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休日なので、衝撃を受けたことを11344文字の文章にしてみました。

いや、これカップヌードルのカレー味じゃん。。
まさかこんな結末になるとは夢にも思わなかった。

それを知ったのは確か雑誌Tarzanだっだと思う。年に一度は、夏まで痩せる腹筋特集でお馴染みのあれだ。なぜいつまでもお腹がだるだるなのか、と潜在的に通年感じているのを見透かすように、Tarzanは腹筋特集を放ってくる。

おっ、夏までにシックスパック?!今年こそ?!誰でも簡単に??という表紙に誘われてフラフラと買ってしまったことは何度あるだろう。意思の強さかは最初の3日だけで、おかげでお腹は相変わらずだるだるだ。

この時Tarzanを手にしたのは王道の腹筋特集ではなく、別の企画だった。
で、1番興味を惹かれたのはその中に
大好きなカレー屋さんが載っていたコーナーだった。

それは六本木ミッドタウンにあるお店で、打ち合わせの場所に指定されて行ったのが初めてだった。

たしか、渋谷系音楽好き同士みたいな感じで話がもりあがり、ご飯からのカラオケみたくなったものの、さすがに明け方になったんで解散。また会いましょうみたいな流れで知り合った方だ。

改めて会うとなり、指定されたのが六本木ミッドタウン。なに、ミッドタウンだと。。メールを見て嫌な予感がした。ミッドタウンなんてアッパーな社長とかキラキラした人々がいくとこで、勝手なイメージだけど、いちいち良い品が取り揃えてあって、ガオーム!なんて音がする車ばかりがくる場所だ。
普段ダラダラしたカッコでダラダラ仕事してる自分としては、腰が引ける。正直、居心地悪そう。だってトゲトゲのついたスニーカーとか、トゲトゲののついたバッグとか、トゲトゲのついた財布も持ってないし。

行かないで良いなら正直行きたくないけど、今回は相手が指定してきた以上、仕方ない。なんかミッドタウンに会社があるらしいし。

みたいな経緯でミッドタウンへ行くと、地下のレストラン街で待ち合わせ。
嫌いなものありますか?からの
特にありません!からの
向かった先がカレー屋さんだった。
そしてそこで食べたバターチキンの美味しいこと。
バターチキンて、もっと濃ゆいイメージだったけど、とにかく軽い。
バターの香りはするが、それは臭くはなく、あくまで脇役。いや、脇役の脇役、通行人Aくらいの控えめさ。
変わりにルーの中から次々にスパイスの味がする。メイン具材のチキンも美味。そしてなんだろう、辛味だけでなくて、ほのかに甘いような味がある気がするような気がする。。しかも値段は1000円くらい。
え?ミッドタウンなのに?
2000円くらいはするでしょうという偏見を勝手に裏切られたのも手伝って感動はハリケーンのごとし。
正直、打ち合わせの内容は全く覚えていないほど、このカレーの印象が強かった。

それから数年後、雑誌Tarzanを見ていたら特集記事の中にそのお店のことが。
あ、あのお店だ。。記事のタイトルを見ると、名店のレシピ紹介とある。
そしてあのお店が紹介していたのは
あのバターチキンだ。
たまーに料理は作るので、多少の心得はある。レシピを読み進めると、なるほどあれはスパイスカレーというもので、ルーを溶いて作るカレーとは違うとある。
へえ、そうかいな。
と、さほど心動かずに読んでいると
最後にシェフがこんなことを言う。

カスリメティをひとつまみ入れると味が激変します。ぜひ探して入れてみてください。

ひとつまみ

激変、だと、、?

これはやばい。
猛烈に気になり始めた。

カスリメティ?
激変?
ぜひ探して?

プロがそこまで言うのなら
相当重要なものなのだろう。

これは是非やってみたいじゃないか。
食べたことないし、カスリメティ。

レシピを改めて見ると、
スパイスは
クミン、コリアンダー、ガラムマサラなど。
ふむふむ、ウチに大体揃ってる。
これらは別の料理を作る際に、
マルエツとかオオゼキとかで買った
一般的なものだ。
他に必要な素材は無塩バター、鶏肉、トマト、ニンニク、しょうが。

これであの味が??
なんの変哲もないこれらで
あのミッドタウンの一皿が??

