【コぐるみ創作バトル!】ぶどうパンは好きじゃない~前編~
【コぐるみ創作バトル!】第三弾の今回はピリカさんからいただいた『ぶどうパンは好きじゃない』です。
今回は着ぐるみのイラストからスタートしました。
これはなかなかメッセージ性の強いイラストだと思います。ここからがコッシーのターンです。このイラストを元に物語の前編を書きます。
それではどうぞ。
🥖🥖🥖🥖🥖🥖🥖
(ああ、またこのパンか……)
私は目の前の”ぶどうパン”を見て心の中で大きなため息をついた。おばあちゃんの家に行くといつも決まって出てくるパン、それがぶどうパンだった。妹たちは喜んで食べてるけど、私はぶどうパンに入っているレーズンの味も食感も好きじゃなかった。食べられないくらい嫌いなわけではじゃないし、ぶどうパンの1個くらいなら無理すれば食べられた。けれどママが働き始めてからおばあちゃんの家に行くことが多くなった。その度に出てくるぶどうパン。おばあちゃんは優しくて大好きだった。私たちをいつも笑顔で迎えてくれる。でも……毎回出てくるぶどうパンはやっぱり好きになれなかった。
きっと最初がいけなかったんだ。おばあちゃんが初めて私たちにぶどうパンを出した日、初めて見るぶどうパンに私は食べる前から苦手なパンだとなんとなく思った。案の定口に含んだ瞬間に食感が気持ち悪かった。レーズンも全然美味しくなかった。噛む度に嫌な気持ちになった。妹たちは口を揃えて「美味しい!」って目をキラキラさせてた。私も空気を読んで「美味しいよ」とおばあちゃんに伝えた。そんな私たちにおばあちゃんは「そうか!そうか!美味しいか!おばあちゃん嬉しいよ」と言ってとっても喜んでいた。
それから私たちがおばあちゃん家に行く度にぶどうパンが出てくるようになった。こんなことならあの日「美味しいよ」なんて言うんじゃなかったな。私のバカ……
そして今日もやっぱり出てきたぶどうパン。正直、もうウンザリだった。パンの端を千切ってみたがどうしても食べる気にならなかった。
「お姉ちゃん、食べないのー?」
妹たちは呑気にパンを頬張りながらなかなか食べださない私を不思議そうに覗く。
「どこか具合でも悪いのかい?」
おばあちゃんが心配そうな顔を私に向けた。優しいおばあちゃんのことだから本当に私を心配してくれていたんだろう。でも毎回無理してぶどうパンを食べていた私は何も知らずに平然とぶどうパンを出すおばあちゃんに対して強い怒りを覚えた。
「…おばあちゃんのせいだ」
「え?」
「おばあちゃんがぶどうパンばっかり出すからだよ!」
「しーちゃん美味しいって言ってたから好きだと思って」
「ホントはぶどうパンなんて好きじゃない!ぶどうパンばっかり出すおばあちゃんも好きじゃない!!」
私の大声にパンを食べていた妹たちの手が止まる。おばあちゃんは悲しい表情を浮かべて「ごめんねぇ」と囁くように言った。
違う、おばあちゃんは悪くない。そんなことは分かっていた。ごめん、おばあちゃん。ごめん…ごめん…
そこでハッと目が覚める。一つ息を吐いて枕元のスマートフォンを手に取り時刻を確認した。
「またこの夢か……」
そう呟いて私は目尻の涙を拭った。そして脳裏に焼き付いているおばあちゃんの寂しそうな顔を消すように被りを振るのだった。
後編へ続く
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