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ここみんは食材

海祇島の「現人神の巫女」、珊瑚宮心海
彼女は海祇島の平和の為、現人神の巫女の責務を全うし今日の事も『秘密のノート』に書き記す

最近はメカジキ2番隊の隊長が戻ってきていて海祇島に滞在している為か少し嬉しくてつい気持ちが浮ついてしまう…

明日からも気合を入れて頑張ろう!

そう決意した心海は自分の寝床で横になった

(明日が良い1日になりますように…!)

そう願いながら自分の瞳を閉じる………




ジャラ………
「………ん?」

あまり聞き慣れない音が聞こえ目が覚める心海
目を開けた時に違和感を覚える…

"自分の知らない場所"にいる……

つまり自分が誘拐されたということだ
しかも脱走できないようにご丁寧に鎖で自分が縛られている
もはや自分一人でなんとかしてこの状況を脱する事は難しい

騒いでも何もならない、まずは情報が必要だ

心海は目を凝らしあたりを見る、この空間はそこまで広くはなく灯りのためのロウソクの火と自分が縛られているベットとドア以外何もない空間だった
ドアがあっても鎖で縛られて身動きが全く取れない心海にとってはあまり関係ないことだった

犯人は自分を誘拐して何をするつもりなのか…

ただの嫌がらせ……にしては手が込みすぎている
戦争を続けたい者による犯行……だとしても旅人と共にフォローに回ったはずだからその可能性も低い

そんなことを考えているといきなりドアが開く
警戒した心海…だったがそこには見知った顔がいた

「ここみ…気分はどう?大丈夫?」
「珊瑚宮様…その…体調……など……大丈夫でしょうか」

旅人とゴローだ

知らない場所で知っている人と会うのはとても安心するし信頼している二人が来てくれている!これ以上心配するようなことはないと思い安心する心海


その安心がよくなかった

"なぜゴローはこんなに顔色が良くないのか"

このことに気づいていたら少し警戒できていただろうが今の心海は安心感でいっぱいだったため気づくことはできなかった

なぜここにいるのか、ここをどうやって抜け出そうか相談しようとしたその時


「ごめんね、」


旅人のそんな言葉が聞こえた瞬間


ドン!!


いきなり大きな音がきこえた


最初はそれが何の音なのか全くわからなかった
だがそれは"痛み"として何の音かが分かった



"旅人が斧で心海の左腕を切断した音だった"



「――――――――!」

言葉にならない声が出た
左腕が切断されたことを自覚してからいきなり襲ってくる今まで経験したことのない痛み
左腕が燃えるように熱い…!

なんで…こんなことになった分からない

「――様!珊瑚宮さ――――!!」
遠くのほうからゴローが心配してくれる声が聞こえる

でもそんなことは関係ない
痛みで何も考えられなくなっていた…


「――んね」


そう旅人の声が聞こえた気がして


旅人が自分の切断した腕を


口に入れようとする場面を


視界の端で見えた気がして――――







――――目が覚める心海
「ハァ……ハァ……ハァ……」

今までのは夢だったのか…?

そうだ!左腕!!

心海はすぐ自分の左腕を確認する
そこには何にも違和感のない
いつも通りの左腕があった

そのことを確認し今までのことがすべて夢だったことを確信する

(はぁ…あんな夢をみてしまうなんて…今日はあまりよろしくないですね)

疲れのせいであんな夢をみた
そう、自己解釈をした心海


(気分を切り替えるために朝食をちゃんと取ろう…!)
そう考え、身支度を済ませ朝食の場所に行こうとした道すがら

「おはよー!ここみー!」
「おはよう、ここみ」

パイモンと旅人とばったり会う

「!?……はい、おはようございます。二人とも」
夢にでてきた旅人と出会ってしまい動揺するも
(夢の中の旅人と違う…夢の中の旅人と違う…夢の中の旅人と違う………よしっ)
そう自分に言い聞かせてすぐに平常心を戻す

「珊瑚宮様、おはようございます」
「ご、ゴロー…おはようございます」

こちらも夢にでてきたゴローだ
だがこちらも旅人と同じようにすぐ平常心を取り戻し平静を偽る

「珊瑚宮様、少し旅人と二人で話したいことがあるのですがよろしいでしょうか」
「…ゴローと旅人が?……よくわかりませんがいいでしょう」

「うぇ?おいらも行っちゃダメなのか!?」
「パイモンは心海と一緒に朝ごはん食べてきて?私もゴローと話したいことあるし」
「そ、そっかぁ…わかったぞ!早く戻って来いよ!!早く来ないとおいらが二人の朝食の分まで食べちゃうからな!!!」
「わかったよ、パイモン。」

それからパイモンと朝食を食べに行く心海
パイモンと話しているうちに夢のことはすっかり忘れ楽しい朝食を過ごせた

さぁ、今日も頑張ろう!

そう、あれは夢だから旅人とゴローには関係ない

"本人にも気づけない違和感を左腕に宿しながら"
心海はみんなの為に今日も頑張ることを決意した







「……なぁ、旅人」

「どうしたの、ゴロー」

「俺は、やはり…


"珊瑚宮様の腕を切断したこと"を

自首するべきだと思うんだ」

「……なんで?」

そう、心海が夢だと自己解釈したあの出来事は本当にあったことだったのだ


これは数日前にさかのぼる


抵抗軍大将としてファデュイを捕まえ尋問していたゴローだったが捕虜として情報を聞き出しているうちに珊瑚宮のことや抵抗軍のことを馬鹿にされ最初は耐えていたが
つい手を出して重傷を負わせてしまった……
その時たまたま近くを一人で散歩してた旅人に見つかってしまい、気が動転していたゴローは、つい旅人に相談してしまった

それを了承した旅人は尋問していた場所がほかの人も使うことを考えその重傷したファデュイを移動させることを提案した

その移動ルートがたまたま七天神像を通ったタイミングで
神像が光り、重傷したファデュイが回復した

回復したファデュイをみて喜ぶゴローの一方で考える旅人
このとき旅人は考えた

『どんな傷や欠損も七天神像でなおるのでは?』

そこで
「七天神像の性能についての調査がしたい」
というのを建前に


"七天神像がどんな怪我や欠損も治すことができる"


ということを発見した

それを利用し、人質のファデュイに重症を与えてしまったことをばらさないことを条件にゴローを共犯として今回心海の腕を切断し、食べるという暴挙にでた。


「いいのゴロー?抵抗軍の大将というものがあんなことをしてしまったこと…バレちゃうよ??」

「!?…そ、それは……」

「しかも今回は私とともに海祇島の「現人神の巫女」様に怪我を負わせた…さすがに今まで通りの生活ができるとは思わないなぁ」

「…それはお前一緒じゃないのか?旅人…!」

「私?私は旅人だよ??どこかにとどまることはせずいろんなところを旅する旅人がそんなすぐ捕まるわけないでしょ?」

「ぐっ……」

「だからゴローはこのことを隠し続ければいいし、ゴローが言わなければ私も言わない。私がこのことを言ってもメリット自体はそんなないからね」

「…おまえは、狂ってる……!」

「あれ?今更気づいたの??あはは!そうだよ!私は壊れちゃったのさ!!ここみんを食べたい!!その衝動に突き動かされてほんとに食べた人間なんて私以外いないんじゃないかな?

あぁ、また食べたいなぁここみん。いつか真実に気づくその時までもう少しだけ、私のおなかを満たしてね♥」

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