六枚道場001、読んでみた(誤読の塊)

ガイドライン|オンライン文芸サークル〈六枚道場〉

https://note.com/6mai_dojo/n/n92c4997ba394

ブンゲイファイトクラブで灯った文芸の火を消したくない。そんな気持ちで紙文さんが設立された、原稿用紙6枚で切磋琢磨なさる投稿サイトです。

絶対面白いよね!

ということで、全部読んできました。いやあ眼福でした。面白いの捻ったの瑞々しいの痛いの幸せなの切ないの・・・作家魂がたった6枚に凝縮されています。読むのを好きな方はぜひのぞいてみて。絶対に好きな作家さんに出会えます。

あらためて、作家のみなさま、書いてくださってありがとうございます。

あと、作家さん・読者さんによる感想の群れがまた最高で、まずはガイドラインを一読の上、Twitter検索してみることをおすすめします。

読んだ後で!!(重要)

いや、素晴らしい深い読みだから、ひっぱられちゃう。自分でガンガン考えてからの方が、絶対に楽しいです。読書会みたいでしたよ。

第1回〈小説〉部門・グループA|オンライン文芸サークル〈六枚道場〉

  https://note.com/6mai_dojo/n/nb9f8da018d05

1. 「孤高の右翼手」小林猫太さん

note https://note.com/04140414/magazines

Twitter 別名義

はりこのとらのあな https://www.haritora.net/sp/script.cgi?writer=6808

脚本を書かれる方なのか・・・!道理で・・・!登場人物たちにあえて色をつけず、読者の解釈の幅を広げてくれる作品なので、感想を読むのが楽しかったです。誰一人被ってないよ・・・。

感想

あああ、Rくんのお母さん・・・!めっちゃかわいそう・・・!
おかんあるあるで、ゲンドウポーズになりました。

Rくん(ライトだから?)大変でかわいそうだけど、最後の最後で場を締めるために出てくるおかん、もっと悲惨じゃない?これ、数時間後、罪悪感とかで立ち直れなくなるやつやーっ?!

小林さんに対してではなく、小説家の方たちになのですが、
全般的におかんという生物に意識的に?無意識に??ひどく厳しくて、「子どもを心配しているけれど、実は的外れで、致命的なサインを見逃す」ポジションによく配置されるのです。
これは、かつて息子さんだった立場として、そんなにおかんがわからんちんだった?許せない感じ?

ごめんよおお…
でもおかんもおかんなりに頑張ってるんだよ…孤高の右翼手ならぬ、孤高の母なんだよ…
Rくんへの仕打ちとか知ったら母は泣くよ?

最後、Rくんがどこに行くにせよ、何をするにせよ、無事にお母さんのところに帰ってあげてと祈らずにはいられません。

※ 他作家さんたちも、「母」の扱いには様々なご意見があるようで、実在(いちおう)の母として、教えられることが多々ありました。ありがとうございました。

※ RWさんより、「これはRくんの心象風景なのではないか」という指摘があり、あえて踏み込まなかったことがマイナスであるとは限らないことにホッとしました。親が詰問してよい方向に向かう事象かどうかは難しいところ。Rくんが、自分の中で折り合いをつけ、いつか打ち明けてくれますように。

2. 「金網」澪標あわいさん

Twitter、note他、検索しても見つからない、謎の作家さん。とても文章が上手いので、どなたかの覆面なのでしょうか・・・。これは好み!すてき!と思った作家さんなので、すでに上梓されている作品を読みに行けない悲しさでハンカチを噛みしめています。もしデビュー作だとしたら怪物です。

感想

1年に1度しか開かない扉の向こうのお祭り、それだけでわくわくするのですが、無邪気に(残酷に)楽しむだけの子どもから、仕掛ける側の大人へ。
同じように見えて、毎年違う人間模様があり、思い出が重なっていくのでしょう。

私はいま、スキあらば余計なことをしようとする悪ガキ…もとい元気な坊っちゃん嬢ちゃんを捌きながら店番する(共感しました、終わったら呑んで下さい!)側なのですが、いつかこんなふうに穏やかに祭りを眺めることがあるのかなあ、と、しみじみしました。

私事ですが物心つく前に祖父を亡くしましたので、祖父という存在には憧れがあります。
おじいちゃんとお祭りにいけたら、こんな感じだったのかなあと、うっとり読ませていただきました。

3. 「永遠に一緒」中野真さん

Twitter @nakanomakot0

note https://note.com/nakanomakoto

破滅派 https://hametuha.com/doujin/detail/makoto/

「循環小数の夜」から追いかけ始めた作家さん。3作読ませていただいて、こころのやわらかいところ、よわいところを痛々しいくらいに曝け出し、でも露悪的だったり否定したりはしない、ただ生きていくんだ、というような感じを受けました。ところが今回、これは嬉しい驚き!こんなパワフルはお話も書かれるんだ。追いかけるのがますます楽しみになりました。おかんとしても、息子・娘がまず最初に手を伸ばしそうなジュブナイルに配架されそうな作風に注目しています。

感想

これ、凄くないですか?!

