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自宅で参加型パソコンの授業週に1度の登校 連載


和の住む町に有る学校は、毎日登校はしません。週に1度登校をして、「学習取得確認テスト」を行ったり、取得の具合を先生は確認する、といった形の授業を教育方針にされている、この辺りの地域では珍し学校です。「和!和!そろそろ授業の始まる時間じゃないの?!パソコンの立ち上げやらないと間に合わないわよ。」台所からの声に、「分かったわ。すぐやるから、大丈夫!」バタバタと階段をかけ降りると、父親の書斎室に有るパソコンのスイッチを入れます。そして、そのまま台所へ飲み物を取りに。パソコンでの授業は参加型になっているので、クラスの数人の顔を観てお喋りも出来ます。「さて、先生との朝の挨拶の始まる時間になるわね。」「みなさん、おはようございます。お元気ですか?先生、今日は登校する日だと思い、校門でみなさんの登校するのを待っていました。でも、予鈴の鳴る中でもみなさんは誰も顔を見せてくれません。そして、『あっ!』その時始めて先生は気付きました、登校日ではない事を。明日だったのです。」先生は恥ずかし気に少し下を向いています。パソコンに映し出されているクラスの児童達は、「ケラケラ」と声を高らかに笑い、「先生、何やってんのさ。笑わずにはいられない。他のみんなも笑っているんだろうね。」「良く分かりますね!みんなも笑っています。お家の人達にも笑われてしまっている事でしょう。」和も、「先生は朝、何時に起きたのですか?」「朝は、何時だったかな。「もしかしたら先生、今朝は寝坊したかもしれませんね?」「そうなの和ちゃん。先生は昨夜、確認テストの準備やっていたらそのまま寝込んでしまって、目覚めたら朝だったのです。」「何時に起きたんですか?」「何時だったかな。時計をはっきり見ないまま、シャワーを浴びてしまったから。先生はいつも朝、シャワーを浴びてから登校をしているから。」「先生、私もシャワーをやってま~す。」和と仲良しの女の子はそう話すと、「だから、朝から良い匂いしているんだな!」と男の子の1人は声をあげました。「エッ!匂いも伝わっているの?和ちゃん、私の匂い届いているの?」「届いているよ。今朝のシャンプーはどんな匂いのシャンプーなの?」「すごいよね、匂いも伝わるなんて。私達のパソコン優れ物。今朝のシャンプーは、森林の泉というシャンプーだわ。」「良いね!心落ち着ける匂いだね。私も今度そのシャンプーに変えてもらおう。私の好みだわ。」「私も大好きなの。おかあさんにこれに変えてもらったの。」「お揃いになるね、私達。」「みなさん、そろそろ授業を始めます。今日の1時限目は、昨日の宿題に出していました『日本はもちろん、世界そして地球の平和』について、みなさんで話し合います。その話し合う前にまず、800文字内に書いて下さい。昨日の時点で宿題に出していたので、すぐに書けると思います。20分で仕上げて下さい。では、始めて下さい。」和ちゃんは、パソコンを切り換えて宿題に出されていた『平和』ついて書き始めました。和ちゃんも昨日の夜遅くまで考えた『平和』について書き始めました。すらすら書き始めたその指は、まるでキーボードの上をスケートリンクとばかり、なめらかに滑っています。和ちゃんは日頃から『平和』を口にするので、それほど難しい課題ではないのです。書くの仕上げた和ちゃんは、お水を少し飲んでいいました。「はい!みなさん時間です。書けましたか?」「書けた。」「先生書けました。」「もう少しです。」みんな各々に先生へ話し掛けるので、パソコンの音声はまるで教室にいるかの様にざわついています。「なんか良いね、こういうの。まるで教室にいる感覚ね。楽しいわ!」和ちゃんの声を聞いていたお女の子は、「私も和ちゃん。週に1度の登校する日に、パソコンでお話をした続きを話せるもの。」「そうそう、登校してクラスには大勢の児童、先生からの授業を受けて、みんなと同じ献立の給食を食べて、午後にはまた授業を受けて、お掃除をやり下校。高学年になると、クラブ活動というもの有ったり。でも、これ等みんな学校側に決められているからね。」「そうそうなの。私達で決めて良い事はクラスの係りと、運動会で自分の出たい種目や教室の座席」「和ちゃん、教室の座席は2年生まで先生決めていたよ。」「そうだったね。高学年のクラスの活動も私達で決められるけど、定員越えるとじゃんけんや抽選になるのよね。」「いじめもあるだろう。一応は先生からも指導をするけど、他のところで別のいじめ発生するから、学校全体で取り組んでくれないと、いつまでもいじめは減らない。」ひとりの男の子は叫んでいた。実はこの男の子は少し前に、別の学校からこの学校にやって来ました。前の学校は通学する形の学校で、いじめに遭い学校を休んでいました。休んでいる間の授業への補習はやってもらえず、勉強は分からなくなる一方でした。分からないからつまらない、つまらないから勉強をやりたくなくなる。僕はそれだった。