いや、まてよ。
怪しい。

やはり
カスリメティなるものが怪しい。

こいつが平凡な素材を激変させるんだ。
だからシェフも頑張って探して入れてみてくださいと言っていたんだ。
頑張ってと言ったか、
探してみてと言ったか、
もはや記憶はあやふやだけど
なんとなくそんなフレーズを言ったはずだ。

早速、カスリメティを近所のスーパーで探す。しかし撃沈。全滅。
カルディとかに足を伸ばして成城石井まで突撃したのに。。

仕方なくネット検索。
あった。購入。

こうして作ったバターチキンは
もちろんミッドタウンのお店のようにはいかなかったけれど、
ルーで作るカレーとはまるで別もの。
自宅でこんなカレーが作れるなんて。
苦心してゲットしたカスリメティは、
別名フェヌグリークとも言われていて、その名前だと割と手に入れやすい。
後日、オオゼキにもあった。
ほのかに甘いこれを最期に振ると、なんだか仕上がりが違う。気がする。

そんなこんなでスパイスカレーの道へ足を踏み入れると、新しい扉がバンバン開かれていく。

北インドのカレーと
南インドのカレーはまるで違う。
ベースになるスパイスも違うし、
ナッツを使うか否か、
ココナツミルクを使うか否かなどなど
驚きの連続。
そもそも現地ではカレーとは言わないし、
スパイス料理みたいな感覚で、
というのも初めて知った。

フランス・パリへ初めて行った時に
現地のバケットを食べた時の衝撃に近い。
今まで食べてきたものは何だったのか。。
何だったのかってそれは
日本人の味覚や風土に合わせて進化したものなんだけど、
本家とあまりにもかけ離れすぎているから、こうなっちゃう。

スパイスカレーの話に戻ると
そんなこんなで色々なレシピに挑戦してみたくなったので、名店レシピの本や、本場レシピの本を買って読み漁る。

これはどんな味なのか?
また知らないスパイスが出てきた。
それはいつ使うんだ?
興味が興味を呼び作りたい!食べてみたい!という気持ちがグイグイ盛り上がる。

だが、知れば知るほど使ってみたいのが現地で使われているスパイス。
だがこれがなかなか手に入らない。

ネットで探すと見つかることもあるが、高かったり、またはスパイスは安くても送料が1000円くらいする。

こっちは素人で
知らないスパイスをちょっと使ってみたいだけ。必要なのは5gとか10gくらいなんだけど、ネットで売っているのは、なにしろ量が多い。
500gとか1kgとか、だから割安なんだろうけれど、ビギナーとしては、
それが旨いんだかそうでないんだかわからないし、しかも金輪際使わなかったら、1kgとか余ってたら困る。

なんとか少量で、配送料も安いのはないか?
貧乏性で探し続けながら、
カスリメティが、フェヌグリークという別名で近所のスーパーにあった可能性も横目で睨みつつ探す探す探すだが見つからず見つからず見つからず。

万事休す。
これはお手上げだ。
作ってみたいスパイスカレーは山ほどあるのに、結局来る日も来る日もバターチキンバターチキンバターチキンだ。こんな調子じゃ、あの大好きなミッドタウンのバターチキンも飽きちゃうじゃないか。

もはやスパイスカレーの軽さに慣れて、ルーのカレーを食べなくなった。
ルーのカレーはなんだか脂っこく感じるようになっていた。

スパイスカレーを自分で作るとわかるけど、油はほとんど使わない。
具材も自分次第だけど、ガッツリ系じゃない。
だから思いの他、量を食べてしまうんだけど、それでいて胃にもたれない。
個人的にはもう完全にスパイスカレー派に改宗してしまった。

こじれてるのが
お店で食べたい派じゃないこと。
もちろん様々なお店があって
腕利き店主が作ったカレーを食べ方が美味しいに決まっている。

でも自分がらやりたいことは
それではなくて
自宅で美味しいスパイスカレーを作ることだ。

本物かどうかは問題じゃない。
レシピを真似て、自宅で作ってみたいのだ。

なんでそうなのか
もはや全くわからないけど、
あと
スパイスが揃わないとか、作れないなら辞めちゃえば良いのに
なんでか自ら退路を断ち、勝手に苦しんでいる。バカか病気だ。
それだとちょっと傷つくから
探究心が強い、ということにしておこう。

