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びるまの竪琴が閉店

恵比寿にあったびるまの竪琴というお店が閉店していた。僕が人生で2番目に多く行ったお店なのでとても悲しかった。ちなみに1番目は代々木にある武蔵野アブラ学会だが、このお店は代々木にて浪人やインターンをしていた時に「1食を済ます値段で、3食分お腹いっぱいになれるお店」として利用していたので少しチート要素も含まれている。

びるまの竪琴はミャンマー料理を出しているお店で、佐野さんという日本人女性とココさんというミャンマー人男性の二人で経営しているお店だった。このお店の前の道を通らないと帰れない場所に家があったので、恵比寿のボロアパートに住んでいた4年間を象徴するお店でもある。家に来る機会の多かったオーケイズの人たちも連れて何度も何度も通ったので、アットホームな雰囲気も合わさって部室のように大事な存在だったのでとても寂しい。

なべりなのファンミーティングみたいな集合写真

謎の展示物とピンクの看板のせいで最初は怪しいお店かと思っていたのだが、偶然起きたある事故のおかげで僕とそのお店の付き合いは始まった。事故とは、大学4年生の時に家からバイト先の鮨屋に自転車で向かっている時にそのお店の前で派手にコケたことである。出勤に遅刻しそうだった僕は、洗濯のために持ち帰っていた調理服を袋に入れてそれを自転車のサドルにかけて出発した。まあまあなスピードを出しながら店の前を走っていたのだが、そのタイミングでその袋がタイヤに絡まり信じられないスピードで転倒した。
すぐさまお店の中から佐野さんとココさんが「大丈夫?!」と出て来てくれたのだが、怪しいお店だと思っていたことや転倒した恥ずかしさ、バイトに間に合わなきゃという思いから「大丈夫です!!大丈夫ですから!!」とお礼やお詫びもそぞろに、すぐさま自転車を起こしあげて走り抜けたのだった。中にいた佐野さんの目線では、突如として外を走っていた自転車が“消えた”ように見えたらしい。ちなみにその鮨屋は店長に嫌われてクビになった。あんなに急いで出勤しようとして必死だったのに。

数日後にオーケイズの先輩である8期・伊藤さんと麻雀を打っていたら「そういえば恵比寿にめっちゃ美味しいカレー屋見つけたんだよ!カレーなのに酢をかけて食うんだよ!」と熱弁されたお店がびるまの竪琴だった。え、あそこ美味しんだ!そういえば事故のこと弁明したい!っていうかカレー屋なの!?酢!!?と興味を持った僕はすぐさまびるまの竪琴に行き、その美味しさに感動した。お店の佐野さんも自転車事故のことを覚えていて、その人柄と相まってすぐ仲良くなった。東京に来て地域の人と世間話できる間柄になるなんて初めてのことだったので、料理の美味しさとお店のことを僕はすぐに大好きになった。近くにはスムージーショップにタワマン、パーソナルジムなどが立ち並ぶ立地なのに定食屋チェーンと見間違うくらいの値段でお腹いっぱい食べさせてくれるのも魅力だった。

お酒の種類も沢山あるのにメニューはつぎはぎだらけだった

基本的にはミャンマーの家庭料理を出しているお店で、前述の通りカレーが名物だった。他にも焼きビーフンやオムレツに豚の軟骨ローストなど絶品メニューがあり、そのどれに酢をかけても美味しかった。ニンニクや生姜などを漬け込んだそのお酢は佐野さんしか作れないお店オリジナルのものだそうで、ボトルを持っていくとテイクアウトもさせてくれた。オーケイズのOBOG会でそのお酢の美味しさに感動した創設者・大久保さん(長イキアキヒコさん)がお酢をテイクアウトした過ぎて終電を逃しかけていたくらい、料理によく合うお酢だった。

特に豚の軟骨ローストにお酢をかけた瞬間の感動は言葉にできないもので、何度食べても飽きなかった。9期・西畑さんが食べた瞬間に「美味すぎて食欲壊れてまう!」と叫びながらうずくまり店中が笑いに包まれたこともあった。あの時は奇跡的に全員ウケて良かった。お店がお店なら出禁を食らうこともあり得た。

無念さが垣間見える閉店のお知らせ

駅前で僕を見つけた佐野さんが50mくらい手前から手を振り続けていて「そんな先から手振られ続けたら気まずいよ」と思いながらも嬉しかったこと・毎回食後に温かいお茶と個人的に仕入れた果物を出してくれたこと・ジャスミン米を出すたびに「これはジャスミンティーで炊いてるからジャスミン米って言うんですよね」と僕が連れてきた友達に言って「その嘘やめなさい!」と佐野さんに注意されるという一連のくだりが出来ていたこと・2020年からお店も禁煙になって外の灰皿でしかタバコが吸えなくなったのに閉店後店内でタバコを吸ってる佐野さんを見てしまったこと・駅まで徒歩10分の距離すら自転車を使い、歩いているココさんを見たことがないこと……そんな情景が二度と見られないことに寂しさを感じ、忘れたくないと思い文章を書いた。

きっと閉店の理由は様々なものがあって想像しきれないが、一度でもお店に訪れた人には深く印象に刻まれるお店だったと思う。

びるまの竪琴らぶ。フォーエバー

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