12月の日記

満員電車に揺られて、蒸し暑い地下鉄を抜けると、出口の冷たい風を頬に感じて、
「あぁ、もう12月なんだ。」と思い知らされる。

夢中で働いていたら、遊ぶことを忘れていた。
外苑前のイチョウ並木を一人で歩いて、avex前の大きなクリスマスツリーを眺めて、もう何回も見たはずの表参道のイルミネーションに足を止める。

高校を出てから、気付いたらもう10年以上東京にいる。毎年特別な理由なんかなくても、私は表参道のイルミネーションを必ず見ていて、買えるわけでもないジバンシーのバッグやバレンシアのアウターを眺めて、雑貨屋でお皿とか小物とか買える範囲の「可愛いもの」を少しだけ買って、ほんの少しだけあったかい気持ちになってクリスマスが来る。

10代の頃は古着とキャットストリートに夢中で、20代前半はギャルソンとかトリコに夢中で、その後は化粧品とお皿ばかり買っている。しかも毎年単価が落ちていて、今年はフライングタイガーで300円のオーナメントを買った。それだけなのに、幸福感はものすごい質量だった。

毎年「可愛い」と思うものは少しずつ変わって行くけど、表参道にはいつ、どんなタイミングで行っても「可愛い」が氾濫していて、止まらない物欲に我を忘れそうになる。安全で健全で幸せな刺激でごった返して、飽きることないこの街が私は大好きだ。

クリスマスツリーを家に飾ったのは、いつが最後だったっけ。
小さい頃、お母さんとお父さんとお兄ちゃんと、二階の小さな寝室で、いつもみんなで飾り付けをした。
最後の星を乗せるのはいつも私だった。
とっておきの楽しいことを快く譲ってくれるお兄ちゃん。そういえばもう、何年も会っていない気がする。

毎年新しい小物を買ってきては、可愛く飾り付けてくれるお母さん。離れて暮らしてから、一緒に雑貨屋さんに行ったりお茶することもなくなって、思えば誕生日も電話すらしていない。

毎年、私の欲しいものを見事に当てて、枕元に置いてくれていた私のお父さん。
定年退職したのに、なにもプレゼントを送っていない。ダメな娘でごめんね。

家族というのは、どんなに離れていても、いつだって一番大切で、どこの誰より一番信じられる存在で、それが当たり前だと思って私は育った。
それ自体、とてつもなく恵まれていることだし、本当に感謝しているけど、

どうしてこんな幸せな家庭で育ったのに、私のような薄情な女が出来上がってしまったのか。

謎でしかない。

なにを間違えたのだろうか、特別、なにかを間違えた覚えすらないのだけれど。そこからして謎だから、自分でも自分が時々怖い。

クリスマスになると、毎年家族に手紙を書いていた。その辺の駅前に売ってたクリスマスカードだけど、なんとなく送るだけで幸せな気持ちになれたから。それも気付いたら、もう何年も送っていない。この数年、私はなにをしていたのか。本当にそれは私だったのか。

仕事、仕事、転職しては仕事。辞めてはまた働いて、笑って泣いて、そしてまた働いている。

大したキャリアも給料にもならないけど、働くことを辞められない。辛いし面倒だけど働かないと東京で暮らせないから。いつも急かされるような思いで、背伸びしたり焦ったりしながらも、ベストは尽くしてきたよ。

楽しいこともたくさんあって、勉強して、パワーアップしていく自分の言葉や対応や、社会人としてのいろんなこと。

その一つ一つがもちろん誇らしいけど、

仕事だけでは私の人生は満たされないのだと、
なんとなく今日、改めてそう思った。

いまさらだけど。
もう31歳だけど。

職場と家のそのあいだに
キレイだなぁって思ったり、
美味しいなぁって思ったり、
思わず来年もまた来ようねって言いたくなるような、そんな場所をもっともっと知りたい。見たい。ちゃんと感じたい。

表参道は今日もとってもキレイだったけど、
なんだか家族が恋しくなった。

働いていると、自分以外全員敵なんじゃないかと思う瞬間とか
自分だけができが悪いんじゃないかとか、本当に大丈夫なのだろうかとか
足元を掬われる不安の波が止むことはなくって

自分がブスだから恥ずかしいとか、このオシャレ合ってる?とか、
別に人に指摘されたことはないのに、ものすごく気にしてしんどくなったりして

ボロボロのパジャマを着てても、ボサボサの髪で過ごしてても、カードの支払い滞納してても愛してくれる、私の家族が強烈に恋しくなる。
そんな瞬間が今日だったように思う。

何があっても味方でいてくれて、
悩んでも迷っても、私の意思で全てを決めさせてくれた。
何を選んでも、絶対否定しないでいてくれた。
そんな私の家族。

何をしても褒めてくれる、私の家族。
心配かけてごめんね、というと、謝んないの、と言ってくれる、私の家族。
会って話せば、心がフラットになる、ゼロ地点に戻してくれる、そんな家族。

いま、私きっと甘えたいんだなぁ。
だって、頑張って生きてるもの。

このお金で一緒に焼肉行こ〜