失うこと

「ほんとうに袋あるって言ってた?」




妊娠が分かって、出血があって、早いけど初めての検診を受けに産婦人科に行った時、
「出血はよくあること。このくらい全く問題なし。大丈夫だよ。」と言われたのも束の間、内診を始めた先生が
「非常によくない」と言った。


コロナ真っ只中で産んだ娘は2歳10ヶ月になる。
第二子妊娠で初めて産婦人科に足を踏み入れた夫と診察室に入って聞いたのは、不安な言葉たちだった。
「妊娠してるはしてるけど、胎嚢が潰れちゃってるからまた来て様子を見ましょう」

次の診察までの3日間、冷えないように、嘘みたいにゆっくり歩き、それでもほんの少しの出血があったから会社を休むと、ずっと横になって過ごした。

2歳の娘がペコちゃんに似てることと
胎嚢がポコっと膨らむようにと願って、
お腹の子はポコちゃんと呼ぶことにした。

ポコちゃん、まだ出てきちゃだめだよ。
お母さんにくっついとくんだよ。

お風呂でお腹を撫でながら声をかけた。

お腹は張りやすく、心配になると同時に確かにここに赤ちゃんがいる、生きてると感じていた。


3日後の待合室では、なんでか少し自信があった。
胎嚢はポコっと膨らんでるはず。最大級レベルの緊張で心臓は飛び出しそうなくらいバクバクしていた。お腹をずっと撫でた。
大丈夫だよ。お母さんがついてるよ。


診察室に呼ばれ内診が始まると
「ほんとうに袋あるって言ってた?」と聞かれた。
「流産は流産なんだけど、ちょっとまずいね」
淡々と発せられる言葉は全然、味気も色もなかった。
なんも見えなくなった。見たくなかった。


ポコちゃんは、お腹で死んじゃってた?

生きてる自信があると思ってたのに、思ったよりすぐ体は反応して泣いてた。

この感情をどう表せばいいのか今のところわからない。

明日子宮内容除去術があって、ポコちゃんはお腹からいなくなる。

流産を知ってから4日めになる。
まだよくわかってない。
悲しくないのかな?と思うくらい冷静に仕事をする自分がよくわからないタイミングで涙をボロボロ出すのはまだよくわかってないからなのかな。

明日が来なければいいのにな。
お腹からポコちゃんがいなくなったらどうすればいい?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?