いつかは来る、その日のために。【スタッフ向け防災訓練実施レポ】
今後30年間に70%の確率で起きると言われている首都直下地震。最近小さな地震が来ることも多く、いつ大地震がきてもおかしくない状況です。直近の能登半島地震では、銭湯が崩れて入浴中の方が亡くなっています。
いつかは来るその日にお客様とスタッフの命を守るため、備えるべきことはなんだろう?そんなことを小杉湯スタッフと一緒に考える防災訓練を4月27日に行いました。今回はその内容をレポートさせていただきます!いつか防災訓練しなきゃなぁ…と思っている事業者の方、小杉湯にいつもお越しいただいているお客様のご参考になりますと幸いです。
防災訓練の内容
このような防災に関する実践的なスタッフ向け講習を行うのは小杉湯初!ということで、目標を大地震が起きても焦らずに対応できる第一歩を踏み出す🚶♀️ことにしました。ゴールは①被災時の基本がわかる②発災時の動きをシミュレーションし、よりよい方法を考える です。
①防災時の基本がわかる
銭湯で防災って必要?
まず最初に、小杉湯という場における防災の重要性について正社員から話しました。小杉湯には安全な避難を難しくする要因が沢山存在します。
1.耐震性
小杉湯は築90年以上。次回の中普請(大規模な修繕工事)で耐震機能の強化を予定していますが、現状十分ではありません。大きな地震が起きた際、建物全体の崩壊・損壊による被害が起こる可能性があります。
2.立地
首都直下地震が来た場合、高円寺は震度6強という大きな揺れを観測することが予想されています。
小杉湯のある高円寺北三丁目は火災危険度も総合危険度も、最も高い5となっています。戦後すぐに「闇市」が作られた名残で建物が密集する、楽しい商店街。火がすぐに燃え移ってしまうこと、道幅が狭く救護が入りにくいこと、避難がしにくいことなどから危険度が高くなってしまっているのです。
↑皆さんも、ご自身の地域の危険度を調べてみてください!
3.裸の状態での被災
「すぐにげる」「もどらない」ことは避難の基本と言われる中、入浴時だとすぐさま避難することが難しくなります。後述の避難訓練では、いかに裸の状態から素早く避難するかということをスタッフとシミュレーションしました。
4.避難する方の年齢
赤ちゃんから足の悪いお年寄りまで幅広い年齢層の方がいらっしゃる銭湯。すべての方が足元の悪い場所を動けるわけではありません。
小杉湯の基本姿勢
「災害発生直後に当該施設でやるべきことはなにか」「自分たちの施設になにができて、なにができないのか」この2つを考えることで、防災訓練はぐっと手が付けやすくなると思います。
小杉湯では、
・まずはスタッフ自身の安全確保を行うこと
・揺れの中、怪我を最低限に抑えるための指示を出すこと
・建物の外壁、内壁、瓦などの状態を確認すること
・周りの状況を見て判断し、避難できそうなときは、避難所までお客様を誘導すること
を目標にしています。
小杉湯では、地震が落ち着いて安全が確認され次第入浴の提供や地下水の提供を行うことを想定していますが、緊急時の避難所として使われることはありません。付近では馬橋公園、またはイマジナスが避難所に設定されているため、お客様は緊急時、スタッフと一緒にそちらに向かっていただけると幸いです。
ここで突然の停電!
「地震です!地震です!」「しゃがんで、頭をまもってくださーい!」「揺れが収まりました!今から避難していきます!!」訳がわからないまま真っ暗な浴室内を移動し、外に避難してもらいました。一部のスタッフが企画した小芝居でしたが(笑)、突然あたりが真っ暗になるお客様の不安と心細さは感じてもらえたかなと思います。
②発災時の動きをシミュレーション
次に、発災時の動きを確かめた上で番台番頭スタッフ役・お客さん役に分かれて再シミュレーションを行いました。
上記を見ていただいて分かる通り、やることが本当に多い!スタッフ自身混乱している中でも、生き延びるため絶対忘れてはいけない仕事は2つです。
1つめは、頭を守るよう指示をだすこと。ケロリンの桶や荷物入れの籠をかぶってもらえるように、繰り返し繰り返し大きな声で指示を出すことが大事です。姿勢を低く保つことも大切ですが、強い揺れが生じるとそもそも立つことができなくなります。余裕があれば、窓に近い浴室や脱衣所のはしっこや、冷蔵庫の横から離れることを指示できるとなおよいでしょう。
お客様におかれましても、揺れが発生した際は落ち着いて、まずは近くにあるもので頭を守ることを最優先してください。
2つめは、揺れが収まり次第速やかに懐中電灯を用いて、避難所へのお客様の誘導を行うこと。小杉湯では番台内、男女脱衣所の棚の中、裏の事務所に4つの懐中電灯を設置し、その場所をスタッフ全員が把握していることが大事です。
スタッフの気づき
避難訓練終了後は、シミュレーションを終えての懸念点と改善点を発表し合いました。
特に自分の靴、洋服、荷物が無い状態で避難していただくことの不安が多く上がりました。小杉湯では現在重大な災害の際はバスタオルをお配りし避難してもらうことを予定している一方、災害の程度や種類、ロッカーの崩壊状況等によって柔軟に対応する必要があります。防災着を備蓄するべきか、ロッカーから服を取り出す場合はどんな指示が求められるかなど、実際に入浴してみての研修を重ねながら対応を修正していけたらと思っております。
発災後の小杉湯の建物の状態についても懸念があがりました。耐震の努力はしながらも、やはり「最悪のケース」を想定した脳内でのシミュレーションを行いながら普段の業務を行うことも大切なようです。
年齢の多様性に加え、病気の方、怪我をされている方などたくさんの状況の方がいらっしゃる。その上たくさんの業務をこなさなければならない… 全てのお客様を個別でサポートすることは難しく、動けるお客様に助けてもらうこと、そしてそのための指示を率先して行っていくことの重要性も確認しました。
その後、避難所であるイマジナスまでの経路を確認するためスタッフみんなでお散歩し、そのまま飲み会会場へと向かいました🍺 電波の悪い中マップを見らずに避難所までたどり着くこと、いざというとき阿吽の呼吸で連帯できるようにスタッフの仲を深めることもとっても大事です☺
これからの小杉湯と防災
6月中旬にはAEDの使い方研修も行い、その後も継続的に体調不良者対応、消火器の使い方などを学ぶ予定です。また、お客さんを交えての研修を行っている銭湯さんを見習って、発災時に入浴している可能性の高い常連さんと一緒に研修を行ってみたいと考えております。
「完璧」な備えはありません。しかしながら繰り返し繰り返し訓練を行うことこそが、「いつか」が来た時の自然な対応につながると信じています。以上!「第一回」小杉湯防災訓練のレポートでした♨️これから小杉湯とそのの周辺の人々の中に、防災意識が強く根付いていく様子を見守ってくださいますと幸いです!