見出し画像

空母みたいで安心する

最近、部屋に大きな姿見を買った。

一目惚れして買ったくらいだから品物自体はとっても気に入っているんだけど、毎日自分の顔をよく見るようになってしまい、現在、爆裂に鬱。

自分の顔ってあんまり好きじゃない。お世辞にも可愛いとは言えないし。世間のルッキズムに対する嫌悪感を拗らせてしまって、一年くらい前から「可愛い」に対する執着みたいなものを無理矢理にでも断ち切って、直視しないようにしていた節があったんだけど、鏡を買ってしまったら逃げられなくなり、とにかく自分の顔を見るたび暗い気持ちになる。
身体もそう。全部好きじゃない。世間の「可愛い」から大きく外れているし、ひねくれの心で逆張りしても、特筆して褒められるところがない。私の外見って、なんていうか、平均的で、年相応に醜い。

この前、ゲゲゲの鬼太郎の作者である、水木しげるさんのインタビューを読んだ。 

水木さんは話題に尽きない人で、数年前に奥様との話がドラマにもなっていた。ゲゲゲの女房という作品だ。
水木さんは、奥さんの布枝さんの見た目について、「顔が空母みたいで安心する。」と言っていたらしい。

なんて失礼なんだと思いつつ、なんとも独特で、ユーモラスで、愛のある表現だなぁと感心してしまった。

一般的に「顔が空母みたい」と言われたら悪口だと判断するが、戦争体験者である水木さんにそう言われたら、空母の何たるかを一度考えてしまうだろう。

だだっ広い海、飛び交う敵の飛行機。黒い煙を出して落ちていく仲間の機体。サメの泳ぐ太平洋。深く、真っ黒な深淵の海。そんな景色の中、水平線の向こうに見える自国の空母。そ、そんなの、超絶安心するに決まっている……。

水木さん流のI love youだ。
他の誰にも真似できない。水木さんにこんなふうに言ってもらえたら、きっと、自分の顔のことを大好きになるだろう。

似たような話で、
映画ファンタスティック•ビーストの主人公、ニュートが、片思いの相手であるティナの目を見て、
「君の瞳は、サラマンダーみたいだ。」と言うシーンがある。

サラマンダーって、要はトカゲのこと。
黒い皮膚に赤とか黄色の派手な模様がついてるやつ。
まぁ可愛いとは真逆のジャンルの生き物なんだけど、
魔法動物ばかり相手にしているニュートからしたらそれはもう最高の褒め言葉で、ティナの黒い瞳がすごく綺麗だ、と照れながら伝えるシーンがある。

これも水木さんと同じく、ニュートだからこそ言えるI love youなワケで、こんなふうに言ってもらえたら、きっと自分の瞳を大好きになると思った。


これらを踏まえて、
正直もう(自分レベルで)見た目についてこじらせていると、誰かのフォローなしに自分の顔を好きになれそうもないな、と思った。

細々と努力して、歯列矯正したり、運動したり、予算内で美容皮膚科に行ったり、キレイであろうとは足掻いているけど、自称空母や自称サラマンダーでは、永遠にただの怪物なのである。
大切なのは、大切な誰かにそれを言ってもらうことだ。

丸い鼻も、バギーみたいで可愛いねとか??
笑った時の目尻のシワも、ピレネー山脈みたいで美しいよとか??わかんないけど、
なんかうまいこと「空母みたいで安心する」を言ってもらって、ここから自分の見た目を好きになれたらいいよなぁ〜。

見た目って、難しい。
絶世の美女になりたいと言ってるわけじゃないのに、可愛いもキレイもゴールがなくて、全て他人からの評価で決まってしまう。
だからせめて、自分評価くらいはギリギリでいいから合格点が欲しいけど、こういうのって、自意識としても、金銭的な意味合いでも、底がしれなくて恐ろしさ含んでいる。

そんな闇と向き合うのは、体力がかかりすぎる。早く誰か、君の顔は空母みたいで安心する、と、笑ってくれ……(祈)

そんな無責任なことを、考えた1日だった。

このお金で一緒に焼肉行こ〜