何故ボーイズアイドル事務所はどこもファミリー売りをやりたがるのか?②

ファミリー売りの良さ

ファミリー売りの話2回目書こうと思ってたらEBiDANがEBiDAN全員で曲出します!というニュースが飛び込んでまいりました。
EBiDANは前からなんだかんだとファミリーでやってますけど、さらにそれを強めていくぞ!と言うことですね。どこも頑張ってる。
こういうファミリーで曲を出す、と言うのはジャニーズだと最近では「Smile」でやってますね。

さて、事務所的には事務所全体を強くしないといけない、それには複数売れてるグループを持たないといけない、そして新しいグループを手っ取り早く人気にするためにはファミリー売りがコストが低くて確度が高い、という話を前回してたんですけど、
「そんなの事務所の理屈じゃん」
「ファンは関係ないんですけど?」
っていう意見もあるわけです。それはその通り。ファンからすれば事務所自体が強くなってくれないと云々という話は関係ないわけです。先輩グループのファンに頼らずに後輩グループ強くして見せろよ、というのはその通りだし、事務所内で既存のファンを分け合ってたらグループ増えるほど各グループが弱くなる、というのもその通りです。

私はジャニーズのファンですが、ジャニーズはファミリー売りの長い伝統があるのでジャニーズのファンダム全体で見るとファミリー売りに拒否感ある人の方が少ない気がします。嫌な時もあるけどそれの良さも意義もまぁわかるし、いいこともあるしファミリーだからこその楽しさ、面白さもあるから多少のファミリー売りはOKって感じの人が多いのではないでしょうか。あとファミリー売りしてるからこその楽しさというのもある。

①縦のつながり、横のつながりの面白さ


たとえば、ジャニーズ界隈ではよく耳にするけれど他界隈だとおそらくあまりでてこないワードとして「尊先」という言葉があります。
「尊敬する先輩」の意味ですね。
この尊先というのが面白くて、やっぱり尊敬している先輩に影響受けてるんですよね、後輩のタレントって。そうなると、先輩タレントのファンも自担を尊先に上げてくれる後輩は可愛いと思って何かと、自担ほどではないですが、応援してしまうものです。髪型とかパフォーマンスとか、個人の個性はあるんだけれども、「あ、憧れてんな〜」っていうのがはっきりわかるケースもあります。山田涼介くんに憧れている子たちのセンターわけの髪型とか、中島健人くんに憧れている子たちのステージでのパフォーマンスとか。
たとえばキンプリの高橋海人くんはかなり前からNEWSの増田くんを尊先にあげてます。そうするとNEWSが好きなファン、まっすー担も「あ!海人くんだ!この子は絶対いい子!」ってなってしまうわけです。自担を好きだ、尊敬していると言ってくれる後輩は可愛い。一方後輩担も自担が尊敬している、大好き、可愛がってもらっている、と話す先輩には割とポジティブな気持ちを持っている人が多くてほんのり好きだったりするんですよ。「あ!自担を旅行に連れて行ってくれた○○くん!その節はどうもありがとうございました!」みたいな。「よく悩み相談に乗っていただいているみたいでありがとうございます!」みたいな。
なにわ男子の道枝くんはJUMPの山田くんが尊先です。美 少年の浮所くんはセクゾのケンティーが尊先ですね。尊敬する先輩と共演したりすると自担がはしゃいでいて可愛かったり、反対に好きすぎて緊張がすごくてろくに話せなかったり、アイドルがただのファンみたいになっているのを見るとオタクとしても嬉しいんですよ。

横のつながりも尊い。
たとえばまたまっすーを例に取りますが、同期がKAT-TUN亀梨くん、中丸くん、A.B.C-Z塚ちゃん、キスマイ藤ヶ谷くん、ふぉ〜ゆ〜越岡くんです。こういうのがほぼ全ジャニーズにあるわけで、それが同期会した、とか大型音楽番組やカウコンの裏で同期で写真撮ってるとエモい、とかそういうので盛り上がれるんですよね。

誰と誰が友達で、みたいなのも楽しいですよね。たとえばまたまたまっすーですがまっすーはKAT-TUN中丸くんの友達で、中丸くんがコロナで番組に出られない時に代打でまっすーが出たりとか胸アツでした。コロナの時期はあれこれ大変でしたがNEWSがコロナと濃厚接触で自宅待機で番組出られない、となった時にKAT-TUNが頑張ってくれたり、別の時に上田くんがコロナになって出られなくて、という時にまっすーが代打で歌ったり、と助け合いが熱かった。舞台とかもそうですよね。今井翼くんが病気でお休みになった時に後輩が代わりに舞台を務めたりとか八乙女くんがやっぱり体調を崩して長期で療養ってなった時に松島くんが代わりに主演を務めたりとかね。

