見出し画像

イエスタデイのFとG

ビートルズのイエスタデイという曲はご存知でしょうか。1965年に発表されたアルバム『HELP!』に収められた曲で、ポール・マッカートニーがアコースティックギターで演奏・歌唱する曲です。他のメンバーは参加していません。ギター以外の音は弦楽四重奏です。

下のYouTubeの映像は公式のものですので安心してご覧下さい。曲の途中の2コーラス目からしか見せてもらえませんが、映像はきれいです。

さて、イエスタデイを取り上げた理由ですが、演奏レパートリーの少ないわたしが弾くことのできる数少ない曲のひとつだからです。

2012年にギターを購入してから1年間はイエスタデイだけを練習しました。ギター教室に通い始めると課題曲も練習しなければならなので、通しで演奏できるようになるのに2年はかかったと思います。(我ながらどんだけドンクサイのか!)

初心者がイエスタデイを覚えたくて、譜面を購入して最初に驚くのは、オリジナルと同じ音程にするにはギターのチューニングを変える必要があるということです。なんということでしょう。

ギターの標準的なチューニングは、太い6弦から細い1弦の順にE、A、D、G、B、Eなのですが、これを1音下げたD、G、C、F、A、Dにせよなのです。
ドレミ表記なら、ミ、ラ、レ、ソ、シ、ミ ⇒ レ、ソ、ド、ファ、ラ、レです。

実はわたしはまったくの初心者というわけではありませんでした。高校生の時に3年間自己流で弾いていたのです。ところがあまりに長い空白が、ギター演奏に必要な知識や運動能力のほぼ全てを、どこかに置き去っていましたので、やはり初心者同然です。

高校生の時にもイエスタデイに挑戦していたのですが、その時はチューニングを変えていませんでした。ヤングギターとかナントカギターのような雑誌のコード譜を見ていたと思うのですが、通常のチューニングのままやってました。おそらく雑誌にも解説はあったのでしょうけど、理解できずに無視していた可能性があります。大いにあります。

それでどうもレコードと音が違う。何が違うんだろうとずっと不思議に思っていて、長い長い空白の後にやっと理解したのです。音程が違うと。(どんだけかと…)

ところで、やっと本題に入ります。
イエスタデイのキーはFですが、コードのフォームとしてはGになります。チューニングで1音下げることによりGのコードを押さえてFの音を出すわけです。
下の図は、スタンダードチューニングのFと1音下げたチューニングでのGフォームのFです。

この二つのコードフォームは同じFということになります。構成する各単音の数と種類は一緒です、コードFの3弦2フレットのA音とコードフォームGの5弦2フレットのA音がオクターブ違いですが、和音として聞いたときはほとんど同じ音に聞こえるはずです。
実はいま気が付いたのですが、Gフォームの2弦3フレット緑色の〇は通常のGでは押さえない場所です。これはC音にあたります。これを押さえなければ、A音となりコードFとは構成音としてC音が一つ少なくA音が一つ多くなります。そこまで計算した上でのことなのでしょうか?

ややこしいですね。なんでポールはわざわざこんなことをしたのだろうかと思いました。最初からスタンダードチューニングのFで弾けばいいのじゃないのか。
試しにスタンダードチューニングかつキーFで弾こうとしたところ、3小節目で詰むことに気が付きました。3小節の最後の8分音符はD音ですが、このD音はスタンダードチューニングの一番低い音のE音より1音低い音です。つまりスタンダードチューニングでは出せない音です。

勝手な想像ですが、作曲はスタンダードチューニングのキーGやったのではでないのだろうかと思っています。ところがGではキーが高くて歌いずらい。それでチューニングを1音下げたのではないでしょうか。

長年、イエスタデイの歌詞の内容は、黙って去っていった恋人のことを歌ったのだとされていました。ポール自身も作曲当時はそのように思っていたらしいのですが、彼はインタビューで、"若くして亡くなった母のことを(意識せずに)思い描いていたのではないか"と言及しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?