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「なんでこれだけ原作ファンが嫌がってるのに実写化にジャニーズ使うんだよ?」の話

人気漫画、あるいは人気小説などが実写ドラマ化、実写映画化される際に絶対に言われることが「どうしてキャストにジャニーズ使うんだよ!」っていう奴。

これは私もわかります。
私は基本的には幼稚園の頃からの二次元オタクで、成人してしばらくは死ぬほどジャニーズが嫌いだった人間なのでマジでわかる。ジャニーズが嫌いな人間からするとジャニーズ事務所に所属していると言うだけで害虫くらいに嫌なんですよ。Gってほどじゃないけどムカデくらいには嫌。

突き詰めればこの激しい憎悪の理由は奴らがイケメンだって言うことだけなんですけどね。
きっとイケメンは嫌なやつに違いない、顔がいいぶんバランスを取るためにその他のことが全てできないに違いない、だから演技もクソ下手で性格も悪くて役作りのための努力も一切しないに違いない、そうでなければ世の中公平じゃない、だからそうであるはずだ、と言う激しい思い込み。世の中、どうか公平であってくれという願い。

話は戻りまして、では毎回毎回、何かが実写化されるたびに一部のジャニーズ忌避層が死ぬほど反発するんですが、それでも結構な確率で実写化作品にジャニーズが起用されるわけですけどこれ、何ででしょうね?これはジャニーズ、というだけではなくて他事務所アイドル、アーティストは名乗っているけど実質アイドルの人々、演技経験の少ないアイドル枠俳優も事情は同じでしょう。じゃあ何でそういう人たち起用されるんだ?っていう話です。

実写化はビジネスなのでコストも達成すべき目標もある


まずこれ。
一部の純粋な、というのは幼き日の私のようなということですが、そういう原作ファンたちは「実写化されるということはいい実写化作品、すなわち原作をそのまま3次元に持ってきたようなものを作ろうとしているに違いない。予算などはなく、目標視聴率も原作の目標売上部数、グッズの売り上げ目標なども存在しない」と思っているのだと思います。でも実際は①いい実写化作品を作りたい→YES、②予算などはない→NO、③目標視聴率も目標売上部数もグッズの売上目標も存在しない→NOだと思います。予算はある。達成したい目標もある。
だってテレビ局も出版社も営利企業ですよ。儲けて、その儲けで原作者や社員に給料や原稿料を払い、次の作品に投資する。赤字でいいです、なんてわけはないんですよね。でもこういうことを消費者側はすぐ忘れてしまう。
というか、自分のことを考えても予算のこととか売上目標のこととか働くまで考えたこともありませんでした。働き出すとありとあらゆることに金の話はついてきますし、さらに守るべき法令とかそういう話も絡んできますけどね。

これを②や③を無視して、原作そっくりのルックスのキャスト起用できるように大々的にオーディションをやろう、原作にルックスが似ていて、そして演技の才能の芽があれば時間をかけてガッツリ演技のトレーニングをさせて、ファンはついていない新人だけどそういう人たちだけで実写化をすれば原作ファンだけは納得する作品ができるからいいじゃん、となるんでしょうが、そんなことはできない。そんな予算も時間もありません。
そういうことをするとドラマの視聴率、映画の動員数は原作ファンで実写化に抵抗がない人(実写化は何が何でも絶対見ない、という人もいますから)と少数の新人俳優のファンということになります。喜ぶのは原作ファンだけ。それではコストだけかかって達成すべき数字の目標は達成できず、赤字ということになりかねない。

既に名前を知られている人気の若手俳優を使うこともできますが、その場合も円盤の売上や動員数などはその俳優のアイドル的人気によるところになります。

漫画原作作品、特に胸キュン系少女漫画原作作品出演はファンにもタレントにも嬉しい


名前を知られている人気俳優、アイドル的営業は卒業しているレベルの俳優はは出る作品を選ぶんじゃないでしょうか。俳優として挑戦しがいのある重めの作品や俳優として成長できるような難しい役、あるいはあらゆる世代にアピールして大ヒットが見込まれる大作を選びたいんじゃないんかな。同じクラスのちょっとかっこいいヒロインの相手役、ではなくて。
イケメンで俳優としての評価も高くて、若くて、既に大ヒット作品の代表作がある俳優にやってほしい!って思うのは、まぁ思う分にはいいんでしょうが、実現は難しいんじゃないでしょうか。ギャラも高いし、本人は既に実績もあるんだからそろそろ「若いイケメンだから」でもらえる役ではなくてもっと難しい役がやりたいでしょう。いつまでも少女漫画のイケメンの役を繰り返してもキャリアが縦に積み上がらない。

一方ジャニーズはというと、胸キュン作品にも出てくれます。
そもそもファンが自分の推し、ジャニーズだと自担と言いますが、自担に胸キュン作品に出てほしいっていう人が多いんですよね。私は違いますけど、そういう人は多い。自担がかっこいい役をしているのを見て、ヒロインに自己投影してヒロインと一緒にドキドキしたり切なくなったりしたいんですよ。タレントの方も胸キュン系作品にでるようなジャニーズは演技経験も積んでいる途中で、これから色々俳優のお仕事をして演技力も磨きたいしファンも獲得したいと考えている。主演作品もやってステップアップしたい。少女漫画原作作品で好演するとそれを見て、ということで新しい演技仕事のオファーが来たりもします。だからファンもタレント側も嬉しいし張り切ってるんですよ。

