grasshopper構造解析ー最適化手法の事例と概要
建築分野における構造最適化について、実例を交えて説明します。
※この記事はシリーズになっておりますので、初めての方は下の記事をご覧ください。
構造最適化の実例
「カタール国際コンベンションセンター(2011)」と言う建築をご存知でしょうか?
設計:磯崎新 構造:佐々木睦朗の、構造最適化が施された建築です。
樹木のように伸びた柱は、全ての断面で応力度がほぼ均等になるように形状最適化が施されています。
これによって、たった二箇所だけが地面と接しているだけで、250mものスパンを飛ばすことができています。
単に水平垂直な部材だけでは、このような架構を実現することは非常に難しいことです。
しかし、最適化手法を用いることで、構造を成立させただけでなく、構造体がランドマークへと昇華するだけの独自性を併せ持つことができてます。
構造最適化問題の定義
構造最適化は、どんな設計にも取り入れられている技術です。
設計の際、最適化を用いて何を解決するかを「構造最適化問題」と言います。
一般化して言うと
与えられた制約のもとで、変数を調整し、目的を最小または最大化すること
を最適化というのです。
言葉にすると難しいのですが、意外と身近に最適化手法は使われています。
・壊れない範囲で、階高を大きくするために、梁せいを抑える
・壊れない範囲で、コストを減らすために、トラス部材を減らす
・壊れない範囲で、軽くするために、面材の中央をくり抜く…
こんなことも全て最適化になります。
先程の言葉に合わせて「梁せいを抑える」例を解説すると
目的→階高を大きくする。
変数→梁せい
制約→壊れない範囲(外力による応力度が、許容応力度を下回る範囲)
となります。
階高を小さくするため、梁せいを最小化していきます。
このままだと梁せい0が最小となるのですが、ここで制約として「壊れない」とすることで、構造的に成り立ちつつ、階高を最大化することが可能となるのです。
最適化に用いる手法
先程のセクションで、最適化問題の設定についてお伝えしました。では、この問題をどうやって解くのでしょうか?
ここでは、その解決方法を「最適化手法」としてご紹介します。
最適化に用いる手法は多岐にわたります。
極端に言えば、模型を用いて逆懸垂曲面を求め、曲げ応力を最小化することも最適化手法の1つだったりします。
その中でも私の記事の中では、コンピュータを用いた手法を中心に紹介いたします。
最適化問題は、変数によって目的変数が変化する関数として捉えることができます。
目的関数が最小となる変数を探すために、さまざまな最適化手法が考えられてきました。
その手法は下記のようにまとめられます。
このように、さまざまな手法があるのですが、結構ややこしい部分なので、細かい解説は以下の記事からご確認ください。
構造最適化の種類
構造最適化には、大きく分けて三種類の手法があります。
寸法最適化
断面の最適化です。
梁せいを抑えたり、柱幅を抑えたり。
材料の重量(コスト)が目的となることが多いです。
トポロジー最適化
ある面やソリッド、トラスグリッドなどから、応力が小さい箇所を削除していく手法です。
外形は変えず、穴を開けるように形状を変化させていきます。
上の画像のように、トラスが生まれた流れもトポロジー最適化の1つだと言えます。
形状最適化
そもそもの部材接点から変化する手法です。
これを用いると、構造体の外径が大きく変化していきます。
カタールコンベンションセンターが良い例です。
上のgif画像は、最適化の流れを示しています。最初は直線材なのですが、だんだんと外径が大きく変化していき、応力が均一になるように調整されていきます。
まとめ
構造最適化の概要についてご説明しました。
一度で理解することは難しいと思うので、これから色々と試しながら理解していきましょう。