だからこそスパイスが買いたい。
でも高いしなー。。

と、悶々としながら情報を集めていると、ある日、新しい扉が開かれる。

それはスパイスカレーを作ることを趣味としている方のブログだった。
そしてその中の一文が目を引いた。

アメ横の大津屋でスパイスを購入

アメ横の、大津屋??
あれは何の時だったか数年前に行った記憶が。
そうだ、調味料を買いに行ったお店だ。

なんだって、あそこにスパイスが⁈

どうやらそこはかなりのスパイス専門店で、というかむしろその筋では有名で、かつての自分の利用方法のがマイナー。
当時はまだスパイスカレーに興味がなかったから、お店の中にあるスパイスには全く気づかなかったらしい。

なるほど、問屋さんという手があったか。。!

ここなら安く少量のスパイスがあるはず。

そしてしばらく情報を漁っていると、
大津屋さんのすぐ近くに
もう一つ面白そうなお店があることが判明。

大津屋さんとは品揃えが異なり、
そっちでしか買えないスパイスもあるようだ。

これは良い情報をゲット!
今度の週末行くしかないと昂りながら、さらにそのお店を調べると、
不安な事実が浮かび上がった。

そのお店があるのは、
アメ横センタービルの地下。

アメ横センタービル??
それはテレビでよく見るそこから道が二手に分かれる、アメ横にある、渋谷109みたいなあれだ。

アメ横にはたまに行くから
フラフラしてるうちに
意外なとこにいきつくことがある。

その一つで、アメ横センタービルの地下の入り口を見たことがある。
ん?こんなとこに階段あるな。なんの店があるんだろうと覗き込むと、なにから異臭が漂ってきた。
アパレル系じゃない、魚屋さんや八百屋さんの匂いでもない。
なんだこれ。。
と躊躇していたら突然地下から海外の言葉が聞こえてきた。出てきたのは、海外の人なんだけど、あきらかに旅行者じゃない。と、また別の海外の人が入っていく。
この下にあるのはなんなんだ。。
明らかな異臭に完全にビビッてその日は退散。以来、ずっとあのアメ横センタービルの地下は、気になっていた。

そしてスパイスカレー派に改宗し、
スパイスの安価な入手方法を探し求めるジプシーとなった今、
宝の山であるスパイス専門店があることがわかった。

ただしそれがあるのは
あの日、恐れ慄いて退散してしまった
アメ横センタービルの地下なのだ。

一度でも、あの地下へ行ったことがある人からしたら、
なにをそんなおおげさな、
このチキン野郎が、
と思うだろうが、
すこしアウトローな雰囲気が残る気がするようなアメ横の、
ちょっと異様な匂いのする、
旅行者じゃない海外の人が出入りする、
しかも地下は、
初めて足を踏み入れるビビりにとっては、こっちのチキンのクリアはハードルが高い。

ということで、
退散した記憶がある場所に
行きたいスパイス専門店がある。

いやしかし、と、
なかなか踏み出せないまま時間は流れ、
なんだかんだ大津屋さんでスパイスを買っては誤魔化して過ごしていた。

しかし、動かざるを得ない状況が勃発する。

日本テレビの鉄腕DASHという番組で、
なんとカレーを作る企画が始動。
ただただカレーを頬張るアバンが爆裂に素敵だ。これは楽しそうな新企画が始まったとワクワクしながら見始める。

ルーを作る会社、ハウスのプロ達に会ったりと楽しい展開に見入っていたら、
初回の放送で気になる予告が。

長瀬さんがインドへ行くというじゃないか。
インド、ということは
よもやルーのカレーを学びに行くわけじゃなさそうだ。
じゃあなにを?
スパイスカレーに決まっている。

あっという間に翌週になると
やはり長瀬さんはインドでスパイスを探す旅へ。
本場の市場でとんでもない量のスパイスを見て、食べていく。
と、その中で、悪魔の糞と呼ばれるスパイスに出会う。

悪魔の糞?
なんだそれは?
聞けば猛烈に臭いが
スタータースパイスとして使えば
美味なるコクが出るという。

その後に訪れたインドの家庭でも
悪魔の糞が使われていて、
やはり少し入れると味が格段に変わると言っていた。

少し入れると味が格段に変わる?