視聴率・動員数が期待できる


さらにいうとジャニオタというのものは数字を持ってるんですよね。そもそもジャニーズのファンってめちゃくちゃ多いです。私はある2.5次元俳優のファンだったことがあるのですが、会社で彼の話を聞いたこと一回もないですけれどジャニーズ好きになってからは結構な頻度で自担の話聞きます。エレベータの中とか電車の中とかカフェの後の席の人が彼の話をしている。ファンが多い、ということは視聴率や動員数が見込めるんですよ。売上目標の達成が容易になります。さらに言えば熱心なんですよね。映画だと舞台挨拶があると映画館ハシゴしたりしてくれますから。自担の主演作品を盛り上げようと舞台挨拶でなくても何回も見に行ったりする子もいます。

原作が売れる


自担の主演が決まった、それに原作がある、となるとジャニオタは原作を買って予習します。なぜって嬉しいから。自担がどんな役をするのか知りたいし、ドラマや映画が始まる前から予習してワクワクしたいからです。またドラマが終わった後も記念に読みたい。素敵な作品なら好きな漫画として普通に大事にします。
だからキャストの写真がついた帯つけて売るんですよ。もう既に好きな作品で持っていたとしても、自担が主演することになって帯に写真が付いたらもう一回買うって人いますから。

円盤が売れる

そして円盤を買うんですよ、ジャニオタ。ジャニオタって結構な割合の人が自担の出演した作品のDVDやブルーレイを必ず買う習慣があります。あとで見返したいしメイキングが見たいから。ジャニオタになってから知ったんですけど、本当に息を吸うように円盤買うんですよね。すごい。

過去データから売上の予測が出しやすい

これもそうです。過去にそのタレントが出演したドラマの円盤の予約数、売上のデータがあるのでこれくらい売れるだろうなぁっていう予測が立てやすい。だから企画も通りやすいですよね。この漫画を実写ドラマ化したいです、主演はジャニーズのこの子を予定しています、他局ですが過去の主演作品だと視聴率がこれくらい、原作は出演が決定してからこれだけ売れて、ドラマ終わった後に円盤がこれだけ売れたので同じくらいの数字が見込めます。ドラマグッズ(アクスタ、クリアファイル等)は過去作品や同じくらい人気の先輩グループの主演作品の実績からこれくらい見込めます。というわけでトータルこれくらいの利益が見込めます、と話を持っていける。
バーターでジュニアの子とか使うとそっちのファンも買ってくれますしね。

事務所関連で持っている媒体(先輩の番組、本人たちがマンスリーで載っているアイドル雑誌本人たちの番組、本人たちのSNS等)で宣伝してくれる

これもあります。
まずジャニーズのタレント人数多いので番組持ってる人やグループが結構いるんですね。そういうところに後輩でも出て行って局が同じなら番宣することができます。あと事務所のツイッターアカウントでも宣伝してくれるし、事務所のツイッターは全グループのファンが見ているのでそれまで知らなかった人でも、あ、あの漫画実写化するのか、観てみようかなとなりやすい。またYouTubeを持っているグループも多いので、そうなるとそこでもその話を出してくれます。
また事務所雑誌といってもいいような、ほぼジャニーズしか出ないアイドル雑誌(月刊誌)が5〜6種類あるのでそこでもその話をしてくれる。ドル誌卒業している年齢でも月刊のファッション誌等に連載を持っていたりするのでそこでもその話をして宣伝してくれます。

ジャニーズ演技割と上手い


これもあります。
正直デビューしたばかりの職業俳優より上手いことも多々あります。
これはあの事務所結構劇団だというところにも起因しているんですが、なんだかんだ演技経験あるんですよね。舞台だとか先輩のドラマのバーターとかジャニーズ映画とかジャニーズドラマとか(メインキャスト全員ジャニーズみたいな奴です。メインキャラのお母さん役とか先生役とかでしか他事務所の俳優が出てこないやつ)で経験積んでるんです。うっかりすると、本当にオーディション受かりたての俳優より色々やっている。そういう中で演技のセンスが磨かれていったりしていい俳優が出てくるわけです。生田斗真とか岡田准一とか風間俊介とか。
もちろん全員うまいというわけではなくて、中には何回ドラマ出てもあなた下手なままですねって人もいます。そういう人はその代わり強い数字を持っているから起用されるんですよ。ファンが多いから原作、出版社、テレビ局等儲けさせてくれる。

というわけでジャニーズは数字を持っているから起用されるんですよ。そしてファンもタレントもそのお仕事をもらえて喜んでいるわけで原作に対して悪い感情も敵対心もありません。むしろ数字で貢献しているわけで、その辺ご理解いただきたいところです。