先生に相談すると、僕にこの学校へ紹介状を書いてくれたんだ。それでこの学校を知ったのさ。あの時この学校を紹介してもらえなかったら、まだ前の学校にいたと思う。とてもありがたい。」「そういったところを全然、見せないから分からなかった。この学校は大丈夫だよ。だって週に1度の登校だもの。残りの曜日はこうしてパソコンでの授業だからね。1日の授業ごとにおしゃべり出来るメンバーも変わるしね。メンバーの顔ぶれは先生で決めるけど、2日に1度は同じ人とこうして顔を合わせて、おしゃべり出来るから、寂しくないわね。」和ちゃんのこの言葉にみんなは、「そうだ。そうよ。」と、授業中なのか休み時間なのか、自分達も分からなくなってしまった様です。一般の通学式の学校ではここら辺りで、「静かにしなさい。今は授業中です。いつまでもおしゃべりやめなさい。」と、先生から怒られます。この学校は子供達の話の中には、学校の授業で教わらない事、教えられない事を充分含まれているのをここの先生達は知っているので、授業時間の許し限り児童達に自由におしゃべりをさせています。時間もそろそろ気になる頃になりました。先生はようやく口を開きました。「では、みなさん書けたと思いますので、一人ずつ発表をお願いします。800文字では書ききれない人もいると思います。詳しく発表を望む人は、登校日にクラス全体で発表お願いしましょう。誰から発表しますか?」一番に名乗りをあげたのは、先程のいじめに遭いこの学校に来た男の子でした。「はい。僕から発表したい。みんな良いかな?」「うん、良いよ。」「はい、どうぞ」「じゃ~ん。それでは発表会の始まり始まりです。」みんなから声援を受けて発表は始まりました。「題名『平和』平和という課題で宿題を出された。僕は平和を思う時、すぐに思い浮かぶのはいじめです。前の学校で僕はいじめに遭い学校を休み、勉強も分からなくなって、そして先生は補習をやってくれなくて、更に勉強は分からなくなりって、つまらなくなるって僕は考えた。、学校へ登校する意味さえ分からなくなった。課題の『平和』を考えていたら、いじめをする人の心の中はどういう心なんだろうと考えた。きっと、心の中には平和の大切さを感じる想いあまり無いのではないのか?では、なぜそうなるのかも考えてみた。僕達はお金さえ有れば殆んどの品物は手に入る。そういったこの時代に生まれた。生活に必要な品だったり、ぜいたく品だったり。僕達のおじいちゃんやおばあちゃんの頃には、お金有っても品物なかなか手に入らなかったり、ぜいたく品はものすごく高い値段で、特別な日で無いと買えなかった、と聞いた事ある。今ではケーキはいつでも食べたい時に買って食べるけど、おじいちゃんやおばあちゃん達は、お給料日に誕生日やクリスマスの日に食べるぐらいだったという話だ。外食なんて年に数回で、やはり特別な日に外食だったと言う。生活の品物はこんな感じだったけど、人達は心の暖かい思いやりの有る人間ばかりだった、と。隣近所で助け合い励まし合い、時には喜び合い暮らしていた。そういった話を聞いている僕の『平和』を思う時、品物だけで幸せや平和を決めるのではない、と思う。品の困難な時には、隣近所で分け合えば良い。困っていたら声を掛けて手を差しのべてあげれば良い。もしかしたら今度は困る事、自分に来るかもしれない、とみんなで思えば周りに優しくなれる。大人達の言葉で言うと、「お互い様」だそうだ。だから僕の『平和』とは、健康で楽しく、周りの人達に思いやりを持って助け合い、この国みんな心をひとつにする事だと思う。そしてもちろん、この日本を動かしている偉い人達みんなにも、僕の考える『平和』の事をやって欲しい、と強く思う。だって日本を動かしている偉い人達は、僕達の暮らしや健康を守らないといけない役目だから。そういった仕事をやっているんだと思う。偉い人達は、自分の暮らす国の人達つまり国民に、良くない事はやらないでしょっ。僕の『平和』は日本の平和です。平和な日本だから僕は平和でいられる。」「細かく書けましたね!具体的に表現されているのも人の心に伝わりやすいです。社会科の勉強をちゃんとされているから、日本を動かしている人達にも、目線を向けられるのですね。みなさんも、自分達の暮らすこの日本という国の事を良く知りましょう。今までの社会科では、日本政治などについて詳しく載せていませんでした。それゆえに、自分の国の事をあまり知らない大人達もいました。今では社会科で扱っていますので、みなさんは勉強をされて下さい。この中で、『国を動かすメンバーになりたい。』なんて言う人、出て来るかもしれまれんね。先生は楽しみにしています。その時には先生は自慢します。『昔の教え子』と。」「先生、もし僕なったら自慢する?」「もちろん自慢しますあなたは社会科は得意だから、良いかもしれませんね。では、もうひとり発表やってもらいます。」「は~い。私やります。」「では、お願いします。みなさん、良いですか?」この先生はこうして、児童達へ呼び掛けてくれます。児童の心に寄り添ってくれている先生で、先生の中でもとても人気の有る先生のひとりです。「良いよ。」「はい。」