カスリメティの時と同じ感覚がする。
これは是非やってみたいじゃないか。

早速ネットサーチすると
意外なことにネットで買える。
しかしここで問題が。
またしてもあの壁が立ちはだかる。

配送料。

なかなか見た事がないスパイスだ。
この配送料が2~300円なら目を瞑ろう。
でも1000円弱は高いじゃないか。。

今回のブツは、悪魔の糞。
少量ながら味の効果は高い。
しかしそれ以上にすごいのが
匂いらしい。

スパイスに火が通ると
えも言われぬ香りを放つが、
通常の状態だと爆裂に臭い。
その匂いをインドで嗅いだ長瀬さんは
のけぞっていたし、
家での保管方法を調べたら
瓶に入れた方が良いとある。

爪楊枝入れほどの悪魔の糞のケースごと、
瓶で密封しないとキッチン中が悪魔の、ならまだしも、糞の餌食になるらしい。

そんな激ヤバスパイスを入手して、
もし、
もし万があまり活躍せずにいたら。。
今、その可能性はゼロじゃない。

そんなシロモノに1000円弱の配送料を払えるか?
いや、払いたくはないじゃないか。

ダメか。
せっかく貴重なスパイスを発見したけど、今回ばかりは断念するしかない。

そう思っていた。

あのネット記事を見るまでは。。

それは寝耳に水だった。
悪魔の糞が買えるお店がある。
しかも、大津屋さんだ。

そんなアホな。
でも今まであのスパイスの存在を知らなかったのだから、
見逃していた可能性がある。
しかも、大津屋さんなら問屋さんだから少し安いかもしれない。
近くに行った際に立ち寄れば
さほど交通費もかからない。

チャンス来たれり。
喜び勇んでアメ横、大津屋さんへ。

御徒町駅を降りて、すぐ。
信号の赤が焦らすが、
買えるとわかっていれば
さほど苦じゃない。

青信号で横切ってまっすぐ大津屋さんへ。
道路に面した場所に並んでいるスパイスをチェック。
ここにはない。
店先、右の棚なし、左の棚なし。
やはりあまり買う人もいないスパイスだからなのか、目につく外には置いていない。

ならば中へ。
床から天井まてズラリ並んだスパイスをチェック。
まずはいつも見る左の棚。
お、カレーミックスがある。
しかもマサラホット、、
シナモンカシアが入っているとな?
これは美味しそうだが、
今日のお相手は君じゃない。
悪魔の糞を手に入れた後でゆっくり話をしようじゃないか。
と、誘惑を振り切り、棚の上から下へ、左から右へ目を走らせる。
ここには無い。

それじゃあ反対側、
入り口入って右側の棚か。
ここは普段あまり見ない棚。
なるほどここにあるのか。
天井近くから見ていくと
ギーが目に入る。
ギーがあるのか⁈
ギーは、澄ましバターとも言われるインド食材。
ようは脂だ。
これもいつか使ってみたかった奴だ、
まさかこんなタイミングで出会うとは。
いやしかし、さすがに今まで見てこなかった棚だけあって、
見逃していた食材がある。
いきなりギーが出るとは予想外。これなら悪魔の糞もありそうだ。
今、確実に近づいている。
ドキドキしながら棚を慎重に見ていくと、、あった
と言わずに全ての棚を見終わってしまった。

え、終わり?
一緒、ポカン。

見逃した可能性がある。
何しろスパイスだらけのお店だ。
ここまで来て買えませんでしたは
残念すぎる。

店の前の棚、右側左側、
店内の棚、左側右側、
くまなくゆっくり見る。
2回目だけどやっぱりない。

と、ひらめいた。
ははーん。
あまり買う人がいない食材だから
店に並んでないのね。
欲しい人は店員さんに言って
出してもらうスタイルの奴だ。

という事に気づき、
店員さんに聞くと、
今、品切れなんだよ
の一言。

なーんだって。
そんなバカな。
確かに大津屋さんには取り扱いがあって、でもこの日に限って品切れだった。。

悪魔の糞が手に入らない。
せっかくアメ横まで来たのに。。
と落ち込みそうになったが、
ここでまたまた閃いた。

アメ横は問屋さんが多い。
ひょっとしたら他にどこか
悪魔の糞を今日買えるお店があるかもしれない。

そう、今日勝手連帰りたいのだ。
だってせっかくアメ横まで来たんだし。

大津屋さんの前で即座に検索。
ヒット。
大津屋さんは今品切れだったから除外。
他には、、あった。
しかも大津屋さんから近い!
ほらみろ、やっぱり勘が冴えていた。
悪魔の糞を今日買えるお店が
アメ横にはあるじゃないか。

