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『天国崩壊』(伊藤なむあひ著)読了。

上記、『天国崩壊』(伊藤なむあひ著)読了しました。

伊藤なむあひさんは短編『跳ぶ死』『天使のマーチャンダイジング』等の短編のイメージだと、悍ましいものを美しいと錯覚させて読ませる作者さんだと思っていたのですが、

長編になると、書く/書かないの切り分けが絶妙だな、と感じました。

よくわからないものも、エグいものも、やらしいものも、ひどいものも、理解した気持ちにさせて読ませる力?加減が絶妙で、例えばクライヴ・バーカーとかが同じ設定で書いたら、わたし3秒で離脱すると断言します。気持ち悪いわ怖いわで。

そこら辺に普通にいる(だろう多分)一介のおかんに、この設定と世界観で完読させるバランス感覚が凄い。

そして、読み終わって、個々のエピソードには色々思うところがあるのですが、あらすじを書けと言われたらゴメン寝する、この変則マトリョーシカぶりよ・・・。「あ、そういうこと」って思ったこと4回、

「おまえがみていたのは、残像だ・・・」

みたいな、「はい、それは実は次の物語の一部でした」って、ちょっと!ちょっと!なんていうんですか、孫悟空気分がたっぷり味わえる小説です。読書人としてマゾヒズム傾向のある、弄ばれたいひとには強く強くおすすめしたいですね。

以下、印象深かったエピソードについて。

①chap.1.a

ある男の子が、子どもであることから逸脱する話。うちの息子もまあそういうことになるかもしれない年代に差し掛かりつつあるわけで、戦々恐々としますね・・・。まあ私も昔は逸脱したわけですが、親になってみると、どっしり構えることの難しさを痛感します。

裏面のAfterで、あー・・・お母さんすごくわかるわー、こういうの普通に日常であるわー・・・。非日常が絡もうが絡まなかろうが、親子の関係の難しいことよ。おもわずゲンドウポーズになりました。

②chap.1.b

クスリの話。売人は、天使?本当に何してんの・・・と思わせて、他エピソードによって色々色々明かされて、もう「あーあーあー、きこえなーい」と何もかも忘れ去りたい、グロテスクなお話でございました。内容も設定も全方位死角なしで凄惨。おわぁ。あのお手紙ね。あんなのぶちこんでくるとか、あむあひさん、ほんま、なむあひさん・・・。

③chap1.c

ハンバーガーショップにて。店長も決して「いいひと」ではないし、なんかこう人間関係の狡さとか歪さとかが、どろりと見えていた話ではあるんですが、憎めないし切り捨てられない・・・。二人の関係をどう定義していいのか、一番落ち着かないし、気になる話でございました。

日常に「天使(?)」が入り込んできて、
ちょっとした非日常が描かれるわけですが、
仮に「天使(?)」が存在しなくても、きっとこの救いがたい現実の醜さみたいなものは変わらずあるわけで、
天国が崩壊しようがしまいが、生きていくんだなぁ、と・・・。