【Patrick Mojii】「Phantom Joke」 を振り返るとライブに行きたくならないか?


はじめに

この度Patrick Vegeeリリース2周年を記念した「Patrick Mojii」に参加させていただきましたkosukeと申します。

ここまでの曲を担当された皆様はそれぞれ独創性に富んだ曲に対する考察を綴られていましたがここでは趣向を変えてライブと曲の関係について深掘りして書いてみようと思います。過去に参加されたライブの思い出を振り返りながら読んでいただくとより一層楽しめるかなと思っています。

時間がない方は最後だけでも目を通していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。

「Phantom Joke」を振り返る

リリース前からリリース後にかけて

UNISON SQUARE GARDENの16枚目のシングルとして15周年の最後の目玉的にリリースが発表されたが発表当初はカップリングのタイトルのみが先行公開され本命のA面曲のタイトルはしばらく発表されず発表後も記憶が正しければ特にティザースポットでの公開はなし。初めて聴いたのはアニメのオープニングだったはず。一聴した感想は「とにかくはええロック」。速くて高いっていうなんか競技してるのか?と思ってしまうくらい猛烈な曲だと初めて聴いた時も思ったし今でも思う。
イントロとサビ前のギターがアニメの雰囲気にものすごくマッチしてて素敵だなと思ったのも覚えている。

ライブ初披露〜

この曲がリリースされた当時バンドは15周年のアニバーサリーイヤー後半、カップリング曲のみで全国ツアーを回っていたので(変なバンド)Phantom Jokeがお披露目されるのはしばらく後のことになる。

ツアーが終わりPhantom Joke初披露の機会がついにやってくる。初披露はBee Side Sea Side Que sideという下北沢CLUB Queの20周年を記念したライブだったのだがこのライブはキャパが非常に小さかったこと、またこの後フォーリミとの対バン、メロディックスフェスで計3回ライブで披露されているのだがいずれもユニゾンの自主企画ではないのでユニゾンの自主企画で見たいファンがきちんと見ることができたライブという意味でPhantom Jokeの初披露は2020年7月15日、Live (in the) HOUSEだった。このライブは事前に行った全楽曲を対象とした人気投票の結果をもとに上位20位以内にランクインした曲でセットリストを組んだライブだった。この投票においてPhantom Jokeは1位。やはり早くライブで観たいというファンの気持ちが投票結果に反映されたのだろう。
ライブができない世の中になってしまいツアーも飛びアルバムのリリース時期やアルバムツアーの日程も変更を余儀なくされた中初めての配信でのライブに加えて恐らく二度とやらないであろう人気投票結果をもとにセットリストを組むという貴重な機会に多くのファンが高揚感を胸に各々家なりその他の場所で画面を見つめていた。

しかし大きなアクシデントがこのライブでは起こってしまった。斎藤さんの高音が過去にないほど出なかったのだ。もちろん斎藤さんも人間なので日毎に調子の良し悪しはいくらでもあるだろうし調子が悪い時にそれを誤魔化す術もキャリアの中で身につけているはずだがそれでどうこうなるレベルではなく出てなかった。実はPatrick Vegeeにはこのライブの映像とプラスで4曲この日に撮影されたライブ映像が収録されているのだがこの4曲はライブ本編の前に撮影されておりトラブルにより先に撮る4曲とライブ本編の間に十分な時間を取れなくなってしまったため本編で声が出なくなってしまったという経緯があった。しかしリアルタイムで配信を見ている側はそんなこと知らないため序盤から高音を出す時に苦しそうな姿を見て不安になった人も多いのではないだろうか。実際ライブが始まって数分後に異変に気づいた田淵ママが心配でLINEしてたなんて裏話も。

そしてこの時点で勘のいいファンは気づいたかもしれない。「いや、この後絶対Phantom Jokeあるけどどうすんの、、、」
この予感は的中しこの日のPhantom Jokeは正直観てて「あっ辛そう」と思ってしまった。とにかくサビのラストを歌うのが辛そうでサビ歌い切っても鬼のギターソロが待ってるみたいな中でそれでも一曲歌い切る斎藤さんのプロ根性はすごいなと思うと同時に斎藤さんのキャリアと技術を持ってしてもどうにもならない日ってあるんだなとも思った。

そして1ヶ月後、Live (in the) HOUSE2が実施される。一回目のコンセプトとしてはいつも通りのライブ+配信ならではのカメラワークだったり演出を足すって感じだったのが2ではさらに配信色が強いライブになっていた。また1では投票ランキング1~30位(実質20位)以内からセットリストが組まれたのに対し2では31位~70位の曲を中心にセットリストが組まれたがこの日はおまけという形でPhantom Jokeが演奏された。この演出にはバンドとして、そしてギターボーカル斎藤宏介の意地のようなものをひしひしと感じた。1のMCでも声が出なかったことに触れそこでも「リベンジしたい」ということを喋ってはいたがまさかここでもう一度Phantom Jokeを演奏すると予想していたファンは少なかったんじゃないだろうか。

ツアーLive (on the) SEAT,Normalを経て

2020年のUNISON SQUARE GARDENは3本の配信ライブを終えた後再びツアーに繰り出す。コロナ禍で一番初めのツアーはLive (on the) SEATという着席でのライブとなった。またこのライブは換気等の関係もあり普段の21曲のセットリストではなく12曲のセットリストで最も異質な点が日によって一会場で同日に二公演ある場合があるということだった。そしてこのツアーではPhantom Jokeは9曲目に夏影テールライトに続く形で演奏されライブが終盤にかけて盛り上がりを増していく中での起爆剤的な役割として完璧な一曲だった。