事前に調べたらすぐわかっていたけど、大津屋さんで買えるとばかり思い込んでいたから他のお店を調べてなかった。

でもまさかこんな近くにあるなんて。
場所は上野駅の方。
目印になる建物は、
アメ横センタービルか。

こっちにスパイス専門店があるなんて知らなかった。
知ってたら大津屋さん来るついでにいつも寄ったのに。

と、目的地が近づいてきた。
アメ横センタービルだ。
ぐるり一周してみたが路面店にはそれらしきお店はない。
とすると道を挟んだ向かいなのか。
見てみるがいずれにもスパイスを扱う店は見当たらない。

おかしいなぁ。
地図が間違っているのか?
または古い情報でもはらお店がないのか。

目当てのお店について
詳しくネットで見ると、
住所は確かにアメ横センタービル。

その地下だ。

なんだって、
あの日ビビッて足を踏み入れる事が出来なかったアメ横の地下に、
悪魔の糞を売るお店があるだって?

困るじゃないか。
だって怖くいんだから。

いよいよ追い詰められた。
選択肢は2つ。
高い配送料とハズレた時の残念感というリスクを承知でネットで注文するか、
過去にビビッて退散したこの地下に足を踏み入れるか。

なぜそこまでして悪魔の糞が欲しいのか。悪魔のウンコだぞ。
ここまでして欲しいとは思ってしまう時点で、既に悪魔に飲まれているのかもしれない。
いや、悪魔のウンコに飲まれているのか。冷静に字ズラを見ると、
悪魔のウンコに飲まれているなんてかなりイヤだが、悪魔のウンコにしろ、ウンコの悪魔にしろ大差はない。ああや、大違いか。。悪魔のウンコはスパイスだからまだしも、ウンコの悪魔はベースがウンコだからダメだ。

違う、問題はそれじゃない。
スパイスだ、スパイスを買うんだ。
今、行こう。

こうしてウンコを求め、
アメ横の地下へ足を踏み入れた。

そこはさながらアジアの市場だった。
壁一面に置かれたアジア料理の材料が、日本ではない香りを放つ。
そこに
生臭い臭いが絡む。
地下街に生魚が並んでいるのだ。
魚だけじゃない、あまり見ないような野菜の数々。
そして肉類も。ただしあまり日本のスーパーでは見かけない部位が、見かけないデカさで売っている。

スーパーハナマサもかなり大きな塊肉を置いているけど、
ここのは比じゃない。
なんというか、そう、スーパーマーケットな感じがないのだ。
そう、ここは市場だ。
市場が地下にある感じ。

生ものと、棚のアジア料理素材がない混ぜになり、確実に海外な感じの臭いが支配している。
階段入り口でビビッて退散した日に、
異様に感じたあの匂いは
これだったんだ。

ふと見れば、あたりは外国語ばかりが飛び交う。買いに来ているのは外国人だし、店員同士も外国人でガンガン喋っている。

その活気と匂いと合わさって
本当にアジアの市場に来たような感じがする。

まさかこんな場所が
アメ横にあるなんて。。

あとで知るのだがここは
元々、市場じゃなく、
ある海外食品の店舗がお店をひらいた事をきっかけに、
似たようなお店が集まってきて、
いつしか今のようなアジアンカオスな地下市場になったらしい。

日本でアジアの料理店を営む料理人や、故郷の味を作りたい人たちが
懐かしい本場の食材を求め、この地下へやってくるのだ。
なるほどだから、観光客じゃなくて、
住んでる風の人が多いわけだ。

そんな彼らに混ざって
お目当てのお店へ。
なるほどスパイスがズラリ並んでいる。
その唐辛子、辛そうじゃないですか!
そのシナモン、安すぎじゃないですか!
乾燥豆もかなりあるじゃないですか!
と、さっきまでのビビりは忘れて、興奮モードで物色していると、
棚の中に、白い入れ物が見えた。
あっと思って見ると、
それが悪魔の糞だった。
確かにあった。
しかも安い。
ひとつくださいとオッチャンに頼み、
無事に悪魔の糞を手に入れた。