ジャニーズ界隈は誰かが舞台に出ると楽屋のれんの話でテンションが上がるファンが一定数いるんですけど、これも誰が誰に頼んだとかそういうのが楽しいです。あの後輩は自担に楽屋のれんを頼んでくれた、頼まれて自担も嬉しそうだった、とか、自担が初舞台だけど楽屋のれん誰に頼むのかな?シャイだけどちゃんとお願いできるかな?あの先輩仲良しだけど贈ってくださらないかな?とか。

②自担もファミリー売りのおかげで今の人気を獲得できた部分もある

自担の人気を後輩が利用している!けしからん!という気持ちは当然と言えば当然の気持ちなんですが、ジャニーズの場合はこれがあるからそこまでファミリー売りに表立って文句を言わない。自担が見たいだけなのにバーターの後輩がしゃしゃってきて面倒臭いな、自担の舞台なのにバーターの後輩のファンが「○○くんが一番かっこよかったよ!」とか言ってキモい、とかありますけど、でもまぁ思い返せば自担も10代の頃バーターでドラマや舞台に出してもらってそこで学んできた、先輩のドラマに出させてもらって露出を増やして名前と顔を知ってもらってきた過去があります。みんなこうやって大きくなるもの、という気持ちがある。
たとえば昨年恋愛ドラマにHey!Say!JUMPの中島裕翔くんが出ていて、同じドラマにジャニーズJr.の高橋優斗くんが出ていました。これはまぁ一種のファミリー売り、バーターです。番宣にもヒロインと中島裕翔くんと高橋優斗くんで出ている場面が多かった。でも中島裕翔くんも幼い頃「野ブタ。をプロデュース」に亀梨くん、山下くんのバーターで出ていたわけです。先輩目当てに見ている誰かが、「あ、この子可愛い。そうか、同じ事務所の○○くんか」と名前を覚えてくれる。
コンサートについてもそうで、コンサートのジュニアコーナーでバックのジュニアが1〜2曲やるのを見て「自軍のパフォーマンスに金払ってるんであって、ジュニア見たくて金払ってるわけじゃないんですけど?」と思わないこともないんですが、でも思い返せば自担・自軍もジュニア時代に先輩のコンサートにバックでついて広い会場、大勢のお客さんの前でのパフォーマンスについて勉強したり、コンサートの作り方を学んで大きくなってきたわけで、それを思うと後輩にそういう学びを提供する側になったんだなぁという感慨深さもあるわけです。だからそんなにめちゃくちゃに怒っている人というのは少ないですね。
「なんで自軍のラジオで後輩の新曲かけるんだよ!」とか「自軍の冠番組に後輩がやってきて後輩グループの宣伝していくんだよ!」とかなきにしもあらずですが、そもそも自軍だって先輩の番組で宣伝させてもらってここまで大きくなったわけです。いいよいいよ、おやんなさい、という感じ。

もっとも程度の問題というのはあって、あまりにも後輩が先輩を差し置いて前に出て出しゃばったり、先輩を落として笑いをとるような失礼な真似をしていると普通に嫌われます。あと後輩のファンがあまりにもでかい顔して「先輩より自担の後輩の方が優れてる!」的なことをはしゃいで言っているとそのファンも含めてまるっと嫌われます。先輩のおかげだってことを忘れないようにしましょうね。ご近所に嫌われると生きていきにくいですから。

③先輩から学ぶ文化


みなさんご存知でしょうが、ジャニーズは先輩の背中を見て学ぶ文化があります。そしてこれはひょっとして知らない人もいるんじゃないかな〜、結構なセルフプロデュース文化です。
セトリもそうだし、ステージの構成こうしたい、衣装はこういうのにしたい、こんな機構を使いたい、こんな特効使いたいけど予算的にどうでしょうか、グッズはこんなんやりたいんだけどこれやると出来上がりの製品いくらくらいになりますか?みたいなことやってるんですよ。
先輩のコンサートのバックにつくことで、歌やダンスもそうですが演出の仕方やセトリの組み方、機構の使い方、MC、衣装なんかもどうすれば視覚的に楽しませられて、とかグループの運営の仕方とか学んでいくんですね。
大人に「こうするからね」って言われて「はい、おっしゃる通りに致します」でやっていくわけじゃないんですよ。スタッフさんとみんなで協議して作っていく。時にはスタッフさんに反対されてもスタッフさんを説得したりするわけです。で、その「どうすれば良くなるのか」というのを学んでいく原点が先輩の背中なんですよ。もちろん先輩からだけではなくて外部の、海外含むコンサートやコンサート以外の演出だったりで勉強したりもしますけどね。

これがコンサートなどのパフォーマンスだけではなくて、演技のお仕事もそうだしバラエティもそうです。たとえば先輩主演の舞台に後輩が出させてもらうと主演をやっている先輩がカンパニーの中でどう振る舞っているかとか、どうやって役に取り組んでいるか、というところから学んだりするわけです。いわゆるジャニーズ舞台、外部の舞台ではない奴だと脚本から作って行ったりもしますが、そういう場面でも先輩がどうやって舞台を作っていくのか、というのはお手本になります。
バラエティでもそうですよね。ゲストで呼ばれた時の振る舞い方、MCをやる場合のコツとか心がけなんかも先輩から学ぶ。
というわけで、縦の繋がり、先輩後輩の関係って大切だよな〜というのが割と身に染みてるんですよね、ファンの方も。
だからなんだかんだとファミリー売りに対して受け入れ態勢です。ファミリー売り、面倒くさいことがないわけじゃないけど大切な部分もあるし楽しいところもいっぱいあるよな〜っていう感じ。

