大人のオタクから若いオタクに真面目に伝えたい話
「推しは推せる時に推せ」
もはやオタクのモットーと言ってもいいような、よく知られた言葉ですが、この言葉を文字通り受け取りすぎていると思われる若いオタクちゃんがいます。大人のオタクとしては心配で仕方ない。なのでちょっとその話をしていきたいと思います。
私の属する界隈にある若い女の子のオタクがいます。まぁ若い女の子だらけなんですけどね、ボーイズアイドル界隈なんて。その子の名前を仮にA子ちゃんとしておきましょう。A子ちゃんは学生です。高校生か大学生か、大学生だとしてもなったばかりみたいな子で、ひょっとすると大学ではなくて専門の学校に行っているのかもしれません。彼女は地方在住で、実家に住んでいて、バイトをしていて、学校にいっています。私が繋がっているのはオタ垢なので、彼女のプライベートについてはよくわからないのですが、それでもツイートの端々から上記のようなことがわかります。
彼女、最近学校をサボっているんですよね。なんだか先生が好きじゃないみたいで、それで理由なく学校をサボったり、サボったことを叱られて余計に学校から足が遠のいたりしているようです。まぁそういうことは人間ならあるかもしれないけれど、「テストの日に休んだらめちゃくちゃ怒られたけど、なんかだるくてやる気起きなかったんだよね」「学校あるけどオタ活優先でしょ!」とか言ってるのには不安になる。
いやいやいや、オタ活より学校優先でしょ!少なくともテストとオタ活天秤にかけたらテストが優先だよ!これは私の感覚でしかないですが、進級や卒業や、あるいは進路を決定するような評価に関わるテストの日に推しがライブをしていたとして、テストとライブだったら絶対テストを取るべきです。これがテストでもなんでもない普通の授業と、推しが脱退する卒業ライブが同じ日、とかだったら両親の了解を得た上でこっそり普通の授業の方を「風邪です」とか言って休んでしまっても許されるのでは、と私は思ってしまいますが、でもテストとオタ活ならどう考えてもテストです。ちなみにテストと卒業ライブなら私ならテストをとる。だって推しが卒業したって別に人間は生きていけるし卒業ライブに参戦したからって「だから何?」って話ですが、テスト受けなくて留年したら一生その事実がついて回るし少なくとも1年はだいぶ暗い気持ちが続きます。大怪我をして入院していて出席日数足りなくて留年というのは「なるほど、大変だったね」ですが、「推しのライブを優先していたらテストを受けられなくて、あるいは日数足りなくて留年しました」と聞いたら「そうなんだ〜」と表向きは流しつつ「こいつ、物事の軽重はかれないレベルの相当な馬鹿だな〜」と思うし相当な馬鹿としてその後接することになると思います。
最近推し活、オタ活を賛美する風潮があって、そういうことを書くとそのツイートが伸びる傾向にあります。「推しがいると健康になるから推し活費は生活費!」とかね。キラキラ推し活みたいなものもあって、豪華なホテルでバルーンとかいっぱい買って本人不在の可愛い誕生会やってインスタに載せて、とかやって素敵ですよね。見ていても楽しそうだし華やかだし羨ましい。ものすごくたくさんコンサートに入ったりしていて、お金もそうだけど時間よくあるね、学校行ってないの?働いてないの?って感じの人もいます。
憧れるのはわかるし、推しは永遠ではないから推せる時に推さないと後悔するよっていう、それ自体は真実なんですよ、ある面においては。でも、世の若い子の一部には、これを文字通り鵜呑みにしてしまう子がいる。「推しは永遠にいるわけじゃないから推しが活動している間は他の全てを犠牲にしても推し活を優先しろ!」という風に捉えてしまうんですね。
違うんですよ〜!推し活はあくまで趣味だということを忘れてはいけません。推しは推せる時に推せ、の推せる時、というのは「推しが活動していて推させていただくことが可能な時」という意味だけではなくて、「あなたに推し活をする余裕がある時」という意味でもあるんです。だからあなたにお金が十分にない時、そんなことをしている場合じゃない時、心理的にとても推し活してる場合じゃない時にはやらなくていいんです。
なんていうのかな、推し活を優先することで人生が狂っちゃった時に、推しのせいにしないでほしい。推しはその責任をとってくれないよ。例えばあなたが中学3年生で、高校に行こうと思っていたけれど推しができて、推しを全力で追うためには高校に行ってる場合じゃない、高校行くのやめてバイトして推し活費を稼ごう!学校行くよりたくさん働けるからその分推しに貢げる!とか思っているんだとしたら本当にやめた方がいい。あなたの人生はあなたの人生として最優先させて、その上で余力でするものです、推し活って。
例えば以下の人のこと、どう思います?