さて、念願の悪魔の糞を手に入れたは良いがもう一つ大きな問題があった。

それが匂いだ。

この悪魔の糞はなにしろ臭い。
今はケースが未開封だから密閉されているが、それでも、、臭う。
これは強烈だ。
クセの強さで言うとドリアンのような
嫌いな人にとってはかなり地獄なフレーバーだろう。
という事は、帰宅してカレーを作る際に、悪魔の糞を開けて、
フタをしてキッチンに閉まっておいても、匂いは我が家に広がる。家の中がウンコの匂いまみれなんて困るじゃないこ。
それは是が非でも防がないと、家族からのクレームは確実だ。この年齢になってまでウンコ関係で怒られるなんて絶対ごめんだ。
という事で、100均にて瓶を買って、
悪魔の糞をケースごと密閉できる準備も整えた。

こうして大騒ぎで手にした悪魔の糞を
使う時がきた。
レシピは鉄腕DASHで、長瀬さんがインドで教わっていたものに挑戦。
下準備を済ませて調理開始。
そしてついに悪魔の糞を開ける。
グハッ!
こいつはキツい。
今までかいだことのない匂いだ。
こんな不味そうなのを入れで大丈夫なのか??
そんな思いが頭をよぎりつつ、鍋に
悪魔のウンコを投入する。
すると、粉のスパイスだからか
1分もしないうちに香りが変わる。
さっきまでの臭さはどこに?
というくらいパッと消えた。

完成品を食べる時に
こな悪魔の糞自体の味はわからないが、なにやらコクがある、独特の感じがする。

後日、同じカレーを悪魔の糞なしで作ってみたが、出来上がりの味わいが確かに違う。

悪魔の糞の力を思い知ってから
色々なカレーに入れるようになった。

これこそまさに
ぜひ探して入れてみるべき
と言わしめるスパイスだ。

やはりカレーの世界は広い。
まだまだ自分が知らない秘密がある。

以来、ますますカレーにのめり込み
研究を重ねる日々が続く。

家族にも好評なところを見ると、
ナルシスティックな満足度ではないようだ。

以前にも増して
ルーのカレーは食べなくなった。

そう、もはや昔の自分ではない。
自分の舌は、昔のカレーは受け付けないのだ。

カレーのレシピ本を買い漁り、
知らないカレーを作りまくる。

そんな中、またまた気になるキーワードを発見。

それはネパールカレーだった。

ネパールカレーという文字の目にした時、
こんな疑問が頭に浮かんだ。

ネパール、カレー???
インドカレーではなく、わざわざネパールと書いてあるからには
インドのそれとは違う!という信念があるのだろう。

何が違うの?

少し気になったので
レシピを覗いてみる。

サラダ油、鶏もも肉、玉ねぎ、トマト、ニンニク、ショウガ。
スパイスは、クミン、コリアンダー、ターメリック、ガラムマサラにレッドチリと塩。

驚いた。
いつも作ってるインドカレーと何も変わらない。
素材もスパイスも全く一緒。
目新しいものは何一つない。

それなのに、ネパールカレーと名乗るとはこれはどういうことだ?!

ますます少し気になるじゃないか。

作り方を見てみる。

玉ねぎを炒めて
鶏肉と、スパイスを炒める。
にんにく、ショウガを混ぜてトマトを入れたら終わり。

これまたいつも作るインドカレーとほぼ同じ。

んん?!

んんんん!?

どーいうことだ?

もうちょっと気になってくるじゃないか。

レシピを見る限りじゃ、何がどうネパールなのか
全くわからない。

答えを知るためには、手段は一つ。

ということで、実際に作ってみることに。

まずは素材の準備。

玉ねぎを切り、トマトは乱切りに。
にんにくと生姜も細かくする。

鍋に油を熱する。

いつものインドカレーよりは
少し量が多い気がする。
これがネパール式なのか??

熱した油で玉ねぎを炒める。
普段はアメ色を目指すが、「色づく手前でOK」とあるので
いつもより時間は少なめ。

一口大に切った鶏肉を炒める。
あとで煮込むので、表面が焼ける程度に。

そこにスパイスを投入。
カレーっぽい香りがするクミン、
爽やかなコリアンダー、
そして真っ黄色のターメリック。
ピリリと辛いレッドチリ。
さらにはいくつものスパイスがブレンドされたガラムマサラ。
どれもこれもスーパーで手に入るもので
何一つネパールっぽい要素はない。
使い量も、いつものインドカレーと変わらないので
ブレンドにも秘密は無さそうだ。

これがネパールカレーって、
どこが一体そうなんだ?!

