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よかったこと

長くなりますが、お時間ある時にでもお読みいただけると幸いです。

こんにちは、コッシーです。


さて、介護に携わるお仕事をしていると、様々な理由から利用者の状態が変化される時があります。怪我や病気などといった突発的なことから、年齢からくる衰えのように徐々に変化していくこともあります。

変化の具合によっては、今まで受けていた介護サービスでは利用者を支援していくのに不十分な場合があります。そんな時はケアマネージャーが中心となり家族や関係する事業所などで話し合い、今の状態に相応しい介護サービスへの変更をしたりします。

ただそういうケースで問題となるのが、『介護保険の支給限度基準額』です。

この『支給限度基準額』というのは、介護保険サービスの利用限度額のことで、簡単に言うと「ここまでの金額しか国は補助しないので、超えちゃった分は自分で出してね」ってことです。#簡単に言えてる?

支給限度基準額は介護度によって決められており、介護度に比例して基準額も高くなります。つまり要介護1よりも要介護5の方が介護保険サービスを多く利用できることになります。

これの何が問題なのかというと、例えば要介護1の利用者が状態の変化などで今までの介護サービスを見直したとします。すると見直した内容によっては要介護1の基準額の範囲内で納まらない場合があります。そのままの介護度でサービスを利用したとしたら、基準額を超えた分は全額自己負担になってしまいます。場合によってはウン万円も負担する必要が出てきてしまいます。

それを防ぐ手立てとして『介護保険認定の区分変更』という方法があります。

区分変更を市町村の介護保険課へ申請し役所の方が利用者を調査します。調査内容によって現状に相応しい介護度が改めて認定されることになります。

要介護1だった方が要介護3になることもあればそのまま変わらないケースもあります。それはもう介護保険課がどう判断するかで決まります。

長々と説明いたしましたが、要するに利用者の状態の変化等によって介護度は変更できる(かも)ってことです。#一文で終わるのかよ

そしてここからが今日の本題になります。#前置きに1000文字費やす男


うちの入居者でHさんという90代男性の方がみえます。

Hさんは6月頃に腰椎骨折のために入院されました。骨折の方は順調に回復をしていき8月半ばに退院されてきました。

しかし、入院中腰の痛みがかなり強く思うようにリハビリが出来ず寝たきりの状態が続いていたとのことでした。さらに認知の面でも進行されたとのことで、入院前は歩行もトイレもご自身で出来ておりましたが、退院されてきた時には車椅子や排泄も介助が必要な状態でした。

入院前の介護サービスよりもかなり手厚くなることが予想されました。そのためもともとは要介護1でしたが入院中に区分変更を申請しました。

新たなケアプランでは要介護4を想定しており、仮に要介護4でも基準額ギリギリに納まるか納まらないかくらいになるようでした。

もし要介護3以下であればそこそこな自己負担が出てしまうため、出来ればそれは避けたいとケアマネや僕らは思っていました。

退院後、ほどなくして市の調査員がみえました。多少の誇張表現はあるかもしれませんがウソはつけません。正直に現状のHさんのありのままを報告しました。

一通り調査が終わり調査員の方は帰っていきました。あとは結果を待つのみですが、その結果次第でご家族にかかる負担が全然変わってきます。

いくら必要なサービスとは言っても家族に負担を強いるのはやっぱり心苦しく感じるため、僕らは祈るような気持ちで結果を待ちました。


調査から2週間ほど経った頃でしょうか、市役所から通知が届きました。すぐに開封し通知書を確認しました。


【要介護4】でした。


この結果にケアマネもうちのスタッフ達もそして僕もホッと胸をなで下ろしました。

すぐに息子さんに連絡を入れました。

「Hさんの変更申請の結果が出ました!要介護4です!よかったですね!」

そう息子さんに伝えました。この結果により適切な介護サービスを負担少なく受けることができる、きっと息子さんも安心したに違いないと思い込んでいました。

息子さんからの第一声は、「そうですか…要介護4でしたか…」ととても寂しそうな声でした。

そのすぐ後には「いや本当に良かったです!これで負担が少なくて済みます。安心しました!」と明るい声で言われていました。


息子さんの寂しそうな声にハッと僕は気付かされました。

ある程度は割り切ってはいますが、きっと息子さんは元気だった父親が要介護4という重度の要介護者になってしまったことに悲しんでいるのだと思います。


僕らが行っている介護保険サービスは、利用者が少しでもよりよい生活を送れるように支援しています。

介護従事者の誰もが利用者のため家族のためという気持ちを持って従事していることかと思います。

もちろん僕もうちのスタッフもその気持ちを持っていますしその気持ちにウソはありません。

ただ利用される方またはそのご家族は介護保険サービスを心から望んで利用されている方はいないと思います。

出来る事なら介護保険サービスなんて利用せず自分たちだけで生活できるのが1番に決まっています。

自分で歩き、自分でご飯を食べ、自分でトイレに行く。そんな当たり前の生活を送りたいに決まっています。

しかし歳を重ね状態が悪化し自分たちだけでは生活をすることが難しくなり、仕方なく僕らのような介護事業者に依頼をするのだと思います。


ここである記事をご紹介させていただきます。

ノー友である真咲さんが書かれたこの記事です。

詳しくは記事を読んでいただきたいですが、僕はこの記事を読んだ時自分の考えを改めました。

「入居に空きが出ました!よかったですね!」

「デイサービス利用できます!よかったですね!」

「要介護4でした!よかったですね!」

あまり深く考えず、ついこの言葉を言ってしまうことがあります。でも本人や家族にとっては決してよかったことではないのです。

この気持ちを忘れないように支援に当たろうと思っていました。思っていたはずでした。でも今回の件では何も考えず息子さんに「よかったですね!」と言ってしまいました。

要介護4になり負担が少なく手厚い介護サービスを受けられる方が良いことは分かりますが、僕らはそれを「よかったこと」として捉えるのではなく、きちんと本人や家族の気持ちに寄り添うことが大切だと改めて思いました。


この先もたくさんの利用者に出会うと思いますが、この気持ちを忘れず支援していきたいと再び心に誓いました。


長くなりましたが最後まで読んでいただきありがとうございました。


現場からは以上です。それではまた。

コッシー





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