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好き嫌いで判断してしまう日本人

“今、私たちに必要なのは、自己の価値観という物差しを拡張し、目の前の物事を並べて観察しながら判断することができる能力を身につけること“


“判断する“ということを自己の主観だけで行うことは非常に困難で危険です。

前回のアートと非アートの違いって?では、日本におけるアート教育で一番欠けているのは、作品を作家の思想やコンセプト、アートの文脈と共に理解するという点だとお話しさせて頂きました。

これは何もアートに限ったことではなく、すべての物事に言える事です。


例えば、
コンビニのご飯しか食べた事がない人が、とある高級レストランで食事をしてもその価値が良くわかないなどと言った例が単純にわかりやすいかと思います。

食においても、結果として提示されるその味に至るまでは様ざなバックグラウンドがあるはずです。
食の歴史を辿り、古今東西の調理方法から、こんな食材に着目し現代にフィットする味を提供した経緯をもつレストランは数えきれないほど存在するでしょうし、それを理解した上で食すとの食さないのでは捉え方に大きな差が出てくると思います。

上記の価値観をきちんと理解しいる方は簡単に好き嫌いだけでは判断しないはずです。(もちろん個人にとって苦手な料理、味付けはあると思いますが)

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このようにアートに限らず、きちんとした物差しを得るには、その媒体ではでどんな価値観や歴史があって、どんな種類のものがどのくらい存在しているのか知ることです。
好き嫌いという主観はそれを経由して初めて判断できるものだと思います。

同時に、
好き嫌いという感情はあくまで個人の自由な思想であって、物事を客観的に判断する材料にはならないということを理解することです。

個人が何を考えて、何を思うかという事に関して、個人の主観でそれを否定したり、裁くことは決して許されたものではないということです。
世の中に差別が消えないのも同じ事です。

ここまで書くとそんなことは当たり前だと思われるかもしれませんが、それが一旦アートなどといった自身の価値観の範囲外の物事になると、判断の物差しを文脈や歴史、客観的な事実というものを省いて、狭い自己の価値観で判断してしまうことが非常に多いのです。


学びの大切さとはまさにここなのですね。


いくらテストの点が良かろうが、描写が達者だろうが上記の事項が欠落してしまうと、それは本当の学びではないのです。

学びの真の目的とは、
自己の価値観という物差しを拡張し、目の前の物事を並べて観察しながら判断することができる能力を身につけること“だと思います。

優秀であるという価値観も決して一元的なものではなく、これに付随すると思います。
テストの問題を解く力、また技術などは後からついてくるものですし、この順序を間違えてしまうと伸びしろを自ら失う事となります。

そして何より大切なことは、自身の価値観や能力は、周りの環境や、進言によって形成されていると認識する謙虚さを持つことです。

これはそもそもオリジナルというものは存在しないという事実にも繋がります。


私たちが思いついたアイディアから、普段何気なく使っている言葉、仕草まで、それらは全て生活する上で無意識に吸収してきた物事の集積の結果にしか過ぎないからです。

私たちは目から耳から口にしたものから逃れられることはできませんし、影響を受けないことはあり得ません。

アートにしても無から有を生み出すことなど不可能です。
大事なのはまずはその認識をきちんと持つことです。

絵を沢山見てインプットし、ビジュアルだけではなくそのコンテクストをしっかり学ぶ。
そこから自身が興味が持てるものを深掘りしてゆく。

ここで重要なのは深掘りしてゆく際に、自身が興味がなかった物事が実は重要であったり、後から自然と接続されていく感覚を覚えるはずです。

これに関してはスティーブジョブスのスピーチががとても有名ですね。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwij4d2Gr7LpAhVHIIgKHeqIDDwQFjABegQIAxAB&url=https%3A%2F%2Fwww.countand1.com%2F2013%2F03%2F3-ideas-for-connecting-dots.html&usg=AOvVaw3qEwq3-ExC5horXQUv2zih


参照先:画像1



これが価値観の変化であり、自身の思考、思想のアップデートとなります。

好き、嫌いだけではなく、どんな作品を見ても文脈で考察出来る様になるので、フラットなジャッジメントが下せるようになります。

そうなってくると徐々に、他者の作品のジャッジメントだけではなく、自身の作品制作の際にも、

「このモチーフと表現方法はデッサンで表現するのではなく油絵にした方が伝わるかもしれない」
といったことから、

「自身の表現に対してこの描き方ではただの描写を行っただけのものに見えるかもしれない。だからこのような文脈から、こんなデフォルメを加えてみよう。そしてこれにはどんなコンセプトで語れば納得性を得られるだろうか?」

などといった一元的ではない思考プログラムが自然と形成されるはずです。


もちろん創り手以外にもその能力は必要不可欠です。

みんなが良いと言っているからなんとなくゴッホの展覧会に並ぶ、売れている書籍をとりあえず購入するといった惰性的行動も無くなるでしょう。

まずはこの一連の流れを見直すこと。
そうすれば自ずと確かな観察眼は養えるはずです。


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