過去3回の配信ライブと比べても演奏のクオリティは確実に上がっており改めてUNISON SQUARE GARDENはライブのたびに進化する化け物じみたバンドだなというのを実感したのをとてもよく覚えている。
そしてもう一つ印象的だったのがこのツアーに関するFC会報誌でのインタビューにて貴雄さんが「Phantom Jokeは今のユニゾンにとってバンドの状態を知るリトマス試験紙的な曲」と表現したことだった。この曲でメンバーの状態を見てこの曲がいけそうだったら大丈夫、メンバーが苦しそうだったら多少テンポを落とすというようなことを言っていたのでやはり涼しい顔をして演奏しているように見えても結構キャパシティの限界を攻めている曲なんだなということを感じた。Patrick Vegeeのコンセプトの人力で3人の限界に挑むというテーマにはあっているのかもしれないが。

無事Live (on the) SEATを完走し年末を配信ライブで締め括ったバンドは年明けにツアーNormalを敢行することを発表する。このツアーはタイトルの通りいつも通りのライブをするというテーマのツアーだったがまだPhantom Jokeのリリースツアーを行なっていなかったためサブタイトル的にPhantom Jokeリリースツアーそして裏テーマとしてJET CO.の曲をやるというこれまたユニゾンらしい遊び心の詰まったライブだったのだがこのツアーにおいてのPhantom Jokeの立ち位置は一曲目という個人的にはなかなか意外な立ち位置だった。

しかし意外性と同時にとても腑に落ちた部分も多くあった。通常シングルのリリースツアーといえばその曲をセットリストの一番美味しいところ、本編のラストブロックに持ってくるのが通例である。しかし過去の配信ライブ及びLive (on the) SEATでPhantom Jokeは比較的セットリスト後方の美味しいゾーンに持って来られることが多かった。となるとまた違った輝きを見せるにはどこに持ってくるのがいいのかと考えた時一曲目はやはり注目を集めるポジションである。またこれに加えて一曲目に演奏的にも山場になる曲を持ってきてしまうという意図が実際にあったのかはわからないが個人的にはそのような狙いもあるのではないかと思った。

Tour Patrick Vegee

Patrick Vegeeのリリースから約1年が経ちようやくこのアルバムに焦点を当てた全国ツアーがスタートする。このセットリストにおいてPhantom Jokeはこれまでのライブのどれとも違った輝きを見せる。 立ち位置としては13曲目。ワンマンツアーのセットリストの流れとして4曲+4曲+5曲+5曲+En3曲という曲のブロックわけはおなじみだがそのうち3ブロック目のラストをPhantom Jokeが務めた。摂食ビジランテ、夜が揺れているで混沌とした空気感を生み出しそこに夏影テールライトとオーケストラを観にいこうの清純な雰囲気をぶつけそれを全てPhantom Jokeでぶっ壊す。Patrick Vegeeの「なんかグチャッとしてんだよな」というキャッチコピーを象徴するかのようなライブにおけるカオスさとその中にある不思議なつながりに中核を担った曲がPhantom Jokeだった。

で結局何が言いたいの?

ここまでPhantom Joke × ライブという観点で振り返ってみたがこのPhantom Jokeという楽曲はタイミング的にもコロナ禍前でのリリースでライブで披露されるようになったのはコロナ禍になってからという物語がある分各々で思い出があるというファンも多いのではないだろうか。

「退屈の理由は思考停止のEvidence」

この歌詞を体現するかのように自由に活動することが許されなくなった世界においてそれを嘆くわけではなくできる範囲で最大限に楽しいことをロックバンドは追い求め続けた。
Phantom Jokeにだけ絞ってもほんの1、2年でこれだけの進化を我々に見せてきた。

「正体不明の引力が常識を無に返す引き金を引いてしまうから」

ステージ上で彼らは我々を日常から非日常へ引き摺り込むような不思議な力を放つ。その空間では決まり事やお約束など存在しない。
もしこの文を読んでくれた人の中でまだワンマンライブに行ったことがない人や尻込みしている人がいたらぜひライブに行って欲しい。そこには必ず驚きと感動があるはずだ。

家で音楽聴くのも悪くないしフェスもイベントとしてとても楽しい。しかしワンマンライブにはそこにしかない不思議な魔法がある。とにかくライブは観に行った方がいい。

終わりに

個人的な趣向の問題になるのですが僕は歌詞の裏を読む的な考察をあまりしない+することはあれどそのような観点で自分より豊かな文を書く人はいくらでもいるということで「ライブ」にフォーカスして文を書いてみました。

歌詞の一節、タイアップ先の作品との関わり、助詞の使い方一つにまで注目して楽曲を食べ尽くす。こういう楽しみ方も大ありだしはたまた聴いてるだけで楽しい、ここのフレーズノリよくて口ずさみたくなるなぁ、ライブのでかい音最高みたいな楽しみ方も十分素敵じゃないですか。


混沌の中でもこの世界は生き続ける。

「だからこの空の先を見たい」


今回素晴らしい企画を動かしてくださったナツさん(@unfinisheddaisy)、そしてこの企画に関わった全ての皆様、見てくださった方々、本当にありがとうございます!!



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