.=Just a minute. ちょっとお待ちください.」(同)

同源・同つづりのフランス語「minuteミニュト」にもまた、この用法があります。英語と同じく「1分 une minute」を使う場合のほかに、「5分 cinq minutes」のことを「ちょっと」とする言い方があります。

「Attends-moi cinq minutes. ちょっと待っててくれ」
(小学館プログレッシブ仏和辞典)

実際に5分もかからないか、それ以上になるかは状況次第だと思いますが、彼らの感覚では5分は短い時間ということなのでしょう。

ちなみに、日本語の話し言葉で「一瞬待って」という時、決して「一瞬=まばたきを1回する時間」で済まないにもかかわらず、その表現自体には文句を言う人はめったにいないでしょう。

さて、この「ちょっとの間」用法に関係するブランド名に「ミニッツメイド」があります。

「名前は、創業当初に市販を開始した凍結濃縮方式の製品は水で溶かすとすぐにジュースが出来たことから、「すぐに (Minute)」「ジュースが出来る (Made)」のを一分で戦闘準備ができる民兵「ミニットマン (Minute Man)」にかけ、同音異義語の「Maid」と「Made」を掛けたことに由来する。」(ウィキペディア

独立戦争当時、「ちょっとの間」で出撃できる態勢を取っていたから「minuteman」という名で呼ばれていたのですが、現代のミサイルにこの名前が引き継がれており、アメリカ人にとって意味を持つ名称なのだと思われます。時々、報道の中に登場するので、この名前の由来を知っておくこともいいでしょう。例えば以下のように報じられます。

「前回のミニットマン3発射実験は、ウクライナや台湾をめぐる緊張の高まりを避けるため2度延期され、8月16日に実施されていた。」
https://www.afpbb.com/articles/-/3422750

ちょっとおもしろいminuteの用法

フランス語のminuteにはちょっとおもしろい、「すぐに出来る」という用法があります。

店頭に「Talon Minute」や「Clé Minute」という看板が掲げられていたらそれは「靴底すぐ修理します」「合鍵すぐ作ります」という意味合いです。

こういうサービスをしてくれるお店として有名なのは「ミスターミニット」ですよね。社名をアルファベットで書くと「Mister Minit」であってMinuteではありませんが、会社の設立時の経緯から考えるとこの「すぐに出来る」から来ていると推測されます。それはこういうわけです。

西暦1950年代後半、ベルギーでは細くて尖ったヒールの靴が流行していましたが、そういった靴が石畳で傷めつけられた人達があまりにも多数で、職人達がさばききれずに修理には平均10日もかかったそうです。

そこでその需要に応えるべく、その場で待っている間に修理が完了する「Talon Minute」を原則とする店をブリュッセルに開いたのが1957年のことだと、同社のサイトでは伝えています。
https://misterminit.eu/en_be/about/history

接続詞的用法

さらに接続詞的にその後に節をつなげて、「~した瞬間に」「~するやいなや」といった使い方もあります。
「I recognized him the minute (that) I saw him.
見たとたんにすぐ彼だとわかった.」(研究社新英和中辞典)

関係詞thatを使うにしろ、「the minute」の手前には前置詞は置かれていないので、minuteは名詞ながら接続詞のように働いていると解釈するわけです。

これは「the moment」や「the instant」にも同様の使い方があります。

「The ghost vanished the (very) moment the cock began to crow.
亡霊はおんどりが時を作り始めるやいなや消え去った.
Let me know the instant she comes.
彼女が来たらすぐ知らせてくれ.」(同)

もっともフランス語minuteで同じようなことをしようと思ったら前置詞は必要です。

「The minute that the war started, everybody was glued to the television.
その戦争が始まるや否や、みんなテレビに貼り付いた」の訳としてCollins French-English Dictionaryでは以下のようにされています。

「À la minute où la guerre a commencé, tout le monde était collé devant son poste de télévision.」

「à」がその前置詞です。以下「la」は定冠詞、「où」は関係詞であり、「guerre」はwar、「a commencé」はstartedに対応します。

意外な「ミニット」

「小さくされた」という点でイメージ出来ますが、minuteには「覚書」や「議事録」という意味があります。(後者は複数形にします)

会議でいろいろと話されたことをギュッと「小さく」して議事録になるわけですから。

例えば以下のように使います。

「Stephen Smith took the minutes of the Board meeting.
スティーヴン・スミスが委員会会合の議事録を取った」
「Review of the minutes from the meetings held on October 10, 2022 was conducted by the Board.
2022年10月10日に開かれた各会合の議事録に対する精査は委員会によって行われた」

お読みいただき、ありがとうございました。ではまた。

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