見出し画像

USELESS MEMORANDUM YSL(for men)Before Hedi Slimane前編

今回取り上げるブランドは
Yves Saint Laurent。

タイトルの通り
Hedi Slimane就任(最初の就任である1997年)以前のメンズラインを
可能な限り解き明かしていきたいと思います。

前回の記事のテーマとなった
Christian Dior Monsieurと同様に
ライセンスビジネスと深く関わっていた
当時のYves Saint laurent。

此方もそれ故か世間から軽視され
全くと言っていい程、まとまった情報が存在しません。

実際、本noteの調査に際しては
Christian Dior Monsieur以上に資料に乏しく…
掻き集めた一次資料、海外の新聞記事等に
残された小さな手掛かりをひとつひとつ
パズルのピースの様に当て嵌めながら
仮説生成、仮説検証を行い執筆いたしました。

今回も
多くの方にとっては役立ちそうにありませんが…
偉大なるメゾン
Yves Saint Laurentの歴史に埋もれた一面を
知っていただけたらと存じます。


〜メンズラインの創設からライセンス展開へ〜

Yves Saint Laurentのメンズラインには
プレタポルテ(コレクション)ラインと
ライセンスラインが存在しました。

まずメゾン本体は1961年
オートクチュールサロンとして創設。

オートクチュールラインのタグ
1963年 SSシーズン

プレタポルテライン「rive gauche」は
レディースが1966年
メンズが1969年にスタートしました。
メンズのrive gaucheもデザイナーは勿論
レディース同様Yves Saint Laurentその人です。

rive gauche
メンズのファーストコレクション
1969年AWのアイテムを自ら着用する
Yves Saint Laurent

そしてこれは意外な程言及されていませんが
プレタポルテライン発足時の
ショップ及びブランド名は
「SAINT LAURENT rive gauche」でした。
「Yves」が付かない理由は
当初、オートクチュールライン
「Yves Saint Laurent」との差別化をする為だったと考えられます。
下記画像のスペルに御注目下さい。

rive gauche
1970年代のパリのショップ
rive gauche メンズ
1970年代イギリスでの広告
1978年 rive gauche
アメリカの広告
初期のrive gaucheのタグ

その後ブランド名が
「Yves Saint Laurent rive gauche」へ
変更されたのは1989年だった様です。
(恐らく1989-1990AWから)

1989年以降のrive gaucheのタグ

一方メンズラインのライセンス事業も
1970年代に世界で展開されていきます。

このライセンスラインには
様々なブランド名が存在し
年代やポジション等の
特定が非常に困難でした。
(同じブランド名でも展開国や年代によってターゲットや価格帯が変わった可能性もあるので)
極力
確度が上げられる様に善処しましたが
あくまで私見の域を出ない事を御了承下さい。
以下では主なラインをあげています。

まず1970年代初期から後半と思しき
オレンジタグのYves Saint Laurent。

明らかにライセンスと分かる物が
存在する一方で
ライセンスと表現するのが憚られる程
クオリティが高いものも多いです。

此方はMADE IN FRANCEのタグですが
日本製のライセンスにも
このタイプのタグが存在します

次に此方
「diffusion hommes」
1980年前後〜1990年頃?
前述のオレンジタグを踏襲したものが初期で
青枠のタグはそれ以降のものと考えます。

オレンジのロゴ
diffusion hommes paris
parisの表記は生産国とは無関係です
青枠タグ
diffusion hommes
diffusion=普及品
といいつつ
写真の様にイタリア製なども存在します
黒地に青枠のタグ
このタイプは日本製や韓国製に見受けられます
こちらは末期にあたるのか 
(1988年以降製造された個体に付属したタグ)
diffusion hommesからdiffusion homme
へ表記が変わっています
変更の詳細は不明


1984年頃〜1990年頃
「menswear」
此方は北米で展開されていたアイテムに
よく見かけるタグです。
今のところ日本のライセンシー製では
見たことがないです。
(日本に輸入された個体(北米展開のライセンス品)は確認済)
殆どが青枠のタグですね。(白いタグに黒・茶文字だけのタグもあり)

menswear 1989年の広告


1988年前後〜2000年代初頭
「pour homme」
恐らく最も二次市場の流通量が多いのが
此方のラインでしょう。

青枠のタグのものはあまり出回っていない事から
初期までで
展開時期の大半はモノトーンのタグだったと考えられます。

pour hommeに関しては
1997年の
rive gaucheラインのHedi Slimane起用や
1999年11月の
GUCCIとPPR(現KERING)の戦略的提携による買収以降も
数年間継続していたようです。(2003年までは存在を確認済)

pour homme 1988年の広告
pour homme 2001年の広告

繰り返しますが
上記以外にも色々なタイプのタグが存在します。
(年代、展開国、製造元、販路、アイテムによる違い、シーズン物、キャリー品等によるバリエーションであると推察します)
以下参考程度にご覧下さい。

赤いイニシャル×白文字
黒いタグのYves Sain Laurent
1970年代後半〜80年代初頭と思しき
フランス製にみられるタグです
sportswearのオレンジタグ
此方は1970年代末〜1980年代前半位でしょうか?
このタイプのタグはフランス製も存在しますが
此方は北米企画の韓国製
ケアタグ記載の
カナダでのサプライヤーの番号を調べると
そこは1988年設立なので
私の説と年代に矛盾が生じるのですが
1978年設立の兄弟会社が存在し
その会社から事業と共に番号を継承した為と推察します(早口)
日本製のスーツなどに付くタグ
L'esprit de Paris表記が
ライセンス感を漂わせています
此方は1970年代と思しき
カジュアルシャツに付いていたタグ
正直他の個体で見た事ないです
…お前は…何者だ…?


服のデザインやパターンから
その個体の年代は何となく判断出来ますが
タグが使用されていた具体的な期間までを
特定し得るには
ある程度のサンプルや資料が必要です。
それらの根拠の乏しさ故に
割愛したものもありますので悪しからず。
今後更に研究致します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?