「僕のあとだから二番目だな。」「では、始めて下さい。」「私の思う『平和』とは、家族みんなで喧嘩をせずに、仲良く元気で暮らす事です。家族を別に例えれば、たくさん広い範囲の場所になります。家族を学校に例えたり、学校を私の暮らす町に例えたり、町を日本に例えたり、そして日本を世界に例える。人間みんなで喧嘩をやらないで、元気で暮らせる事。私の『平和』です。喧嘩をやっても嫌な気持ちになったり、相手を憎んだり顔を見たくなくなったり。良い事は無いと思います。また元気でなければだめです。だからこの二つはセットだと思います。」「はい、良いですよ。その通りです。喧嘩をやっても良い事はありません。心に残るのは嫌な気持ちだけです。元気でいる事もとても大事な事です。時間なのでまだ発表されていない人は、今度の登校日に発表をお願いします。ここで15分のお休みにします。みなさん時間に遅れない様に準備をお願いします。」児童達はこの15分のお休み時間を各々好きに過ごします。座席から離れる児童や、そのままパソコンでおしゃべりをする児童。思い思いに過ごす時間です。和ちゃんはこのお休み時間を、いつもおしゃべりをする時間と決めています。のどの渇いた時のお水は机に準備されています。和ちゃんにとってはとても楽しみな時間なのです。特に今日はメンバーの中に、仲の良いお友達のいる授業なので、このお休み時間を待ち遠しく待っていました。「和ちゃん、和ちゃんはなぜここの学校に入ったの?和ちゃんのお家からはだいぶ離れているよ。」「私の家から数分の場所に学校有るの。すぐの場所に有るのだけど、だからその学校の事を色々と知りすぎて、『この学校には通いたく無い』と思った時に、『少し面白い学校あるわよ。』と教えてくれる人いたの。見学へ出掛けて学校の先生にお話を聞いて気に入ったの。何人かの先生達ともお話をしたのだけど、『私は先生だ。あなた達は児童だ。』といった独特の雰囲気は全然無くて、話をする時でもいつも児童側に立って、寄り添っていてくれるの。その事をすごく感じられたからかな。児童をひとりの人間として向き合ってくれるの。先生だから、児童だから、大人だから、子供だから、といった感覚は無いのよ、この学校の先生達には。ひとりの人間として扱ってもらえるのとっても嬉しくて。だから、少しぐらいの距離なんて問題じゃないわ。そして、もうひとつの理由は、週に1度の登校で残りの曜日は、自宅で授業を受けられる事。とても便利だと思ったの。いつも登校して授業を受けなくても、自宅で受けられるなんて、あまりないよねこういった学校は。学校で無くても授業受けられる、こうして。週に1度の登校だったら、いじめなんて滅多におきないと思うわ。もしもいじめおこっても、週に1度の登校だと、やり甲斐は無いんじゃないのかしら。いじめ対策にもこの学校の自宅式授業は良いわね。」「そうね。いじめられる側は辛いもの。」そして、お休み時間も済んで、「みなさん、準備されていますか?時間になりました。2時限目の授業は音楽になります。先週の音楽の時間に宿題を出しました。『世界みんなの心、ひとつになれる歌詞』を作る事でした。みなさん宿題は出来ていますか?」「は~い。」「出来たよ。」「私を一番に発表させて下さい。」「私も出来ています。」口々に返事をす声に先生は、「1度に返事をされてしまうと、返事に困ってしまいます。1人ひとりに返事は出来ませんね。みなさんはいつも宿題を忘れずにちゃんとやる私の自慢です。」「ヒュー。」「まあなぁ。」「はい、先生。」「自慢な私達です。」これほど先生と児童の心の一体感を見られる学校は、あまり無いのではないでしょうか。通学式の学校では無くても、こうして先生と児童達の心の一体感有れば、楽しく授業を受けられ、楽しい授業で有れば勉強も楽しくなり面白さも感じられる様にやります。時々、耳にする話で、「好きな先生の科目を好きになる理由は、『一生懸命に先生の話を聞く。テストで良い点数を取るために勉強に励む。』という事です。「さて、音楽の時間での発表は誰から始めますか?時間の関係で今日ここでの発表は1人になります。」暫く間はあいて、「僕にやらせて欲しい。」「では、どうぞ始めて下さい。」今回の宿題は歌詞だけなので、詩を読んでいる様になりました。この後はもう1時限の授業を受けお昼になると、児童達は一旦は机から離れてお昼御飯になります。お昼休みは丁度一時間となっています。「はい。みなさんお昼御飯の時間です。今から一時間後にお会いしましょう。先生もみなさんと同じにお昼御飯になります。もし何か先生に訊ねたい事有りましたら、30分後に先生に呼び掛けて下さい。先生はいつでも、みなさんの呼び掛けに対応出来る様になっています。お昼御飯へどうぞ。」先生の言葉で、みんな一斉にお昼御飯になりました。午後の授業を考えつつ、お昼御飯を取るのは先生達の宿命です。もちろん和ちゃんの先生も例外では有りません。「さて、午後の授業の英語はどの様に…」と考える先生です。

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