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タクティカルトレーニングとの上手な付き合い方(序論)

タクティカルトレーニングとは

タクティカル、直訳すると"戦術"となります。
タクティカルトレーニングなんて言うと知らない陸上自衛官なら「指揮所演習?」なんて言うかもしれません。

しかしタクティカルトレーニングとはガンハンドリングや複数人の連携した行動、山岳登坂、潜伏等(部隊行動と言うならばそれ)を訓練するセミナーを指します。

元々は造語だと思うのですが(参考文献が見つからなかった)日本のサバイバルゲーム愛好家やミリタリー愛好家の間ではこれで通用しているので、自衛隊用語で言う戦闘訓練(若しくは戦闘戦技訓練)に関するセミナーをタクティカルトレーニングと呼称しつつ、今回はこのタクティカルトレーニングとの上手い付き合い方についてつらつらと記述したいと思います。

タクティカルトレーニングで教えているトレーニングって何?

大小様々なタクティカルトレーニングのセミナーがありますが、大体は小部隊の対人戦闘をメインにしたセミナーが多いです。日本でやっているのはコレが多いと思います。
実は昔から存在していて、昔は自称傭兵経験者がショップ単位で受講者を募り、私有地の山で訓練を行っていたようです。

タクトレで教える基礎技術は実は応用技術

タクティカルトレーニングのスクール等ではベーシッククラス等の名前がついているコースもありますが、実は教えている内容はベーシックではありません。

陸上自衛隊の射撃を例にすると、アサルトライフルのベーシックの射撃はいわゆる射撃の技能検定に必要な技能である伏撃ち(プローン)と膝撃ち(ニーリング)となります。
この射撃に必要な知識や技術がベーシックトレーニングとなりますが、それには射撃の理論、ライフルの構造・基本的な操作方法、手入れの仕方、気候風向による偏差、射距離による修正など知識だけでも多岐に渡ります。
また動作だけとっても、プローンに移行する動作やニーリングの姿勢を取る動作、射撃に必要な銃口管理やレンジ(射場)での動作など射撃一つとっても一日やそこらでは覚えきれる量ではありません。
(米軍の射撃は軍種によっても差異がありますが、自衛隊のように完全にベーシックと応用的な射撃と区分はありません。しかし新入隊員の訓練、職種の訓練、配属先の部隊での訓練で徐々に難易度が上げられ使用する火器の資格試験に合格する必要があります。)

しかしこれをベーシッククラスと称するセミナーで教えると、時間も日数もかかる上、受講生のニーズに至るまでお金と時間がより多くかかり受講者であるお客さんが離れていってしまいます。
そこで、多くのタクティカルトレーニングでは、本当のベーシックな部分に応用の部分も交えてセミナーを行っているのです。

図にすると以下の図のようになります。

兵隊として最低限必要な事を教育する部分が基本教育
最低限の教育を受けた兵士が配属された部隊でその部隊の戦い方や職域に応じた技能の練度を向上させる部分が練成訓練です。
図にするとタクトレは基本教育の部分と練成訓練の部分を合わせて教えている形態になります。
例えば一日でプローンからニーリング、スタンディングやCQBでの射撃技術を教えているセミナーは基本教育と練成訓練の部分を抜粋して教育している事になります。

ただし日本のタクトレが実際の自衛隊や米軍の練成訓練に追いつくことはありません。
何故なら、訓練には場所、訓練を管理する人、兵站を始めとする基盤が必要であり、部隊の練成訓練には大きな基盤が必要だからです。
個人や少人数での訓練が出来ても、それ以上の規模で日本で実際の軍事組織と同じレベルの訓練までカバーするのは少々難しいと思います。
逆を言えば個人技と少人数のチームワークを練成するのはちょうど良い場所ということになります。

タクティカルトレーニングとお付き合いする時の注意点は?

ここまでつらつらとタクティカルトレーニングとは何かという点を記述しましたが、ここから実際にお付き合いする際に注意すべき点を記述したいと思います。
1 基本基礎動作がおろそかなセミナーに参加しない。
インストラクター自身が銃口管理や基本基礎動作がおろそかなセミナーは参加しない方がいいです。
そのようなインストラクターは練度が低い事もそうですが、安全管理がおろそかなセミナーは、危険な事も分からずに危険な訓練を実施させる事があります。

2 御託ばかりのセミナーは意味がない。
確かに理論は大事ですし、理論を理解していないと訓練も出来ません。
しかしその訓練、更に具体的に言えば訓練する動作に必要な理論以外の知識をインストラクターが延々と語っている場合は、単なるインストラクターの自己満足な場合があるので避けた方がいいでしょう。
あくまで必要なのは理論と実践(反復演練)です。

3 インストラクター自身が継続して練成していないセミナーは参加しない方がいい。
戦いの技術は日進月歩です、極端な話をすると昔は閉所戦闘でスタッグ(複数人で突入前に一塊になる事)を組む場合は足を二人三脚のように合わせるなんて時代もありました。
仮に自衛隊や他国軍の経験者がインストラクターをしていても、継続して技術を教える為の自学研鑽をしていないインストラクターだった場合、そのインストラクターが教えるタクティカルトレーニングは避けた方がいいと思います。
いつまでも戦例や根拠に基づかない古い知識や技術、経験則で教えているインストラクターは得てして間違った事をさも正解のように教えています。

4 思想性・精神性をゴリ押しするセミナーは警戒した方がいいい。
昔、極左暴力集団が暴力革命を実現する為に山に篭って軍事訓練をしていました。
仮に、サバイバルゲームの技術向上の為の、何も政治的意図を持たないタクティカルトレーニングも、行為だけ見れば極左の軍事訓練と何ら変わりません。
一切やましい部分がなくとも警察から疑義を抱かれやすいのは仕方ありません。
(昨今の情勢ではホームグロウンテロの温床となる可能性も否定出来ない為)
確かに戦いに心構えや精神性は必要です。
ただし、あんまり思想性や精神性をゴリ押しするセミナーは疑ってかかった方が良いです。
インストラクターが公安警察に把握されているちょっとアブない人だった場合…もしかしたらアナタも視察対象になるかもしれませんよ。

5 決して自分が強くなったと勘違いしない。
これは私自身の経験則から記述している事なので必ずしもそんな人達ばかりではありません。
それは強く訴えたいと思います。
タクティカルトレーニングを受講して強くなったと勘違いする人がたまにいます。
勘違いした人達がサバイバルゲームですごい※ゾンビするんですよね。
※BB弾に当たっても死亡判定しない人、サバイバルゲームが成り立たなくなる。
実例ですが、部屋に複数人で待ち伏せされている部屋にルームエントリーした方達が、バチバチに被弾した上で反撃するエキセントリックぶりを発揮し、被弾してもゲームを続行するチート設定でした。
その人達の服や装備には、某タクトレのセミナーに参加した証のワッペンが堂々と貼られていました。
勘違いしちゃった人達ですね。
セミナーを受講した位で映画の主人公みたいに無双出来る筈がありません。

さて、ここまで記述しましたが長くなりそうなので分割します。
次は"僕は見た!ヘンテコなタクトレ編"です。

参考文献・HP等

防衛省HP
第7普通科連隊広報チャンネル
自衛隊は市街戦を戦えるか(二見龍 著)
FM3-0 operations 米軍教範
US military channel
日本の公安警察等関係書籍

他自衛隊経験者への聞き取り調査

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