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「行動を変えるデザイン」で見えたプロダクトのアンチパターン事例

こんにちは!リンクアンドモチベーションでストレッチクラウドのUI/UXデザインを担当している亀山です。

今回は書籍「行動を変えるデザイン」に沿って自社プロダクトを振り返り、行動変容デザインのアンチパターンを紹介してみたいと思います!

「ユーザー価値に繋がる行動をもっと増やしていきたい!」と思って読んだですが、とても学びの多い本でした。
狙ったユーザー行動が引き出せていないと感じている方に何かしら参考になれば嬉しいです!

また、この本の概要については、翻訳者の方のNoteも併せて読んでいただくと良いかもしれません!


アンチパターン1:ユーザーが望まないことをさせようとしている

行動変容デザインの目標とは、人が何かをしやすくすること、それも、これまでやりたいと思っていたのにできなかった行動をできるようにすることだ。

出典:行動を変えるデザイン, Stephen Wendel 著

行動変容デザインの目標はあくまでユーザーが元々望んでいたことを実現することであり、無理にユーザーを変えよう、動機付けしよう、教育しようとするものではないと前置きがあります。

しかし、自分のプロダクトには想いが乗っていることもあり、ついつい「ユーザーにこうなって欲しい(きっとユーザーも望んでいるはずだ!)」と思いたくなるときもあるのではないでしょうか?

ストレッチクラウドの場合

ストレッチクラウドはマネージャーやメンバーの「成長したい」という欲求に応えることを目指しているプロダクトです。
一方で、「効率的に、楽に成果を出したい(極端な話、成長しなくても良い)」という人もいると想定され、そういった人にも同じ訴求をしてしまっている可能性もあります。

「このプロダクトでしてほしいことは、本当にユーザーも望んでいるのか?」と一歩引いて問いかけ、より価値を研ぎ澄ます必要があると思いました。

アンチパターン2:熟慮の心理を引き起こす体験

人には2つの心理モードがあると説明されています。

直感の心理は、瞬間的・自動的に生じる心の動きです。
過去の経験や一連の単純なルールを使って、ほぼ瞬時に状況を判断できます。

一方、熟慮の心理は集中している時に生じる自覚的な心の動きです。
慣れない状況でも合理的に判断し、複雑な問題を扱えます。

私たちが「考えている」と認識できているときは、熟慮の心理が働いています。しかし、熟慮の心理は負担が大きく、実は1日の約半分は直感の心理で生活していると言われています。
私たちも長い時間仕事をしていると、だんだん思考が働かなくなって直感的に行動することが増えますよね。

そのため、「わかりにくい」「使いにくい」デザインは次の2つの結果に繋がる可能性がありそうです。

  • (直感の心理によって)なんとなく「使わない」と判断されてしまう

  • (熟慮の心理によって)「これどうやって使うんだろう?」と考えさせた結果、負担を感じて離脱したり、そもそも行動する気が起きない

ストレッチクラウドの場合

とある画面
  • 文章での説明が多く、わかりにくい画面がある

  • 概念やそれに対する操作が整理されておらず、わかりにくい画面がある

元々、いくつかの画面についてはUX改善の必要性を感じていました。本書を読んだことで、少しでも「わかりにくさ」があるとユーザーは想定した行動を完了できない可能性があることに気づけました。ユーザーは定常業務で疲れている状態で利用することもあるので、なおさら熟慮の心理を使って行動することは難しいと思います。

直感で理解できるように「ユーザーにとって必要最低限の情報に絞る」「見ただけ概念や構造を理解できるようにデザインする」など基本的なことを丁寧にやりきろうと思いました。

アンチパターン3:CREATEアクションファネルの観点を考慮できていない

出典:行動を変えるデザイン 公開された無料ツールキットより

CREATEアクションファネルはユーザーが行動を起こすまでのステップを分解したファネルです。この各ステップを離脱せずに進めば、ユーザーは行動を起こせるとされています。

  • Cue(きっかけ)・・・行動について考えるためのきっかけ

  • Reaction(反応)・・・直感的な反応。「面白そうか?」「知り合いも使っていたか?」「前回使った時はどうだったか?」が瞬時に頭をよぎる。

  • Evaluation(評価)・・・費用対効果についての意識的な評価。評価のステップでは、コストと便益についてざっと考えを巡らせ、「これをやる価値はあるか」を考える。

  • Ability(能力)・・・行動する能力。現実的に今それを行うことができるかを考える。

  • Timing(タイミング)・・・行動するタイミングと緊急性。急ぎで今やらなきゃいけないのか、別のタイミングでやるか考える。

ストレッチクラウドの場合

ストレッチクラウドでは「振り返り」というアクションがあります。自分が成長するために決めたアクションが進捗しているかを確認し、必要なら改善するという一連のアクションがあります。CREATEアクションファネルに沿って、「振り返り」を妨げているかもしれない要因を評価してみます。

「振り返り」の一連のアクション


Cueとなるメール通知

Cue(きっかけ)

  • メールのタイトルを見た際に他のメールに埋もれてしまい、明確なCueになっていない可能性がある

Reaction(反応)

  • メールの文字量の多さやフォーマルで真面目な印象から、「難しそう」と感じる可能性がある

  • ストレッチクラウドは組織施策として導入されているが、忙しい定常業務に加えて実行する必要があるので、メールを見た瞬間に「少しめんどうだな」と思われて後回しにされる可能性がある

Evaluation(評価)

  • メールを読んだ時点で、ユーザー目線でのメリットを訴求できていない。コストだけが伝わっている可能性がある。

Action(行動)

  • パスワードがわからず、離脱してしまう可能性がある

Timing(タイミング)

  • メールを見たタイミングで別の業務をしており、タスクの期日を考えて後回しにされる可能性がある

CREATEアクションファネルで整理した結果、今まで検討できていなかった観点で改善点を洗い出すことができました。

ステップごとに分解すると「どこが離脱の要因として大きそうか」「足りていない要素は何か」がわかりやすく、改善の方針も見えてきます。特にReaction(反応)やEvaluation(評価)を超えられるように、パッと見の印象やメリットの訴求をもっとわかりやすくする必要を感じました。

最後に

いかがでしたでしょうか?

今回は「行動を変えるデザイン」に沿って自分のプロダクトを振り返りました。新たな改善点が見えてきてワクワクしていますし、本当に「行動が変わる」ところまでデザインで促せるように改善していきたいと思います!

皆様にとって少しでもお役に立てば嬉しいです!

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