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アイドルさん、あなたへの評価はファンの「アイドルのあなた」への愛で4割増しになってるから割り引いて考えないと実力過大評価しちゃうよ。

私あんまり秋元康って好きじゃないんですよ。とはいえ別にめちゃくちゃ嫌いってわけでもなく感情が無。特になんとも思ってない人ですが、その彼が「アイドルって自分がやりたいと思っていないことでも周りに強く勧められてやると当たったりする。自分の好きなことをするようになると当たらなくなったりして難しい」みたいなニュアンスのことを言っていて、ある種真実だよなぁと思ったんですよね。
アイドルって、「その人」が愛されている部分が大きいので、自分がどれくらいの大きさの人間なのか、ということをよくわかっていないよなっていう人も散見されます。
例えば、アイドルの趣味がイラストで、それを披露したりしますよね。ファンは死ぬほど褒めてくれます。「すごーい!」「うまい!!」「1億円で買わせてください!」「プロじゃん!絵で食っていけるよ!」とかね。
これは作曲とかについてもそうで、ちょっといい曲書くと「プロが書いたのかと思った!」「有名アーティストの提供曲かと思ったよ!」とか「名曲すぎて涙が止まらない」とか褒める。
これでアイドル勘違いしちゃうんですよね。あ、俺ってすごい才能あるんだ〜、プロのイラストレーター並みの実力なんだな、すごいヒットメーカーになれる才能があるんだな、とか。

でもそんなことないんですよ。
ファンがアイドルを褒めてるのって、親が自分の子供を褒めていたり、彼女が彼氏を褒めているのと似ていて、その人が好きだから身内贔屓で高く評価しているんです。
あなたが子どもだった時、お母さんの具合が悪い時に頑張って晩御飯作ったらお母さんめちゃくちゃ喜んでくれて、「美味しい!こんなに美味しいの初めて食べた」って食べてくれたでしょ?絵を描いたら「上手!プロになれるかもね」って褒めてくれたでしょ?そんなめちゃくちゃ美味しいわけでもない手料理を、彼氏は「めちゃくちゃうまい!お店出せるレベルだよ!」とか褒めてくれるでしょ?
もっと嫌な言い方をすると、自分の飼ってる溺愛しているわんちゃんが死んだふりとか芸ができたら「天才!動物タレントになれるのでは?」って心の底から思って褒めまくるでしょ?
それと同じです。

本当にそんなひっくり返るレベルで美味しかったわけでもなく、プロになれるレベルで絵が上手いわけでもないんですよ。あなたの犬は可愛くていい子だけど別に1000年に1匹の天才犬ではない。
ただ「あなたが好きだから」、「大好きなあなたが頑張ってくれたのが嬉しかったから」褒めてるんです。そしてそういう大好きなあなたが作ったものが少なくともやばいレベルでまずいとか下手ではなかったから言ってるんですよ。あと努力ややる気をほめたり、今後さらにそのジャンルで活躍の幅が広がるように、本人を励ますために言ってる。

これってアイドルだけの話ではなくてアーティストもそうです。アーティストでもバンドマンでも、一度誰かにすごく好かれてしまうとファンがめちゃくちゃに褒めるから当人が勘違いしてしまうんですね。例えばバンドマンとしては美人な女の子がいたとします。その子のことをファンが「女優並み!」「アイドル並み!」「めちゃくちゃ可愛い!女優と並んでも全然見劣りしないよ!」とか褒めてるケース、前見たんですよ。確かにミュージシャンしかいないところで見るととびきり可愛い。私もMVとか見た時あんまり可愛くてびっくりしました。メンバーだとは思わなくて、名前を知られていない女優さんなのかなと思った。でも、いざドラマに出て女優さんと並ぶと可哀想なくらい可愛くなかったんですよ。顔がでかい。全体的にパーツがはっきりしなくて埋もれている。演技も下手だった。あ、私も含めてファンが今まで「可愛い可愛い」、「女優並み」、っていう評価をしていたのはファンの欲目だったんだなぁというのがわかってしまった。これはイケメンと言われているアーティストでもそう。本職イケメンと並ぶと気の毒なことになっちゃうケース多いです。ギャグとかトークも結構そうですね。ファンの前でやるとめちゃくちゃウケるギャグ、テレビとかでやるとみんながあっけに取られてシーンとしちゃうとかそういうのあります。身内の評価を信じすぎてはいけない。世間はあなたのファンや家族だけで構成されているわけじゃないんだから。

アーティストであれ、アイドルであれ、「ファン」という存在を持つようになったら、誰かの褒め言葉は割り引いて考えないと自分というものを見誤るようになると思ったほうがいいです。もしイラストを描いてファンに褒められたとしても、その作品自体の本当の評価、自分という個人への愛を完全に差し引いた正当な評価が知りたければ、名前を変えてコンクールやコンテストやコンペに出すしかありません。あなたの名前で出したものは必ずあなた個人への愛が付加された形でしか評価が出てこないよ。本当の実力が知りたければ、必ず名前と顔を隠した状態で、一般の人と完全に同じステージで評価されるところへ出してください。名前が出た状態で一般投票とかのものに出すと、ファンが組織票で票集めるから正当な評価にはなりません。

これは人間は自分の姿を本当に客観的に見ることはできないからこうなってしまうわけで、おそらく誰であってもこうなってしまうんだと思います。そしてファンを持つ人々、芸能人とかスポーツ選手とか、そういう人たちはとりわけ、そのファンの数が多いことから勘違いをしてしまいがちなんだと思います。すごい数の人がめちゃくちゃにほめてくれるから、一般人が家族や彼氏や友達に褒められるのよりもずっと勘違いしやすい。

だから先の秋元さんの「自分の好きなことをやるようになると上手くいかない」っていうケースが出てくるんでしょうね。

自分がなりたい自分と他人に求められる自分、需要がある自分ってイコールではないです。どちらも両立させるのが真のプロ、理想のプロだけれど、ファンがあなたへの愛故に過剰に褒めてくれていることを「100%作品そのものへの評価」だと勘違いした状態で突き進むと本当に危険なのでそれはわかっておいたほうがいい。そうでないと本業としてやっていけるだけのファンが確保できなくなった時に結構危険なことになります。

ファンって応援している時は励ましのためにも死ぬほど褒めてくれるんですけど、そもそもファンってアーティストにもアイドルにも一切責任のない消費者、お客様なんですよ。だから、「ファン」である間は「天才だよ!」って褒め続けるんですけど、「なんか違うんだよなー」「もうこの人応援しててもあんまり楽しくないなぁ」「義務っぽくなってきてしんどいなぁ」ってなると黙って離れちゃうんですよね。
担降りブログとか書く人は稀です。担降りします宣言する人も稀。
大概のファンはファンを辞める時とても静かです。黙ってただ買わなくなり、聞かなくなり、見なくなり、ライブに足を運ばなくなり、FCの更新を忘れます。何が嫌だったのかもいちいち言わない。「なんかもういいやってなった」とか友達にいうだけ言って、本人に何かを伝えようとしないんですよ。
結果、勘違いが一切解消されないまま突き進んでしまい、気がつくと「あれ?みんな天才って褒めてくれてたのにファン減ってない?」みたいになる。

本当の自分を見誤らないでね。ファンの評価を世間の評価と思わないでね。ファンの評価は親戚がしてくれる評価くらいに思ってね。

どんどん自信はつけて欲しいけれど、でもその一方で過剰に自己評価を高めて失敗しないでほしい。