主人公は石平さんにどっぷり依存というか崇拝していて、明らかにやばい親戚たちがでても受け入れちゃってるんですが

最後のアレ、読み手次第でどうにでも取れますよね。

ホラー展開まったなしのトドメでもよし、石平教(もう宗教じゃないですか盲目具合)からの目ざめでもよし、お前は何を言ってるんだ的なツッコミでもよし

バリエーション無限大の一言。すごい面白いです!

…私は主人公もう逃げられないから、いっそ気づかないほうがよかったかもナー、と思って読みました。石平さんの愛は重すぎる。

(いくらいいひと、いい義実家でも、死んでからも完全アウェイなあちらの一員として組み込まれるのは…ちょっと…
しかも、ナチュラルに孫要求するタイプなんでしょ…)

いや、里帰り先もなく夫の実家の一員として未来永劫のみこまれるのって、ちょっとどころじゃなく重いので、私としては主人公に逃げることをお勧めするんですけど、主人公はどうするのかな・・・。

第1回〈小説〉部門・グループB|オンライン文芸サークル〈六枚道場〉

4. 「朱色ジュピター」ハギワラシンジさん

Twitter @hagiwarasinzi

スクライブ @hagiwarasinzi

ツイキャス https://twitcasting.tv/hagiwarasinzi

note https://note.com/deartherver1048

短編 http://tanpen.jp/authors/179-8.html

カクヨム https://kakuyomu.jp/users/Haggyhash1048/works

破滅派 https://hametuha.com/doujin/detail/haggy/

エブリスタ https://estar.jp/users/7346877

ノベルアップ、小説家になろうにいらっしゃる方は、同一人物なのかどうか確認がとれず・・・。全部同じ方だとしたら凄いですね?!ツイキャスを視聴させていただいたのですが、イケボで歌もうまかったです。天はひとに幾つも才能を与えるのですね。

感想

ハギワラシンジさんの「朱色ジュピター」、読みました。
木星、いいですよね、木星・・・
SF好きなら愛さずにはいられない星で、やはり「きたきたきたきたーっ!」ってわくわくするイメージがこれでもかって出てくる、おもちゃ箱みたいな小説でした。
最初に「タクシードライバー」で普通っぽくいくのかな?と思わせておいて、レインメーカーから怒涛のイメージラッシュ。なにこれ、かっこいい!

しかし、「母さんみたいにうるさい」って・・・
宇宙に進出してなお、おかんという生物は、そういう性から抜け出せないのかと、ごめん寝しました。おかんだって宇宙仕様に進化したい。

そう!おかんだって!宇宙を疾走したい!!(魂の叫び)わかものだけズルいよ、あんなかっこいいピアノでさ・・・いつかかっこいいおかんがでてくると信じて、追っかけようと思います。

5. 「メアリに書いて欲しかった」一徳元就さん

Twitter 別名義

note 別名義

ゲンロンスクール https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/tygennari/

「世迷言」から追いかけている作家さん。私の力量ではとても掴めなくて、毎回作者さんが狙ったところとは違うところに着地してしまうのですが、好きなんだ・・・作風が好きなんだ・・・。根底にある切実さというかつらい世界を書いてなお透けてみえる作者の希望というか優しさというか・・・ほら描写も難しい、捕えきれない作家さんです。

感想

今回もまた、盛大に誤読しました。おもいっきりナナメにいきましたので、こんなやつもいるさ、ということでさらしておきます。答え合わせはハギワラさんのツイキャスをきくといいですよ。目からうろこが落ちすぎて、目がなくなるかと思いました。

一徳元就さんのタイセンEに出された作品、おかんとして入り込んだ作品で、次回作をわっくわくでお待ちしていたのです。

以下、「メアリ」「人造人間」「死体安置所」等、たくさんのヒントをちりばめられてなお、フランケンシュタインを連想できなかった、文芸偏差値が絶望的に低い、一介のおかんの初読感想だったんですが。

まぁ!まぁぁ!まぁぁぁ!かわいい二人じゃないの!

