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超ディスクアッパー選手権2024

3/17 4:00
上野のカプセルホテルで目が覚める。
(またか)
東京大阪予選の時と同じで眠れない。ゆっくりと身体を起こしてアグラをかく。膝に手を乗せて瞑想を始めた。
何も考えない時間を数分作る。
3度目となると慣れたものだ。
次第に鼓動の音だけになる。ひょっとしたらこれが俺のベストコンディションなのかもしれない。

喫煙室の窓からは昨日と今日が混ざり合ったような揺蕩う景色が広る。暗さと明るさの狭間で不思議な安心感を覚えていた。

6:00
上野駅へ向かう。酔っ払いの青年、駆け足で駅へ向かう背広、疲弊した旅行者。変哲もない東京の朝。
俺は東京に気付かれないよう、静かに、極めて静かに闘志を灯していた。1ピコグラムも空気中に闘志を逃さないよう最善の注意を払いながら、内に内に圧縮させる。
目的地はユニバカサミフェスの会場、東京ビッグサイト。
10時の開場までは時間がある。しかし自然と足が向いてしまうのは仕方あるまい。強敵(とも)達の誰よりも早く会場に向かう事が俺なりの礼儀であり戦略なのだ。
弱いが故に何でもやる。それが俺のやり方。

6:50
ゆりかもめに揺られてビッグサイトに着くとすでに200人は並んでいる。Clarisと物販ガチ勢だろう。見回した所、超ディスクアッパー選手権の当日枠を狙ってそうな方はいなかった。先頭のほうにきっとバクトさんやづちおさんがいるんだろうなぁと思いを馳せる。各々が好きなものの為に並んでいるのだろう。俺と同じだ。「好き」が溢れている場所は幸せな高揚を得られる。
列につくと続々と列が伸びる。ユニバーサルさんSammyさん、愛されてますよ!

9:30
会場内に入り列が分けられる。
物販とClarisとその他へ。

10:00
開場。さっきまで大人しく並んでいた方々が急に動き出す。走る者、追い抜いてくる者、もみくちゃになりながら(戦場じゃねえかw)と笑いが込み上げてきた。「好き」は時として暴走するからなーw
後ろのおじさまは割と大きな声で「こんなのってないよ」を連呼していた。まどかおじさんやん。

目指すはメインステージ….横の超ディスク2コーナー。Clarisガチ勢がメインステージに群がるのを横目に人と人の間を縫って突き進む。


4,001番が1番乗りの証。1発目のスコアは64,630だった

1番乗り。
超ディスクアッパー選手権当日枠は時間内で何度でも挑戦ができ、スコア上位2名が決勝トーナメントに行ける。これは早めに来て正解だったな!

と、思いきや。打たせてもらえない。超ディスク2は15台設置されており、人数が揃ってからスタートするとアナウンスされたのだ。運営の方も戸惑うレベルで並びにきてしまったのが俺だ。ポツンと先頭でもじもじするしかできない。

圧巻。


ブースのMCが集客しようと頑張るも、来るのはひろしさん(団体戦東京代表)と僅かな目押しスキーのみ。

来いよぉぉぉぉぉぉぉぉ!
Sammyさんが用意してくれた超ディスク2を打ちたい奴から前へ出ろよぉぉぉぉぉぉぉ!

しばらくして運営の方が流石に痺れを切らしてか案内されることに。1回目は多分4人か5人でスタートだったはず。

そうこうしてる間に列が長くなってきた。列の中にはよしお(第一回覇者)やかるさん(第二回4位)等々、第一回二回の各ファイナリスト達が並ぶ。団体戦、シンディカップの当日枠を狙った腹ペコ達も並び始め、さらに列は伸びる。Pスポーツに興味を持った方々がこんなにもいるんだと嬉しい反面ライバル達の動向に怯える時間が長くなった。

3回目か4回目に89000点を出し首位をキープ。

とももさんは第一回ファイナリスト

ボーダーは10万前後と予想していた。


11:30(頃だったと思う)
ホワイトボードに変動が出た。

なおさんは第二回のファイナリスト



「1st なお」

やっぱりね。89000点で安心できるわけがない。
2ndに落とされて気が気じゃない。個人戦当日枠の受付は12:50最終。
そこまでにどこまでスコアを伸ばせるか、または他プレイヤーが伸ばせないかが俺の予選通過に関わってくる。隣に並ぶあるめさんに「マジでやばい….」と弱音を漏らしていた。追い討ちをかけるように黒ニットメガネの見た事ない方までいる。この方めちゃくちゃ上手くて「日本は広い!」とビビっていましたが、ただのトルネコさんでした。上手いわけだよ。


途中、あり先生が現れバイブスが上がる椅子
シンディカップではうにさんが首位。う、上手くね?


12:40
これが最後になるだろう並びの中、遠くに見えるホワイトボードの順位に変動がないのを確認。このまま行けば突破できるはず。不安と安堵が交差しまくり喋る事もできない。そんな中、揺さぶりをかけてくるプレイヤーがいた。
ナカガワさん(バンボロさん)が列の前からネームプレートを見せてきたのだ。

「91000」
※プレートにはエントリーNo.と最高スコアが記されている

ナカガワさんはプレイ後、受付にスコア報告をしない作戦を取っていたのだ。それによってホワイトボードには名前とスコアが載らない。俺はランク外に落ちていた。

俺はナカガワさんのプレートを指で摘みながら微動だにできなかった。完全にやられた。会心の一撃、クリティカル。盤外戦術によりメンタルは切り刻まれる。

が、それと同時に深く感心もしていた。さすがだなぁ。強いなぁ。こんな人達と当日枠を争っているのかぁ、と。
混乱と冷静とリスペクトがぐるぐると駆け巡る。

そして最後に残った闘争心を胸にしまい、ラストプレーに挑んだ。とても楽しめる状況じゃない中、昨晩ポン太さんと晋吾さんに言われた事を思い出していた。
「楽しまなくていいんだよ」
このお言葉に、なぜか俺は大いに救われていた。

97000点

椅子、渾身のラストプレーで予選1位通過。
受付にスコア申告をした後、出口付近で高木大佐とヒレルさんが俺を待っていた。

「多分1位通過です」

お二人とも、物凄い喜びよう。仲間達が笑顔になってくれている。その出来事を噛み締める。握手とハグをしてから椅子は早足でトイレへと向かった。

「すみません。少し独りになりたいです」

心が限界だった。



続く




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