外国語の本を原文で読むための7箇条

 以前の記事で、私は外国語で書かれた文章はできるだけオリジナルで読む−原文至上主義者である、と述べた。しかし、容易に予想がつくことだろうが、原文至上主義において理想と現実の間の溝は深い。ヘーゲルの哲学書を原文で読みたい!と思うことはすぐできるが、これを読みこなす言語力を獲得することは至難の技だ。だから、原文至上主義を貫くためには、適度の妥協が肝心である。

 さて私は、20年以上前にイタリアに留学してからずっと、原文至上主義を維持し続けている。その間、イタリア語、フランス語、英語、ドイツ語、ラテン語で、多くの本を読んできたが、それは試行錯誤の連続であった。この経験を通じて、外国語で書かれた本を読むためにはどのような心構えが必要か、少しずつ分かってきた気がする。これはあくまで自分用の指針であるが、せっかくなので7箇条にまとめて皆さんに紹介したい。

1、どれか一つの言語で読書が楽しくなるレベルの語学力を身に付ける

2、どの言語においても自分のレベルに合った文章を選ぶ

3、できるだけ短い本を選ぶ

4、好きなテーマの本を選ぶ

5、必要ならば邦訳や英訳も参照してよい

6、ウィキペディアやウェブサイトをどんどん参照する

7、読んでいる最中、手を動かす(線を引く、ページの隅を折るなど)

 大切なのは途中で嫌にならないことだ。そのためには一つ一つの目標を低く設定して、自分が頻繁に達成感を感じられるように工夫してあげると効果的である。まずは一つの言語に集中して、読んでいて「辛い」から「楽しい」になる感覚を味わってほしい。非常に不思議なことに、一つの言語でその感覚を味わうと、他のあまり身に付いていない言語でも、読書が楽しくなることがある。少なくとも私は、そうであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?