認知症にならないために その1

 私は地域包括支援センターで社会福祉士をしていました。
 毎日認知症のお年寄りを訪問し、ご本人の対応をしたり、ご家族の対応をしていました。
 また、いろいろなところからオファーをお受けし、認知症予防、健康づくり、高齢者虐待等のテーマで、多い時で年間20回の講演会をしていました。時には他府県からオファーをお受けし、ご講演させていただいたこと、大学院で講義させていただいたこともあります。

 さて、認知症に話を戻しましょう。
 実は私の母親もMCI(軽度認知症)になりました。
 幸い母親は主治医も「あまり進行していない」と言っているくらい。あまり進行せずに父親と何とか二人暮らしをしています。
 認知症に絶対ならない方法というのは残念ながらまだありません。
 でも、認知症になるのを遅らせる、あるいは進行を遅らせる方法はあります。
 ここでは、何回かに分けて、どうすれば認知症になるのを遅くできるか、進行を遅らせられるかについて触れていきたいと思います。

 第一回目は、認知症にならないため一番ベースとなる、その人の考え方について触れていきます。
 認知症予防のメソッドは数多ありますが、実はここに触れているものはあまりありません。  
 いくらいい方法があってもそれを受け入れる側に問題があれば当然ながら効果は限定されます。
 だから、一番大切でベースとなるのが受け入れる側の考え方です。
 ここはとても大切ですからきっちり押さえておいてください。

 その考え方とは何か?
 それは「受け入れる」というスタンスです。
 
 プライドの高い人はなかなか受け入れることができません。
 自分に絶対の自信があるからです。

 ここであるケースを紹介しましょう。
 ある姉妹がいました。
 姉は学生時代から学業優秀。親からは一度も叱られたことがありませんでした。しかも竹を割ったような性格で周囲にもあれこれ指示をしリーダーシップを発揮するタイプです。
 一方、妹は小さい頃から勉強が大嫌い、学校もサボってばかり。のらりくらりした性格で結婚してからもいつもゴロゴロしていました。
 姉は子どもの頃から、妹を馬鹿にしていました。大人になってからも「怠け者」とずっと馬鹿にし続けてていました。
 ところが、認知症になったのはどちらだと思われますか?
 おわかりになった方は多いと思いますが、姉の方なんです。
 姉は自分に絶対の自信かあり、何でも「自分は正しい」と豪語していました。
 もちろん当然ながら認知症対策も完璧でした。

 ここ、とても大切です。

 妹は特に認知症対策はしてませんでした。
 でも、いろんな人と付き合い、いろんな人の話を聞き、ゆったりと暮らしていました。

 ここの違いが認知症の分岐点となったのです。
  まず、人の話を聴くこと、受け入れること。
 これが一番大切なことです。

 皆さんも、まずは、人の話をよく聴き、受け入れることから始めてください。

 第一回目は、これで終わります。