最高に頭の悪い感想。

やだもう、これが若さってやつね、みたいに、おかん舞い上がっちゃったよ・・・・
だってさ、修治さん?

柑橘類の果汁の命中率とかなんとか小難しく語っているけど、実態はオレンジをあーんしてもらったってことでしょ?カップ麺だって書いてないけど一口もらったりしてるんじゃないの?白状してごらーん( ´艸`)

繰り返しますが、私はメアリが誰かには全くたどりつけなかったので、ワンちゃんだと思ってたんですよ。「メアリに書いて欲しかった」=小説書くのはちょっと休んで私に構ってよ、ワンちゃん代わりに書いといて、という同居人さんの気持ちがタイトルかと・・・はは・・・一徳元就さん、大変申し訳なく・・・もうお前は読むなとか言われたらどないしよう。

でもでも、修治さんも、意識的か無意識かわからないけど、共犯者だと思うんですよね。みかんとかラーメンの汁が目にはいる確率なんて100%のわけないじゃないですか。しかもワンちゃんがキーボード入力してるってことは、たぶんノートパソコンだと思うのですが、食卓でパソコン使ってて、正面に座ったひとが普通にオレンジむいたりラーメンすすったりしたら、汁はディスプレイ背面にしか飛ばないじゃない。
なら、同居人さんは「構ってよ」って飛ばしてきてて、修治さんは「いいよ」って受け止めてるんだと思うんですよね。
つまり、修治さんだって構ってあげたいのだ!
どうです、この迷推理。

あんこうの腑分けとか、不穏なAとかBとか忘れて、修治さん・同居人・犬だけに注目してたので、最後の一文も言葉に出さない「構って・いいよ」だと読んでたんですよね。だって、アレ、一人じゃできないから、そういうことかと。

元就さん、本当にすみません。次回があれば!正しく読みたいと思います!

と、愛だけしかない誤読の塊をつぶやいていたら、作者さんからヒントをいただきました。

読み直して、きちんと感想を追記したいとおもいまふ・・・。

以下、二回目感想。

ヒント1.太宰治賞。小生、その賞が存在することすら存じ上げなかったでござる、げふんげふん。ひとつまた賢くなりました。この世に存在する私以外の2人のドッペルゲンガーのために、ウィキへのリンクを貼っておきますね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E5%AE%B0%E6%B2%BB%E8%B3%9E

「第35回(2019年) 1201編 受賞 「色彩」 阿佐元明」・・・順当にいけば、2021年のお話なのか、なるほど・・・!

あんこうの腑分けについて。あ、あんこう・・・?なぜにあんこう・・・?必死に頭をひねったのですが、まずは食べられる魚であること。食べること=読むこと=読者の糧になることかと解釈しました。そのままでは咀嚼できない、深海=まだ書かれぬ想像の世界から、食べられるもの=形式へとイメージを解体し、調理するいイメージなのかと。生々しいのは、まだ作者の中で決着がついていない=作品に落とし切れていないイメージのパーツだからなのかと思いました。

そして、語り手が男性であれ女性であれ(本当だ、人称代名詞がないや・・・。ただ、語り手は男性・同居人が女性だとなぜか感じました。そのあたり、私の無意識化の性差別/区別なのか、作中に思わせる何かがあったのかは、後ほど追求しようかと)、ポケモンファンであることは間違いないので、ものすごく親近感をおぼえました。あなたが書いたものは絶対読むわ、だってポケモン仲間じゃないの・・・!ナマズンなんて普通しらないですよ。マニアとお見受けしましたね。

ヒント2.3.作中小説について。そう、この作中小説が難解で(小説?戯曲?句?詩?さまざまな形式が混ざっていて、しかも連続体なのかどうかもよくわからない)・・・。太宰治賞は、いったいどのような作品を公募しているのか気になります。ブレイクスルーが上手く生まれるといいですね。

ときどき登場する怪文書が、ワンちゃんが適当にキーボードを押されたとのことですが、ここがすごくよかったので、作者の意図を超えて残すべき何かが生まれたと感じました。無作為はときに作為を超えて何かを生み出しますね・・・。

全裸で生まれた男(33)・・・ヒントをいただいたいま、ようやくわかりました、なぜ33か。キリストの死亡年齢・・・!んもう、賢いひとは息を吸うように教養が滲みますね。メアリ・シェリーが復活をテーマに書くことを考えると胸が躍ります。すごいものが読めそうだ。ちょっとフランケンシュタインから読み直さなくちゃ。

