解説のある夢

久しぶりに夢を見た。

突然、自分でも見知らぬ職場に、片想いだったひとが訪ねてくる。
ずいぶん久しぶりだね、などの通り一辺の会話はあったのだと思う。わたしと彼女は連れだって職場の近くにある広場に向かう。
夢で会うのは何度目だろうか。
最後に会ってから二十年ぶりの邂逅であり、当然、彼女は年齢を重ねている。
だが美しい。様々な経験が折り重なった上の、上澄みのひとすくいが見せてくれる美しさというものだろうか。
彼女の半生に関われなかったことに改めて気付かされることになり、それを取り戻すことは決してできないという思いに呆然とする。

だが彼女は、まったく何のためらいもなくわたしを抱きしめる。公園の真ん中である。ぼんやり映る人々が私達の人目も憚らずに抱き合っている横を通り過ぎてゆくのは感じている。

彼女は、わたしの男性性を象徴している部分にさえ触れてくる。わたしが無意識に理想化した現れだろう。だが夢であろうと、いや夢であるからこそ自制が働いたようだ。
おそらくわたしの提案で、近くの丘に登ることになり、早くも急な傾斜のある小道を二人で歩いてゆく。
丘の入り口のような所に道標のようなものがあり、何が書いてあるのか読もうとして立ち止まった僅かな時間に、彼女を見失う。
丘の方向は見晴らしが良く、それらしき姿は見えない。戻ったのだろうか?
通りがかりのひとに尋ねたのだと思うが、わからないと言っているようだ。

わたしは焦燥に駈られてもと来た道に戻ろうとするが、そもそも道がわからない。夢の中ではよくあることである。

わたしは彼女を失ったことを知り、胸の鼓動が治まらないまま目覚めを向かえるが、彼女の姿を少しでも留めようと、何度も夢を反芻する。

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