①婚約中の20代後半女性。婚約者の男性と結婚式、新生活等のために2人で300万円ずつ600万円貯めている最中に推しができる。推しグループが競合と発売日のかぶるリリースがあり、また接触イベントの抽選もあったので新生活用に貯めていたお金の半分を推し活にあてる。後に結婚資金を使ったことがバレて、そこからお金の使い方、人の信頼を裏切ることが問題になって破談。
②子持ちの主婦。人生初の推しができる。推しのデビューイベントと子供の発表会が被る。子供の発表会はママ友に任せてビデオを撮ってもらって後で見ることにし、自分は推しのイベントに行く。
③学生。推しを追いかけて全国回っていたら出席日数が足りなくなり高校中退。追いかける資金が足りないのでパパ活。食事くらいではお金がもらえず体の関係込み。
どれもお金と時間の使い方がおかしい、大切な人を蔑ろにしている、という点でだいぶ危険なオタクの姿です。③の人の場合、推しが解散してしまって裏方に回ってしまったら(そういうケースもあるので)、友達はみんな高校卒業して大学行ってそろそろ就活しようかとい年齢の中自分だけが中卒でパパ活しかしたことがない、みたいな状況になるわけで相当なピンチになります。悪いこと言わないから学校は「オタ活していなくても選ぶ学校」に行くべきです。就職もそう。オタ活を優先して仕事や学校を決めないほうがいい。悪いこと言わないからその方がいい。
「デビューから10作連続100万枚を突破しました!」
すご〜い!!
でもそれってアーティストの記録であってオタクの記録じゃないんですよ。あなたがセックスワークをしてお金を作ったり、あるいは別に用途があって貯めていたお金を注ぎ込んだりして、もちろん抽選系の特典に毎回当たったりしてそれなりに報いられたとしても、それで達成された記録はアーティストのものであってあなたのものではない。あなたが普通に就職しようかなと思って面接を受けた時に「○○というアイドルグループがデビューから10作連続100万枚突破しましたが、私はファンとして各作品500枚ずつ買いました!この買い支えが私が学生時代成し遂げたことです!」とかいうことは出来ないわけです。
例え推しであったとしても、他人の夢や業績に乗っかることは出来ないんですよ。だから自分は自分でちゃんとやって、その上で楽しみのためにするのが推し活です。推しがレッスンを重ねたり、仲間と切磋琢磨したりして作り上げた作品なり記録なりはあなたのものではない。あなたはあなたでやっていかないといけない。
厳しい言い方をすると、推し事って結局楽しい事なんですよね。こちらがお金を払うことって結局こっちがお客様なわけで楽しませてもらう側です。だから楽しいこと(推し活)に逃げることでやらなければならないけど辛いこと(学校、勉強等)から逃げてはいけない。まぁ逃げるのも勝手だけど、その結果訪れる惨めな結果はあなたが引き受けなければならないし、それを推しのせいにしてはいけない。推しは責任とってくれないよ、あなたが留年しても、退学になっても、そのせいで安い給料しかもらえない仕事しかつけなくても、大切な人との関係が致命的に悪くなって一人ぼっちになっても、困った時大切な人がサポートしてくれなくても、大きな病気になっても。推しはあなたが困窮した時お金を払ってくれないし病院に来て看病してくれない。
推し事はお仕事じゃないです。趣味。
SNSで言われることを真に受けて全てを投げ打ったらいけないよ。ちゃんと自分の人生を真面目に生きながら、趣味の範囲ですることだよ。
なんていうか、頭良くなってほしい。その行動をとることで手に入るリターンと犯してしまうリスクについてよく比べて、長期的に良い選択をできるようになってほしい。
たまに「これをしたらその後どうなるのか」ということの予測がものすごく苦手な人っているんですよね。例えば「ある服がすごく欲しい、でもお金がない」っていう状況の時、選択肢はいくつかあって、「貯めているお金を使う」「お金が貯まるまで待つ」「親におねだりする」「バイトをしてお金を得る」「諦める」「似たようなデザインの手に入る値段の服を買う」とかね。そういう時に「服を盗む」とか「盗んだお金でその服を買う」という判断をしてしまう人もいる。最後の二つを選択してしまう人というのは選択の結果がどうなるのか想像する力の弱い人なんですけど、そういう人になってほしくない。それが誰であっても。