しかし復活して最初に出会ったのが馬頭のヒロインだとか・・・馬頭・・・?!「山羊だと悪魔だし」「牛だとミノタウルスだし」って、馬でも怖さは変わらないよ、地獄の獄卒だよ、むしろ馬の方が怖いよ!人馬だとケンタウルスが思い浮かびますが、ケンタウルスは体が馬だからまだいいんですよ、頭が馬なのはちょっと。ちょっと!語り手は西洋だけじゃなくて東洋に目を向けてあげて?!

note規定にひっかかりそうだからぼやかしてかきますが、悲惨な見方ををすると、繰り返されるセクシャルなイメージですは、たぶん全部結実しない、真似事としての性=生なのかな、と思いました。気持ちも通じ合わない、結果も伴わない、一方的な形骸化した、儀式みたいな?深読みしたら、オレンジもラーメンも、行為する側と受け手側との断絶=受け入れない、取り込まない、排出する装置としての涙なのかもしれません。

という感じでしょうか。でもでも、やっぱり同居人には愛があると思いますよ。ワンちゃんに対しても、語り手に対しても。たとえそれが語り手にまったく通じないとしても、愛はそこにある。そう思います。

6. 「ほのかに草の甘い香りがするコーヒー」池亀大輔さん

Twitter @ikegamedaisuke

note https://note.com/ikegamedaisuke

前作「あまえたがえる」は衝撃でした。この方の観察眼というか、母という生物をとらえる視線の鋭いこと鋭いこと・・・どう生きればこのような描写が。すごい。今回は動物について(おそらくライフワーク)ですが、また視点が独特なんですよね。・・・どう生きれば(ループ)

感想

0001Eで出された作品の対、というか、同じアルバムに入っている別の曲といったイメージでしょうか。おそらく池亀さんのライフワークとして、普段は私たちが見ないようにしている動物への惨い扱いを可視化し自覚させることがあると思うのです。小説、というより、祈りを読んでいる気持ちで背筋が伸びました。

このお話とは関係ないのですが、オーストラリアの火事で動物たちが大変な目にあっている記事がTLに次々あがっていますよね。私などよりはるかに、池亀さんは心を痛めてはるんやろうなあ。

第1回〈小説〉部門・グループC|オンライン文芸サークル〈六枚道場〉

7. 「六本木の紫陽花」夏川大空さん

Twitter @natukawa_sky

カクヨム https://kakuyomu.jp/users/natukawa

小説家になろう https://mypage.syosetu.com/257291/

note https://note.com/soratobuningyo

プロフィールが独特で、「おっ」となりました。きっと面白い視点からお話を書かれるのだろうな。追いかけるのが楽しみです。

感想

特に若者むけ、というわけではないのですが、とても瑞々しい感じがする、ジュブナイルとしてもいい作品だと思いました。
今回の六枚道場の中で一番、息子に読んでもらって感想をききたいな、と思った作品です。

8. 「箱」深澤うろこ

Twitter @fukasawauroko

破滅派 https://hametuha.com/doujin/detail/fukasawauroko/

note https://note.com/sakanalog

おかん読者集合ー!深澤うろこさんの描かれる「母」、一筋縄ではいかないですよ。子どもが/書き手が/読者が「母」いう記号に託すものを軽やかに・・・いや違うな、そんな狭いものに全くおさまらないパワーのある母を書かれます。母が主題じゃなくても。他にも素敵なところはたくさんあるのですが、母という役割に反逆するわけでなく、ただ存在だけで固定観念を超えてるキャラクターを自然に(そう読める)書かれるのは、それだけですごく稀有な才能だと思うのです。

感想

『俺の粗忽』を読ませていただいた時にもびっくりしたんですが、深澤さんの作品を読んでいると物事の境目が溶けていく感じがすごくて。今回は主人公の背景とか・・・風呂場の息子とか、みさとちゃんの話とかが、六枚の中で溶けて混ざってわっと押し寄せてくるので、もう・・・ちょいまち!ちょいまち!おかんにはちょっとこの若者テンションはきっついから、最初から読み直してもいいかしら?!