作れば作るほど疑問は膨らむ。

スパイスが良い香りを放ってきた。
にんにくとショウガを加える。

いつもは、先に入れる気もするので
この段階で入れることに何か秘密があるのか??
という気もしない気もしなくはない。

あとはトマトを入れて、煮込む。

最後に塩で味を調整して終わり。

完成系の印象は
やはり少し油が多めな感じがするだけ。

材料も手順も、
インドカレーに対して特別違和感のある感じじゃない。

だとすると、
何がどうネパールなのか!?

もはや疑問を通り越して
残念感が湧き上がりつつある。

炊きたてのご飯にかけて、
食べてみることに。

お皿によそったカレーを見て思う。
なんだ、インドカレーと同じじゃないか・・・。
これなら、まだ作ったことがない別のインドカレーを作ればよかったなぁ・・・。

心の中でぼやきながら、軽い後悔とともに一口。

すると・・・。

違う・・・。

全然、違う。

全然、全然、違う。

全然、全然、違う、違う。

なぜだろう。

素材も調理法もほぼインドカレーなのに

味わいが全く違う。

食べたことがないものだ。

これはすごい。

と、また新しい扉を開けた感動の突入しようとした瞬間・・・

・・・!?

なんかが頭の中をよぎった。

・・・あれ?

念の為、もう一口。

・・・この味。

いや、まさかそんな筈はない。

今度はライスをやめて、ルーだけで食べる。

・・・食べたことがある。

初めてのネパールカレー。

の、筈なのに馴染みがある味だ。

何だろう、自分にネパールのDNAがあるか?

先祖にネパールの血が入っているのか?

いや、そんな話、聞いたことがない。

とすると、我が家で出ていたカレーは・・・

スーパーで売っていた確実にルーの奴だ。

母が作っていたのを見たことがあるし、

買い物に付き合った時に、目撃もしている。

そして父は料理をしないし、

スパイスカレーが出てくるような食卓でもなかった。

じゃあじゃあ、外で食べた、という可能性は?

それもない。

何しろ貧乏性で外食はあまりしない。

カレー屋さんに入った記憶は、
インドカレー屋さんに3回くらい。

いずれも本場スパイスカレーのお店だったけど、

このネパールの味じゃない。

他は、ココイチくらいだけど、

この味はココイチの味じゃない。

給食でもカレーは食べたけど、当然ネパール系の味じゃない。

じゃあ、なぜネパールに馴染みがあるのだ?

たどる。

記憶を辿る。

なぜだ。

どこだ。

どこで食べた。

それも1度や2度じゃない。

かなり食べたことがある味だ。

インドカレーと何が違うのかを知りたく作ってみたネパールカレーで
こんな展開が待っていようとは。

でも、この味の正体を知りたくて

今はもうどーしようもない。

なんで初めて作ったネパールカレーが

ものすごく馴染みがあるのか??

・・・あ。

繋がった。

これはあれだ。

カップヌードル。

カレー味。

はたと思い当たり、もう一口。

・・・。

もはやカップヌードルカレー味としか思えない。

そうだ。

あの味じゃないか。

これまで何度食べてきただろう。

一番好きなのはオリジナル味だと思いつつ、

シーフードも捨てがたいとたまに食べつつ、

ガンツんと行きたい時は迷わずカレー味。

人生で何度も食べてきた3分で美味しいあれだ。

上手い。

カップヌードルカレー味を自分で作る日が来るなんて。

ということは

日本人は知らず知らずのうちに

ネパールカレーの味に親しんでいることになる。

カップヌードルカレー味が好きな人は、

確実に、ネパールカレーも大好きだ。

だって、ほぼ同じ味だから。

てことは、商品の表記は

カップヌードル“ネパール”カレー味

ということなのだ、正確には。

日本人は知らない間にネパールカレーを食べていた。

そして知らぬ間に

日本人はネパールカレーを好きになっていたのだ。

お湯を入れて3分でネパール。

そう思って食べると、一味違う。

終わり。


#カップヌードルカレー味 、意外なあれと味が似てた件

#たぶん日本人は結構ネパールカレーが好きな根拠

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