④お下がり含む衣装文化


これはファミリー売りだかどうだかわかりませんが、でもまぁファミリーでしょうね。
ご存知、ジャニーズJr.の衣装は先輩のお下がり、というやつ。とはいえ、ジュニアも人気が上の方になってくるとオリジナル衣装を作ってもらえることも増えます。人気ジュニアグループなんか何着もオリジナル衣装持ってるしオリジナル曲も持ってる。一方でお下がり衣装を気に入っているのか、オリジナルも持っているのにお下がり衣装をここぞという時にも着ている場合もあって不思議ですね。
いくら憧れの先輩でも体格差がありすぎるとお下がり着れないんですけど、でも好きな先輩のお下がり着れると嬉しそうだったりします。ファンの方も、「あれ?あの衣装見覚えがある!あ!自軍の昔のツアー衣装じゃん!誰のを誰がきてるんだ?」とかありますし、そのうち「あの衣装大好きだから私の推しグループにお下がりきますように!」とかもあります。
あとですね、デビュー組の先輩がジュニアグループのオリジナル衣装を作ってあげるっていうのもあります。
A.B.C-Zなのか河合くんが個人でそうしたのかわかりませんが少年忍者にオリジナル衣装作ってあげてましたね。少年忍者は21人組で、人数多すぎてみんなで同じ衣装を着るのが難易度高いグループなんですね。オリジナル衣装を作ってもらえたことでみんなで似たような、ではなく揃いの衣装を着ることができました。これが少年忍者にとっては初めてのオリジナル衣装だそうで、河合くんなのかえびなのかわからないけどめちゃくちゃかっこいいぞ!
そもそもその河合くんもジュニア時代、亀梨くんが自腹でジュニアに衣装作ってくれて感動したっていう体験があるんですよ。先輩がしてくれて嬉しかった、だから後輩にしてあげようっていう優しさです。ファミリーっていいよなぁ!!ってなりますよ。ちなみにこの時かな?SpeciaLも初のオリジナル衣装を作ってもらってました。河合くんに足向けて寝られないな、SpeciaL担と忍者担は!
昔はオリジナル衣装持ってるグループそんなに多くなかったのかもしれませんが、今は結構みんなオリジナル衣装持っているので、持ってないと寂しい場面あるんですよね。たとえばプロフィール写真とか、人気グループはお金稼げるから予算もあってオリジナル衣装でアー写撮れるんだけど、まだまだそこまで人気のないグループだと予算もそこまでないからお下がり着てアー写撮るわけです。それがオリジナル衣装作ってもらえるとそれを着れるわけで、ほんと、私涙が出ますよ。

余談ですが、こういう話をすると「差別じゃん!可哀想!みんなに平等に作ってあげればいいのに」とかいう人がいますが、私はこれでいいと多います。というのは、何もかも平等を旨とすると頑張るモチベが上がらないこともあるでしょ?一生懸命頑張って、人気が出たら、そうしたらオリジナル曲も貰えて、オリジナル衣装も貰える。そのほうが、「差別したら可哀想だから」なんて理由で当たり前みたいに与えられるよりずっと価値があるでしょう?
「あのグループがドーム公演したから、平等にするためにこのグループにもドームでやらせてあげよう」なってやっても意味がないですよ。自分で頑張って勝ち取るから、自分の足で一歩一歩階段登って、それでようやく立つから意味があるんですよ。誰かが「可哀想だから」ってひょいっと抱っこして乗せてくれたドームはそれは本当にドームに立ったことになるのかな?

⑤成長を見守る文化

これもある。これは後輩が先輩のバックにつくから、それならではでもありますけどね。あれ?あんなに小さかった○○くんが、もうこんなに大きくなったの?みたいなのあります。少年忍者の久保廉くんとか。セクゾのマリウスくんとかもそうだったなぁ。天使みたいだったマリちゃん、昨年末にはIT社長みたいに立派になってましたね。というわけであの小さい○○くんがもうデビューだなんだってとこに来てるのか〜、という親戚感故に受け入れやすいのかも。


ただし、上記のような楽しく心震える感動のファミリー売りが成立するのはジャニーズだから、というところがあると思います。つまり個人の下積み期間が比較的長く、先輩後輩の年齢差があること、先輩のバックにつく習慣があって先輩グループのファンもかなり前から後輩のことを知っていて、とかそういう事情があるからこそ、というものですね。
事情が違えば受け入れがたいというのも当然で、だから「ファミリー売りを受け入れられないファンは心が狭いとかそういう話ではない」と思う。