・・・というか、息子がいるなら、このひともおかんなのか。Oh、実はおかん小説。Oh・・・。

(2回目読んできたのですが)

深澤さん、「箱」といいつつ、色んな「箱」の殻だけ提示して、中身をぶちまけてますよね?!
(混ぜた、とかいうゆっくりした動作ではなくて、洪水みたいに一気にひっくり返した感じで)
お片付けは読者の頭の中で、ってことですか、そんなぁ・・・好きだけども!

読み終わった後、「箱」ってなんだろうね、主人公は本当は加害したのかなあ、とMさんやIさんとお話させていただき、知見が広がりました。ありがたや・・・。

9. 「脱兎」あさぬま

Twitter @shirabesuzuki

すっごく文章が自然で、覆面作家さんなのかな、と思いました。

感想

ごく自然な筆致で学校というものの閉そく感とか、自由への希求とか、それを(勝手に)動物に投影する心理が描かれるのですが、ホラーとしても読めました。だって、

く、黒井先生が見ている…?

宇都宮先生の居眠りを目ざとく見つけ、フェンス破りの疑いをかけてくる黒井先生。怖い。
黒井先生=Kですよね?
10年間疑い続けてたのか。もしかして、もうひとりの生物委員はあなたか?怖いよう…

宇都宮先生は過去回想を暢気にしている場合じゃなく、
それこそ脱兎で逃げるべき。

いや、ほんとに。

宇都宮先生か、黒井先生に転校辞令が出るように、祈っておきますね…。

※ もしかして黒井先生がKではないかも、という可能性を示唆され、その場合、さらにストーカーというか粘着質なホラー味を感じました。怖い。

第1回〈小説〉部門・グループD|オンライン文芸サークル〈六枚道場〉

 https://note.com/6mai_dojo/n/n8a226c92c63f

10. 「ジャンケン橋」谷脇クリタ

Twitter 別名義

犬と街灯 https://inutogaito.base.shop/

WEBSHOPがとてもすてきでした。帰省したとき、いつか行くんだ・・・。

感想

全体的に漢字が多く、難解な単語もあるのですが、文章がとても読みやすいです。不思議な世界を描いているのにびっくりするくらい読み手に負荷がない。映画を見ているように谷脇ワールドにひきこまれました。

最後の回想、美しかったです。
悍しいのかもしれないですが、とても。

感想という言葉にして、自分の中で感情を確定してしまうのが勿体ないようなエモーショナルなシーンでした。

11. 「赤ちゃんテレビ」紙文

Twitter @km_kzr

note https://note.com/km_kzr

六枚道場主。小説に対してとても真摯で、書くことも読むことも分析することも、とにかく鋭くうまい方だと思います。BFCも六枚道場も、紙文さんの批評/感想を読まなきゃ損します、絶対。

感想

加賀見さん、なんでこんなの買っちゃったの…

って、一瞬でも思わない方は少数だと思うのですが、それは現実の「なんで産んじゃったの」とほぼダイレクトにリンクしますよね。買ったあと≒産んだあとでないとわからない育児の過酷さ。

隣の部屋から壁を叩き、インターホンを乱打しているのは、私たちなのではないか。加賀見さんを見ている私たちの顔には、どんな表情が浮かんでいるのかな。

真面目な感想とは別に、赤ちゃんテレビに夜泣き機能とか搭載するのにGoサイン出した最高責任者こそクビにしてほしいですね!明らかに地雷機能だろ、それ…!

ちびの誤飲やら紛失しか招かないだろ、な、プリキュアスターライトペンの羽が外せるという大チョンボ機能を眺めながら、

育児系のおもちゃ売り出すのに、保育士さんの意見をきかないのは、未来でも変わらないのか…

という悲しい気持ちになりました。

12. 「雨垂れ」ケイシア・ナカザワ

Twitter 別名義

チャーリーとエリーゼはもうこうなるしかない、性格・境遇・時代なにもかもが絡み合ってそうなるしかなかった、という切ない小説で、それだけに

二次創作意欲が、異様に掻き立てられる作品でもございました。

わたし、何故ひとが二次創作するのがが「雨垂れ」でわかった気がする。何か一個変えてあげたら、この二人は違う道を選べたかも、ならば改変してやろうじゃないか世界を・・・!みたいな、こうしたらよかった、ああしたらいいんじゃないか、というシミュレーションが脳内でわーっと広がる作品です。

以下、読んだばかりの感想。

チャーリー・・・あなた本当に真面目で誠実でロマンチストでいいひと・・・
でも、絶対モテないやろ?
(おかんだからそもそもターゲット外やろ、というのは置いておいて)、私だってチャーリーは選ばないよ。だって自分のことを全肯定する恋人って逆に怖いよ。どこまで許されるの?みたいになっちゃうよ。最後「・・・つもりなのかい?」(伏せときます)って訊かれて、残る女はまずいないよ。

