グラウンド・タッチマン


銃弾が俺の脳ミソをえぐり取った。
ご丁寧に十字の刻み目がついたダムダム弾が大脳皮質を引き裂いて、神経細胞をズタズタにしながら分裂して、ピンボールのように頭蓋骨の中を跳ねまわる。
次の弾は、肋骨の隙間から入って来た。
ヤニで真っ黒な肺を貫いて、刻み目通りにばらけた弾丸が胴体の中をミンチに変えていく。
三発、四発、数え切れないくらいの弾丸が撃ち込まれる。
まるでお祭りのくす玉人形のように血と脳漿をまき散らしながら、俺は倒れた。
次の日には、海底で魚の彼女ができているだろう。
もちろん、半分は俺の想像だ。
銃弾が身体の中をどう跳ねたなんて分かりっこない。
それに、魚の彼女はできない。
なぜなら、俺は死なないしモテないからだ。
俺が立ち上がったのを見て、そいつらは肝をつぶしていた。
なにせ、間違いなく撃ち殺したヤツが立ち上がったのだ。
ファンタジーに直面した三流特有の、数秒間の硬直。
目の前にUFOが着陸したような顔をしているそいつらに、俺はショットガンを向ける。
やめてくれの一言も言わないまま、そいつらは散弾でミンチになった。
ここからが憂鬱な仕事だ。今ショットガンした奴らの顔を、スマホで撮影して本部に送らなきゃならねえ。
憂鬱だぜ。一人は顔にもろに食らってチリソースみたいになってる。スマホは防弾だから壊れたという言い訳は無理だ。
俺は奇跡的に生き残ったタバコに火をつけて、傷口に手を当てる。完治寸前だ。
『地面に足がついていると体が治る』それが俺のささやかな特技だ。
今、俺がいる空き地みたいに地面が土ならサイコーだ。ほとんど不死身と言っていい。
アスファルトやコンクリートの上だと質は下がるが、まあなんとかなる。
建物は天敵だ。高層ビルなんて見ているだけで嫌になる。
この世の全てのビルは倒れてガレキになるべきだ。
そう思いながら、俺は写真撮影を終えて本部に電話をかける。
「死んだぞ」
「ご苦労様です。あなたも死ねば良かったのに」

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