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ホラー小説『揺籃のイースター』第1話『風打ちつける晩』

四月三日土曜日


窓の外から荒んだ風の音が聞こえてくる。
風音に混じり、塀の扉が何度も体を打ちつけていた。
唸るような風は窓を叩いて、家そのものが揺り動かされているように軋む。


復活祭を前に、僕は眠れない夜を過ごしていた。
明日は朝から、誇りあるミサの奉仕を司祭様から任されている。
そんな大切な一日なのに、心は風に吹かれて、どこか遠くへ飛んでいきそうなくらい覚束なかった。


早く寝たいのに、そうはさせてくれない不安感に体が包まれている。
一日を終えて、疲れているというのに、意識だけが、拷問のように続いていた。
枕を動かして、何度姿勢を変えてみても、楽にはなれない。
仕方なく僕は、また水を飲みにキッチンへ行くことにした。


この不安は、今に始まったことじゃない。
皆が遊んでいる間も、教会の会堂掃除のボランティアや進んで礼拝に参加する姿が認められた僕は、初めて祭壇奉仕者としての務めを、司祭様から伝えらたんだ。


「はい」の二つ返事で受けたその時はただ、とても嬉しく誇らしかった。
あの出来事が起こるまでは、平穏な日々が続いていたのに・・・。

(2話へ続く)