何が悪かったのでもなく、
チャーリーの優しさがエリーゼの中で雪になってつもることなく、ただ雨となって消えてしまうのが切ないです。

エリーゼの「わたしは臆病なの」は母親として、というより、女として、なのかなと思ったのです。
とてもとてもいいひとだけど、
自分のことを生身の女としてはどうも見ていない、
自分を通して理想化した女を見ている相手を信じてついていけるか?と自問した時に、これはダメだって思ったのかと。

エリーゼの「わたしは臆病なの」は母親として、というより、女として、なのかなと思ったのです。
とてもとてもいいひとだけど、
自分のことを生身の女としてはどうも見ていない、
自分を通して理想化した女を見ている相手を信じてついていけるか?と自問した時に、これはダメだって思ったのかと。

13. 「クレイジーソルトシティー」乙野二郎

Twitter @otsunovel

AMAZON著者ページ https://www.amazon.co.jp/%E4%B9%99%E9%87%8E%E4%BA%8C%E9%83%8E/e/B01MG8FAJX

プロ作家さんでござった・・・!六枚道場、レベル高いですね・・・!

感想

一行目から「法律のない街でロイヤーをしている」…なんでや工藤!?
初っ端から容赦なくクレイジーに始まり、最後までクレイジーでした。つまりはそういうことって、どういうことなんですか主人公ーっ!半端な読者は塩の柱にされちゃうお話です。もうサラサラ崩れるしかないや。

徹頭徹尾不条理な世界を飄々と主人公が渡っていく、不思議なお話でした。

第1回〈詩・俳句〉部門・グループE|オンライン文芸サークル〈六枚道場〉

14. 「おはなし皿」草野理恵子

Twitter @riekopi158

AMAZON 著者ページ https://prizesworld.com/prizes/name/%E8%8D%89%E9%87%8E%E7%90%86%E6%81%B5%E5%AD%90

文学賞の世界 https://prizesworld.com/prizes/name/%E8%8D%89%E9%87%8E%E7%90%86%E6%81%B5%E5%AD%90

プロ作家さんでござった・・・!とても雰囲気のある、ひとがまねできなそうな作品を書かれます。

感想

怖い怖い怖いぃ!
子ども向けにソフトになる前のグリム的な、メルヘンな語り口でさらりと虐い世界を広げられてしまう。

しかも最終行、この責苦?苦行?生業?は永遠に終わらないんじゃ…?!

赤い液体は、ほんまに何なんや…気になる…!

15. 「困ったな」中能茜

Twitter 別名義

感想

中能茜さんの「困ったな」が、とてもとてもいい。

一生一度のプロポーズされているのかもしれないし、
一緒にお出かけしよう、くらいの軽いお誘いかもしれない。

油断すると緩んじゃう口元とか、
歌い出したくなる気持ちを隠しての
…。

幸せのかたちですね。

ともすれば、否定的にしか使われない言葉をやさしくすくい上げるお話です。

元旦からすてきな言葉をみせてくださってありがとうございます。

16. 「朝」6◯5

Twitter @rokumarugo605

note https://note.com/rokumarugo

感想

これは春琴抄だ…。ページ開いたとたんにびっちりと詰まった文字がいっぱいに広がって、それだけで雰囲気あるやつだ…。
しかし、タイトル「朝」なのに?「夜」じゃなく?真っ黒よ?!

文章も難解で、読み飛ばすことを(少なくとも私には)ゆるさない。

あの子って誰なの、とか、あちこち引っかかりながら手探りで暗闇の中を進むみたいに読んでいきました。

最初は全くわからなかった文章が、ぽつぽつと「あ、ここはわかるかも…?」という箇所が増えていき、最後の一文で開放される感じが夜明けみたいで、たしかにこれ「朝」だ…!「夜」じゃないや…!

全身全霊かけて、没入してイメージを追いたい作品です。

17. 「にんげんきらいしぬほどきらい」池亀大輔

感想

これは凄い怪作。

俳句等たった1文の怖いところは、読まないことを読者に許さないところじゃないですか。途中でやめられない、目にしたら必ず最後まで読んでしまう。

気がついていても、見なかったことにして過ごしたい動物が好き、という態度の浅さとか酷さが、たった17字で叩きつけられます。
好悪を超えてとても強い作品だと感じました。