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オランダは優勝候補になれるのか

 苦しみながらもガクポ、クラ―センのゴールで初戦のセネガル戦で勝ち点3をもぎ取ったオランダ。歴史的にも、綺麗で華のあるサッカーを展開する時より、泥臭く勝利を積み重ねた時の方が良い成績を残しているオランイェは2大会ぶりのワールドカップ出場ということもあり、僕はかなりの期待を寄せていた。しかし、続く第2節エクアドル戦で露骨な不安を覚えることになった。

 試合開始5分に今大会でのブレイク候補コーディ・ガクポの強烈なミドルシュートで先制するが、その後の試合運びは全く上手くいかず、エクアドルに主導権を握られる展開が続く。前半終了間際にエクアドルにネットを揺らされるが、オフサイドで命拾いした。嫌な流れでハーフタイムを迎える。

 後半開始と同時にエースのメンフィス・デパイを投入しこの苦しい状況の打開を試みるが、エクアドルペースは変わらず。そして、何となく嫌な予感がする中で、それは現実となる。自陣の中盤でのボールロストからショートカウンターを受け、スルーパスに抜け出したエストゥピニャンがシュート、今大会で当たっているアンドリース・ノペルトがセーブしたが、こぼれ球をエースのエネル・バレンシアに押し込まれ同点とされる。

 結局、最後まで流れを変えることはできず、主導権を握ることもできないまま試合終了のホイッスルが鳴ってしまった。オランイェとしては、非常に後味の悪い試合となった。なぜオランダはエクアドルを相手に主導権を握ることができなかったのか。改善の余地は果たしてあるのか。

 僕が考える問題点は3つ。3412が本当に適正システムなのか、最終ラインからにかけてのビルドアップの工夫、アタッキングサードでのクオリティの低さ。これらを解決しないと勝ち進んでいくのは難しい。

 まず、この試合で最も露呈した問題は最終ラインから中盤のビルドアップの停滞だ。前半はセンターバック3枚が横並びになり動きのないボール回しでエクアドルのプレスを上手く剥がすことができず、後ろから前へのパイプとなっているオランダの心臓フレンキー・デ・ヨングに上手くボールが入るケースがほとんどなく、ボールを引き出すためにフレンキーがポジションを下げざるを得なくなった。理想は、フレンキーがエクアドルの前線の守備陣の背中でボールを引き出して、プレスをひっくり返すようなビルドアップを行うこと。フレンキーが下りることで、ボールを引き出すことはできるが、相手の前でボールを持つことになり、ボールを上手く捌けなくなる。これがオランダの攻撃が停滞してしまった1つの原因だ。フレンキーが相手の中間ポジションでボールを受ける展開を作らないとオランダの攻撃は上手く展開しないだろう。

 次に、試合を通してシュート2本、枠内シュート1本であることから分かるように、ゴール前のクオリティ、アイデア欠如も改善しなければならない。オランダの前線の選手を見ると、実力は間違いない。今大会既に2ゴールを決めているコーディ・ガクポは身体能力が高く、エクアドル戦で見せたように一撃で仕留める決定力も持っている。2試合連続でスタメン出場しているステフェン・ベルフワインは、ドリブルを得意としており、組織を打開する能力を持っている。エースのメンフィス・デパイは言わずもがな、ワールドカップ予選でオランダの全33ゴールのうち12ゴールを奪っている。怪我明けでまだ本調子ではないが、能力は誰もが知る通りだ。
 上記の選手の他にも、ポストプレーと空中戦、ワンタッチゴールを得意とし、前線から献身的にプレスができるボウト・ベグホルストとルーク・デ・ヨング、ヤンセン、ベルフワインと同じく個人技で組織を打開できるノア・ラング、10番タイプのシャビ・シモンズなど、魅力的な選手はたくさん招集している。これらの選手を上手く組み合わせ、メンフィスを中心とした攻撃を構築したい。

