1話 誕生 ~神から授かりし存在~


『まず最初に伝えておきたい。

君は、全ての祝福の元、
この世に生を受けたということ。

パパとママを始め、
周りのあらゆる人々、
空気、植物。

全ての存在にとって喜びの元、
誕生したということ。

神々しいまぶしさと共に、
生まれたこと。

そこには究極の喜び、
祝福があったということ。

このことは疑いの無い事実なんだよ。』


遡ること20数年前。

忘れもしないあの日。

君がママの胎内に宿ったと分かったあの日。
パパとママが親として味わった始めての日。

君は最初の喜びを我々にもたらした。

パパとママにとって結婚して2年経ってからのうれしい知らせだった。


それまでのパパとママはあることをきっかけに、
子供は授からないとずっと話をしていた。
そしてそれをお互い覚悟した上で結婚したんだ。

2人でどうやって過ごしていこうか。
そんなことを良く話していた。

そのパパとママにとって君の妊娠が分かった時は、やはりこの上ないほどの喜びだった。

本当にうれしかったんだ。


そして妊娠後も君はママを労わる
とても素敵な子だったね。
ひどいつわりも無く、
逆子になることも無く、
とても理想的な妊娠期間だった。


初めての胎動は、これも良く覚えている。
パパとママが山中湖に
お泊りで旅行に出かけた時。
ホテルに着き、
外をなんとなく眺めていた時に感じた胎動。

パパもママもそれを確認したよ。

命がそこに宿っている実感を得た。
私はここに居るよって、
力強く語りかけていたね。


ママはね、頻繁に話しかけていた。
本を読んだり、
散歩に行ったり、
いろんなことをしていたね。

パパはそうでもなかったかな。


そして君は
自らあの日を選んで産まれて来たんだ。

パパの仕事が唯一の休みの日でもあり、
我々の3年目の結婚記念日を選んで。

あの日は、今思ってもとても素敵な、
小春日和の風が爽やかに吹いていた。

そして桜が例年より2~3週間も早く咲き、
満開を迎えていたあの日。

おしるしから始まり、
破水、陣痛、
そして産声を上げて君は元気良く、
地球の空気を吸い込んでいた。

全てが順調で理想的だった。
そして全てが祝福しているようなそんな日。


パパとママを選び、
生まれる日、
時間を選び、
君はこの地上に生を受けた。


君にとって全てが初めての経験かもしれないけど、
パパとママにとっても全てが初めての経験。

いろんな経験をさせてくれたね。

ほんと、
生まれてきてくれて、
パパとママを選んでくれて、
うれしく思う。

感謝の気持ちでいっぱいだよ。


そんな我々にとって大切な君に、
できるだけ生きやすいような
知識、智慧を残したいと思ったんだ。

人生の先輩としてこれから
いろいろな思い、言葉を綴っていくからね。

そして何か悩んだりした時は、
いつでもパパとママに言ってね。
何でも話してね。
いつでも話を聴くから。

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