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武士の一分
こんにちは😃コッシーと申します。
愛知県で介護事業を運営している会社の介護事業部の統括責任者をしております。
さて、2006年に上映された『武士の一分』という映画をご存知でしょうか。
幕末時代、木村拓哉さん演じる藩主の毒見役がつぶ貝の毒に当たり失明してしまいます。それが原因で毒見役から外されてしまいますが、それでも献身的な妻に支えられ武士としての誇りを持って生きていくというお話だったと思います(間違ってたらごめん!)。
実は入居施設にも検食係という同じような役割があります。
もちろん毒見役ではなく、利用者に提供している給食を食し、味や固さなどを確認し厨房に報告する役割です。
うちの入居施設にも検食係は存在しており、決まった職員が行うのではなく、持ち回りで順番にやるようにしています。
やはり味というのはどうしても個人の好き嫌いが出てしまい、特定の職員だけが行うと偏ってしまうためそのようなカタチを取っております。
もちろん僕も検食を行っていました。いました?そう過去形なのです。
今は僕は検食を行っておりません。あの忌まわしい事件が起きるまでは…
あれは僕が入居施設の管理者に就任したての頃の出来事でした。
あるスタッフから「検食されますか?」と声をかけられました。
管理者をやるからには施設の全てを把握すべきと思っていた僕は検食係のローテーションに入れてもらい、時折施設の食事を食べては、検食簿に記録していました。
検食をしてみて初めて分かったんですが、うちの施設の食事って・・・
めちゃくちゃ美味しい!!
検食係を何回もやったのですが、本当に毎回美味しくて僕の検食簿のコメントには「今日も美味しかったです。ありがとう。」というお礼が並ぶだけになりました。
そんなある日のこと。
検食した1人のスタッフからこんな意見が出ました。
「Sさんが作るみそ汁がしょっぱい気がする」
しょっぱいという事は塩分が強いかもしれません。塩分の取り過ぎには注意しなければいけない利用者もいます。
ただもしかするとそのスタッフの好みの問題かもしれません。
僕の検食履歴を調べてSさんの食事を食べたか確認すると、3回も食べており、いずれも「美味しい」というコメントを残していました。
念のためSさんが食事を作る時に再度検食をさせてもらいましたが、問題のみそ汁は普通に美味しく、特にしょっぱさは感じませんでした。
そのスタッフには少し様子を見ましょうと伝え、とりあえずSさんには何も言わらずそのままの味で食事の提供を続ける事にしました。
しかし、数日後Sさんのみそ汁を飲んだ別のスタッフから「しょっぱい」という意見が上がりました。
別の2人が同じ意見を述べてるということはもしかすると好みの問題ではないかもしれないと思い、僕も含めてその日出勤している全スタッフでSさんのみそ汁を検食しました。
確か人数にすると6人くらいだったと思います。検食の結果は、
美味しい:1人
しょっぱい:5人
という見事に僕以外全員しょっぱいという結果になりました!
僕のみそ汁の好みがしょっぱい寄りだったのかということになり、それならばみそ汁を改善しないといけないね、と話をしました。
するとあるスタッフがこんな事を言い出しました。
「そういえば気になっていた事があって、あのコッシーさんが先日食べたあんかけですけど、あれ利用者からめちゃくちゃ不評だったんです。でもコッシーさんは美味しいってコメントされてました。」
そのあんかけは鮮明に覚えていました。あんかけを焼き鮭にかけた料理で特にまずかったという印象はありませんでした。
「ああ、それも僕の好みの問題かな」と言うと、スタッフから、
「いや…気に障ったらすみませんが、もしかするとコッシーさんって味音痴じゃありません?」
と言われました。その言葉を待っていたとばかり他のスタッフも「私もそう思ってた!」「実は私も!」「うん、そうじゃないかと」「間違いないよね!」「味音痴だよ!」「そうだ!そうだ!」という意見がどんどん出てきました。
これがきっかけで、何を食べても美味しいと言ってしまう僕は検食の意味がないということで、映画のキムタクと同じように検食係から外されました。
ただ検食係から外されても僕は介護者です。
介護者の誇りをもって献身的な妻に支えられ利用者と接していく、これが『介護者としての一分』ではないでしょうか。
っていう話を妻にしたところ、「あんた前からバカ舌だったよ(笑)」と言われてしまい、献身的に支えられる事はありませんでした(泣)
現場からは以上です。それではまた。
コッシー
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