 そして最後に、このメンバーに対して3412は本当に適正システムなのか。セネガル戦、エクアドル戦と、2試合続けて3412を採用したルイ・ファン・ハール監督。守備に重きを置く監督で、規律を重視した守備を軸にチームを構築する。今大会でも、オランダは規律がある組織的な守備から入る傾向にある。例えボールを保持できない時間が長く続いても、まず守備からという意識の強さを感じる。少し後ろに重いところは気になるが、守備に関してはそれほど大きな問題は感じない。

 問題は、選手とシステムのかみ合わせの悪さにある。両サイドを目一杯に取り、幅と深さを使って落ち着いたボール回しをしようとする。狙いとしては、サイド・トゥ・サイドでボールを動かし、揺さぶりながらずれを作る、または中央に相手を寄せてサイドから仕掛けるといったところだろう。
 しかし、サイドを目一杯に取ったデンゼル・ドゥンフリースとデイリー・ブリントは相手の5バックシステムによって消されてしまう。そうなると、一度中央に相手を引き付けてサイドへ展開したいところだ。しかし、ここで問題が生じた。この試合2トップに入ったメンフィスとガクポが両選手ともにポストプレーを得意としておらず、相手を背負った状態での足元の縦パスをことごとく突かれてボールロストしてしまう。全くボールが収まらず攻撃が停滞してしまい、逆にカウンターを食らう展開が続いた。
 最前線の中央でしっかりとボールが収まり、更にそこに攻撃を牽引できる選手がフォローに入ればもっと楽な展開になるかもしれないと思っている。

 ここまでオランダの問題点について取り上げてきたが、これらの問題点を一気に解決できるかもしれない方法を提案したいと思う。
 それは3421へのシステム変更だ。最前線にポストプレーが得意で、献身的に一番前からプレスをかけることができ、尚且つ決定力があるべグホルストを置き、その両脇にアタッキングサードでアイデアと決定的な仕事ができるガクポとメンフィス。両サイドとボランチの変更はなし。より攻撃的に変更したい場合、左のブリントをマラシアに変更しても良いだろう。フレンキーの相棒を誰にするかだが、僕はマルテン・デ・ローンを推したい。ミスなく確実にボールを展開することができ、守備面でも豊富な運動量と強度の高いプレスで大きく貢献できる。もちろんコープマイネルスでも問題はないが、少しパフォーマンスが低調な印象を持っている。最終ラインは変更なしだが少し動きを修正して左センターのナタン・アケをビルドアップ時に前に上げ攻撃に参加させたい。持ち上がりや丁寧なパスは彼の大きな魅力の1つだ。キーパーは、ここまで文句なしのパフォーマンス世界から称賛を浴びている新守護神アンドリース・ノペルトだ。

 改めて、僕が提案した理想の布陣は下の通りだ。
                 19
               べグホルスト
         10                8
        デパイ              ガクポ
     17       21        15       22
    ブリント   デ・ヨング    デ・ローン  ドゥンフリース
          5          4        3
          アケ    ファン・ダイク   デ・リフト
                 23
                ノペルト

 基本的な戦い方は同じで、きちんと守備から入る。僕も、今大会はチームで守備戦術ははっきりしている国が勝ちあがる思っているからだ。オランダは間違いなくそれに該当している。中央に誘導してボールを奪う戦術は中々斬新だがチーム全員がその戦術をきちんと理解しているように見える。
 攻撃時も基本は同じで後方からきちんと繋いでいく。この時に大切なのはダブルボランチが下がり過ぎないこと。相手のライン間でボールを引き出すことが彼らの役割、そしてそれができる2選手だ。両サイドも同じように幅を取り常に背後を狙う。デパイには自由を与え、ガクポには常に背後を狙うように指示する。そしてボランチやデパイからの縦パスをきちんと処理してゴール前に入って仕事をするべグホルストといってところだ。

 オランダには代々世界的なストライカーが存在したが、今大会では純粋なストライカーとして世界的な選手はいない。それでも役割をきちんとこなしつつ得点を奪う力を持った選手は招集しているはずだ。僕はこのチームの鍵となる選手はボウト・べグホルストだと思っている。彼が出場した時、前線できちんとボールを収め攻撃を展開できれば、オランダの試合は上手くいくようになるだろう。

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